第1話 俺はパーティを抜ける
長命種代表のエルフつっても、王都と田舎じゃ差が出てくる。
王都では金髪や銀髪が大半のエルフの中で、田舎出身の俺は癖のある赤毛にそばかす。肌だって、白や黒、灰色ではない。どっちかと言えば、足長族と同じくらい赤みのある色をしている。目の色だけは、エルフで一般的な青色。稀に赤色もいるが、今は関係無し。
俺を含めた赤毛のエルフは、同族の中でも〈田舎者〉呼ばわりされる。俺らと体格が似通っていて耳が丸い足長族のような他の人種でもよくある話だ。頭の軽い奴らからの揶揄いや陰口はあるが、選民意識から来る差別に関しては、そこまで無い。
まぁ、地域差だ。北大陸でかいし、そんなもん。
……でも、やっぱり世間は厳しい。
「クシュル。おまえは、魔術の腕が悪い」
ギルドハウスに併設された酒場。木製の長方形の形をしたテーブルを挟んだ正面で、足長族の若い男と女性達が、俺を睨んでいる。
剣士の男、斥候の女、戦士の女、治癒術師の女。魔術師の俺を合わせて5人のパーティだが、問題が発生した。
「それに、エルフらしくない」
斥候の女の言葉に、一同頷く。
そんなこと言われてもなぁ……足長の思うエルフってのは、王都出身だろう。
俺は田舎者の農家ので、三男坊で、嫁を宛がうにも式を挙げるにも金が無いって言われて、家を出された。上2人は兎に角優秀だったから、俺はいらなかったのだろう。
職を探そうにも、田舎はほとんど無い。王都に行っても、優秀な奴しか職に貰えないと思った。色々考えた末に、他の人種の中なら活躍できそうと思って、国を出て冒険者の道を選んだ。
でも、この有様だ。
「これでも、頑張ってはいるんだけど……」
エルフは総じて魔力を扱える。国から教育の一環として、習わされる。
俺は国を出て一年間、それを使ってこれまで生計を立てた。そして半年前にこのパーティーに誘われ、行動を共にした。
みんな初心者で、最初の内は和気藹々としていた。
「頑張ってる? どこか? 他のパーティはどんどんダンジョンの深層へ潜っているんだよ? それに比べて私達は、半年経っても中級ダンジョンをクリアできていない。おかしいと思わないの?」
「俺一人に責任を押し付けないでくれよ。ダンジョンでは連携必須なのに、最初から最後まで魔術に頼って、こっちを疲弊させてんのは、おまえ達だろ」
魔物との戦闘だけじゃない。食事の火起こしから、飲み水の確保、罠解除……数えたらきりがないぞ。
やらないくせに、まだかまだかと急かしてくる。
無理があるんだよ。魔力回復のポーションや道具類は出費を渋るせいで、いつも疲労困憊だ。
何度言っても改善されず、限界を超えて俺が怒って、招集に応じなかった。
そして今に至るわけだ。
「エルフなんだから、それ位できるだろ」
「逆を言えば、足長は何もできないってなるぞ。いいのか?」
4人は悔しそうな、憎たらしそうな顔で、俺を睨んでいる。
足長から見れば俺はずっと大人かもしれない。身体能力や魔力だって足長と差は確かに有る。だからって、一人に押し付けるのは駄目だろ。
「わかった。エルフらしくない俺は、パーティを抜けるよ」
「えっ」
戦士の女が、声を漏らした。
本当は皆の名前覚えているけど、〈おい〉って呼ばれるばかりで、腹いせに思い出さないようにしている。
「抜けなくても良いじゃない。改めてくれれば、それだけで……」
戦士の女は慌てて言った。改めるって、俺だけ?
「飼い殺しはごめんだ」
俺は立ち上がり、パーティ登録窓口に向かう。
「お、おい! 待てよ!」
「考え直して!」
「あ、新しい杖買ってあげるから!」
4人が慌てて立ち上がり、俺を引き留めようとするが知るかよ。
クエスト報酬は5等分の筈が、俺だけ若干少なかった。わざとローブを踏んだり、杖を面白半分で70度に曲げられた。俺が配分した食糧だって〈ダンジョン内ではみんなのもの〉とか意味不明な事を言って、勝手に取って食われた。
あぁ、思い出すだけで、イライラする。
「パーティ〈竜の翼〉のメンバーから脱退するので、クシュル・ベアホルンの除名をお願いします」
俺は受付の女性に、パーティ登録の時にもらった緑の宝玉が埋め込まれた木のブローチを差し出した。




