③
「しょうがないなあ……。適当に履歴書書いて、部署に直接渡せばいいんだよ。手渡しの方が効果的。履歴書っていっても、就活んときに出すやつじゃなくって、学生用ね。大学のホームページからダウンロードできるはずだよ。書き方はわかる?」
「さあ。書いたことないし」
敦也は後頭部に手をやって、女子学生に説明の続きを促した。
「口で説明すんの、むずいんだよね。今度持ってくるから、あたしので良ければ、参考にして。余裕のよっちゃんで受かったし。面接もパスだったよ。大学ってだけで、ちょっと得だよねい。企業のバイトだったら、書類も面接も当たり前だし。時給やっすいけど、失敗しても怒られることもないしさあ。ま、大守くんなら受かるっしょ。がんばれい!」
明朗快活な女子学生はバンバンと敦也の背中を叩く。ケホケホと咳き込む。力強い。
「……サンキュ」
「どいたま! いつでもアイス奢ってねん。あたしはソーダ味が好き!」
女子学生は手を振りながら食堂を出て行った。敦也も嵐のように豪快な彼女にそっと手を振って見送った。彼女が約束通り履歴書を持ってくるかどうかは別として、もっと他の人と話そうと敦也は心に決めた。こうやって色々な情報を知ることもできるし、体験談を聞くこともできる。やった人にしかわからない話を聞けるのは、人とのコミュニケーションの醍醐味だ。これがあるから、人は人との関係を築こうと思うのではないだろうか。
――やっぱ、人って面白いよな……。
敦也もソーダ味のアイスクリームを買って、迎えが来るまで学校で時間を潰した。
大文祭前日は休講となった。皆が全身全霊をかけて魂を燃やし時間を費やす。
敦也はその日、大学に行かずに、自宅で休んだ。連日人使いの荒い人々に捕まっていたので、疲れも相当たまっている。ブラック企業に就職してしまったかのように、毎日毎日働き詰めだった。心身共に疲労困憊で、陽太も香名も祖父母も敦也の体調を気遣っていた。
敦也が自室でアルバイトの履歴書を書くのに悩んでいたら、香名が助言してくれた。
女子学生は約束通り書き方の紙を持って来てくれたのだが、あまり参考にならなかった。
「志望動機は本音を隠しなさい。お金を稼ぎたいからだとか、みんながやっているからやってみたいからだとか、そんなことを書いていたら受かるものも受からない。そんなの、みんな同じよ。お金が欲しくないのに、やりたくないのに、アルバイトする人はいないもの。あなたにとって必要な経験だと思ったから、やるのでしょう。その理由を書けばいい。あなたがやりたいことを書いて、どうなりたいかを書けばいいの。理想を書いて実現させなさい」
「そうか……。金の大切さを知るためってのは、どうだ?」
思いついた志望動機を言ってみると、香名は無遠慮にはっきり言う。




