表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/91

おじいさんのたからさがし あと


「ぱ、い、な、つ、ぷ、る、っと!ごーる!」


  るなが一番に神社の境内についた。俺たちもその後に続いて境内に入っていく。


「……こんこん、こんこん」


  さっきまで眠たそうにしていたみづきが、今は少し元気になったのか狐の像に話しかけている。本当に動物好きだね。

  少し遅れてりんもやってきた。途中でだいぶ話されていたから、追いかけて登ってくるのが大変そうだ。


「やっと、ついたで、はぁ、はぁ」


  もうみんな好き勝手やってるけど、境内を散策する。といっても、山の上になってるので神社や倉庫、狐の像に鳥居ぐらいしかないので大して散策する場所もない。

  とてとてと歩いて散策するみんなを尻目に地図を広げて見ていれば、大きな影が近づいてきた。


「おやおや、これはかわいらしいお客さんだね。いったいどうしたのかな?」


  そこには大きな大きな、――もちろん今のこの幼女の姿から見てだが――作務衣に身を包んだ初老ぐらいの男の姿があった。

  男は俺の頭を一撫でした後、しゃがんで俺に目線を合わせて話しかけてくる。撫でられた頭が、どこかくすぐったい。


「もしかして迷子かな?それにしてはこんなところまで来ないと思うけど。それに、あっちの子はお友達かな?」


  見ればるなは雑木林を散歩してるし、みづきは相変わらず狐の像相手にこんこん言ってるし、りんは疲れたのか寝っ転がってるし。

  みんな自由すぎて捕まりそうにない。


「えっと、これ、さがしにきたの」


  俺は目の前のおじさんに、おじいさんの描いた地図を見せた。

  すると、おじさんは地図をじっと見た後に、にっこりと笑ってこう言った。


「あぁ、あのおじいさんのお孫さんかな?その地図のお宝なら、こっちにあるよ」


  立ち上がり、手招きをして歩き出すおじさん。そのおじさんにとてとてとついていく俺。

  りんもいつの間にか起き上がってついてきていた。みづきは途中で拾った。

  おじさんがついてやってきたのは、神社の側にある雑木林。るなが何事かとこっちの方に近づいてきた。


「ん、そうそう、この辺だったかな。この辺りに埋まってるはずだよ」


  ん?埋まってる、だって?

  それってもしかして、タイムカプセルのようなものってことなのか?それだとなんだか開けるのは悪い気がするな。

  俺がそう考えている間に、るなとりんがざくざくと土を掘っていく。……手で。


「ちょ、てじゃむりだってぇ」

「だってほるものもってないし」

「せやせや」


  どうにかやめさせようとする俺と、一向に止める気配のないるなとりん。

  どうしようかと慌てていれば、おじさんがスコップを持ってきてくれた。


「これを使いなさい。そうすればもっと掘りやすいだろう」

「あ、ありがとうございまひゅ!」


  噛んだ。るなとりんがクスクスと笑っている。恥ずかしい。恥ずかしくて、顔が真っ赤になっていく。

  そんな俺に、おじさんはまた頭を一撫でして、


「うん、お礼が言えて偉いね。いい子だ」


  と言ってくれた。なんか、嬉しくて、恥ずかしい。

  俺が照れてもじもじしていると、後ろからみづきが抱きついてきた。


「……ひーちゃのこと、なでる。なでなで」

「ちょ、なでなくていいってばぁ!」


  こうなったら俺もみづきのことを撫で回そう。ほーら、なでなでなでなで……。


「……ん、もっと……」


  あれぇ?どうしてこうなったんだろうか。今更手を引っ込めるわけにもいかずみづきをずっと撫で回していると、るなとりんが何かを見つけたようだった。


「あー!あった!」


  そう言ってるなが取り出したのは、土で汚れた年季の入ったクッキーの缶だった。

  みんなで集まってワクワクしながらその缶を開けてみる。


「うわぁ……」

「これって……おはじき?」

「こっちはめんこにべーごま?ふるいおもちゃばっかやなぁ」


  おはじき、メンコ、ビー玉、昭和初期とでも言うか、そういった世代のおもちゃがその中には入っていた。

  その1番下に、手紙が1枚入っていた。俺はそれを取り出して読んでみる。


『拝啓

  この手紙が読まれている頃には、私はもしかしたらこの世にはいないであろう。おばあさんにこれらのおもちゃが捨てられる前に、この手紙とともに埋めておきたいと思う。』


  おじいさんはおばあさんの尻に敷かれていたのだろうか。おばあさんからはそんな印象は感じなかったけれど、おじいさんの死後にそうなったからなのだろうか。


『私の孫が見つけるか、もしかしたら関係のない子が見つけるかはわからないが、もし見つけたらこれらのおもちゃを使って遊んで欲しいと思う。使い方は、誰か周りの大人に聞いて欲しい。古臭く、今の子たちの肌には合わないかもしれないが、できることなら楽しんでもらえたらと思う。』


  手紙を全部読み終えると、目の前に、システムウインドウが。


『おめでとう!とくべつクエスト、『おじいさんのおたから』をくりあーしたよ!すべてのプレイヤーに『駄菓子屋さん』が解放されました!』


  俺はみんなのことを見回した。るなもりんも、それからみづきまでも驚いている。


「な、なんかすごいことしちゃった?」

「これは、やってしもうたなぁ」

「……ひーちゃすごい、 の」


  もちろん俺も驚いてるんだけど、まだ実感がわかないというか。どうしたものかといった感じだ。


「とにかく、きょうはおそいからろぐあうとして、あしたそのだがしやさんをみにいこうか」


  俺のその言葉に、みんな頷いて次々ログアウトしていった。

  これ、いったいどうなっちゃうんだろうなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ