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あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第一章
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 敦也は急いで飲み屋の主人に水をもらいに走った。ぐらつく脚を動かし、止まりそうになる息を必死に整えて、ひた走った。――自分の我儘わがままで、人様を殺したくない――。罪滅ぼしと言わんばかりに、敦也はやれるだけのことはやった。

 飲み屋の主人に頼んで水をもらった。細かく説明するだけの時間はなかった。水をくれと頼み込んで、困らせることしかできなかった。意味のわからない懇願こんがんでも、飲み屋の主人は時間がないことを察してくれたようだった。バケツ一杯に水をみ、両手が千切れそうになる。最近はまともに運動もしていなかったせいで、身体が重い。思うように動かない。重い荷物を持って走っているので、心臓が張り裂けそうになって、口の中に血の味が広がって苦しい。それでも、自分の招いた結果をくつがえすために、運命にあらがうように、頑張った。

 ――今は、絶対に死にたくない。

 みんなを助けるまで、絶対に死んではならない。

 敦也の足跡をつけるように、辿っていった歩道に水たまりができていく。

「水……。水持って来た!」

 汗だくになりながら、敦也は叫んだ。がくがくと手足が震えていた。

 頑張って水を持って来た敦也に、女性はにっこりと微笑みかけた。

「大丈夫。誰も死んでいない。奇跡的に無傷だったわ。よく頑張ったわね」

「そうか! 良かっ……」

 ほっとしかけた敦也を、女性は思いっ切り引っぱたいた。そしてバケツを奪い取った。

 敦也は見ず知らずの女性に二度もぶたれて、呆然とする。痛すぎて、言葉も出ない。

「大事になるところだったのよ。何を安心しているの。バカじゃないの? 怪我人がいなかったからって、安心なんてしちゃいけないのよ。あなたのやったことを後悔しなさい。たまたま運が良かっただけなのだから。あなたのくだらない自殺未遂に巻き込まれて、何人か死んでいたかもしれないのよ? なんでそんな考えができるのかしら。本当は、誰かを巻き込みながら死にたかったんじゃないの? 今更偽善者ぶっても無駄よ。あなた、やっぱり死んだ方が良かったんじゃない? 死んで反省すれば」

 剣呑けんのんな面持ちをして、バケツを奪い取った女性が事故現場に駆けていく。

 敦也は引っ叩かれた頬を手でさすって、目を丸くした。手柄を横取りされたような気分だ。

 初対面の相手に向かって、死んだ方が良かったなんて……そこまで言うか?

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