大日本帝国 翼
「やっば、遅刻じゃん!」
時は天永元年、長月の15日。
大日本帝国は、今日も『表向きでは』平和なようだった。
かの『令和』や、『平成』と言う元号はもう何百年前となるだろう。
「うわっ赤信号じゃん!」
数百年のうちに『戦争』という言葉はいつの間にか当たり前になっていた。
そして、この数百年の間。
人類は進化をしなかった。
進まなくなったどころか、後戻りをしている。
新しくなるのは技術ばかりで、人間の身体能力は徐々に低下している。
しかし、驚くべきことにこれが世界から見れば『いい方』なのだ。
感染症、事件、事故、森林減少・・・。
数えていたらキリがない。
「やっば、遅れそうなんだけど!?」
そして、そんな大日本帝国の中心『東京』で叫びを上げている少女が1人。
後霧 雫だ。
右手に通学カバンを持っている。
雫の足が地面を蹴るたびに、カバンについたうさぎのキーホルダーがゆらゆらと揺れる。
そして、左手には水筒。
・・・を持っているはずだった。
左手には謎に筒。
そして、雫本人はそのことにまだ気づいていない。
「おはようございますっ!先生!」
雫は敬礼。
遅れかけたせいか、いつもの数十倍背筋が伸びている。
「こういう時だけ背筋を伸ばすのはやめなさい、雫」
「すみません!先生!」
雫はそういうが、実は全く反省をしていない。
「雫、ブレザーの襟が立ってる!」
「え!?」
雫は自分の首の付け根を触る。
確かに、襟がぐちゃぐちゃになってしまっている。
「やっば!」
「そんなことだったら、軍では活躍できませんよ。」
その言葉に、一瞬雫の動きが止まった。
しかし、またすぐにヘラッとした笑いを浮かべ、動き出した。
「・・・別にいいですよーだ!」
そう、天永の世となった今では軍と学校が繋がるのは当たり前、なのだ。
学校、という名前の『軍育成隊』。
カバンの中には、『教科書』という名前の『銃の扱い方』という本。
卒業した者は皆、他国の地に散っていく。
今の日本にはそれぐらいの力しかないのだ。
『それぐらい』の力がね。
「むむむ・・・」
雫は先ほどの言葉が腑に落ちないようだ。
「こっちだって頑張ってんのに・・・」
そう小さな声でつぶやいた後に、自分が水筒を持っていないことに気づいた。
「うっわやば!」
しまった!とでもいうように、口を慌てて塞ぐ雫。
しかし、時すでに遅し。
クラスの視線は、再び雫に向けられた。
雫はすごい勢いで筒を背の方へ隠す。
「雫さん、何事ですか?」
怪訝な目で雫のことを見つめる先生。
「なんでもありません」
雫は、その細い指で筒を服の中へ入れた。
不思議なことに、その筒はブレザーの中に入っても不自然には見えなかった。
「そうですか・・・」
先生は、やれやれというかのように目を伏せた。
(よし!!)
そして、うまいこと視線から逃れた雫は小さくガッツポーズをしていた。
無事、準備を終わらせると席へ着いた。
「では、一時間目は射撃練習です。今回は、星雲学園との合同になるので、星雲グラウンドへ移動です」
『合同』という言葉に、教室は沸いた。
しかし、『移動』という言葉が出た瞬間にその盛り上がりは一気に冷やされた。
「移動って・・・先生、走りですよね?」
「当たり前じゃないですか。」
すん、とした顔で残酷なことを告げる先生。
クラスの雰囲気は一気に落胆へと変化する。
そんな中、雫だけは様子が変わらなかった。
「やば〜、最悪」
とは言っているものの、心では全く思っていなかった。
「はい、では11時までに来なかった人は『やる気なし』とみなして、移動の評価欄を1にしますんで。」
そう言って、赤い高級車の車の扉を閉める先生。
「雫、一緒行こうよ!」
雫は赤い車から目を離して隣を向く。
そこには、友達の凛。
「うーん、今日も無理かな・・・」
訳あって、雫は移動教室の時の誘いは全て断っている。
「わかった」
慣れた様子で、星雲学園への道のりを走っていく凛。
「みんな頑張っているねえ。」
雫はにんまりと笑った。
ぼちぼちと、人は消えていって、あたりには雫1人のみになった。
11時まであと15分。
星雲学園までは5km。
普通だったら絶対に着けない。
すると、雫は間違えて持ってきた筒をブレザーから取り出した。
その筒は紙が丸まったもの。
そして、雫はそっと慎重に紙を開いた。
完全に開くと、そこには服の絵が描かれてあった。
オーバーオールのズボンの部分は、短いプリーツスカート。
中に着る、シャツの振袖には繊細に羽根の絵と、天使が描かれていた。
すると、その紙から光が漏れてきた。
最初は淡かった。
しかし、だんだんと光は強まっていき、最終的には閃光弾並みの光となった。
一番明るい時では、雫の姿はほとんど見えないほどだった。
そして、だんだんと光は弱まっていった。
雫は、そっと目を開けた。
目を閉じてもわかる、外のチカチカさ。
“軍の組織“に入ってからも、なかなか慣れない明るさだ。
バシバシと瞬きをすると、だんだんと目の前の景色に色がついてきた。
雫の姿は、あの絵に描かれていた服装に変わっていた。
そして、紙にはブレザーの絵が描かれている。
「・・・変身完了。」
小さく、つぶやいた。
そして雫は今、自分が来ている服・・・
・・・『軍服』のスカートのポケットをあさった。
そこには、ダイヤ型の髪飾り。
錆びているように見える。
雫のセミロングの髪の毛は、一束だけ結んでいる。
白髪が、日光に照らされてさらに神々しく見える。
雫は、髪飾りを髪の毛へつける。
すると、髪飾りは瞬く間に、青く輝き出した。
それは、サファイアのように。
「大日本帝国、特殊秘密軍隊『翼』 第二部 後霧雫。」
雫は、誰もいないはずなのにそうつぶやいた。
すると、さっきの髪飾りから声が聞こえてきた。
「こちら、秘密特殊軍隊翼、本部。どうぞ。」
「・・・動き出します。」
そう簡単に返事すると、髪飾りからは『決して漆黒の鴉たちには見つからぬよう、気を張りなさい。』という、返事が返ってきた。
雫は、俯くと数回瞬きをした。
星雲学園の方向を確認すると、雫は東京都を抜け出す埼玉の方へと向かって行った。
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漆黒の鴉。
それは、戦争のどさくさに紛れて盗みを働く犯罪グループ。
表面では、『強盗』ということになっている。
裏では・・・。
『軍隊の人間を惨殺する、お国の敵対組織』という、最重要・最警戒組織となっている。
あらすじ読んだでしょ!
ほっとんど更新ないです!
気分屋ですので・・・。




