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いべんと、みんなでいっしょに。


  やってきました最終日。今日までにどうにかこうにかシールを集めることができた。これも仲間たちの協力のおかげだ。特にギリギリで無茶に付き合ってくれたアリスには感謝している。

  最終日はみんなで出来る『おてつだいクエスト』を行うということでりんから聞いていたのだけれど、そのりんがなかなかやってこなかった。


  「おそい!どこにいるのかしらまったく……」


  るなが両腕を組んで憤慨している。俺はみづきを抱きながら座って待っていた。そのみづきは、俺の腕の中でこっくりこっくりと船を漕いでいる。俺はみづきの頭を優しく撫でつつ、るなを宥めた。


  「まぁまぁ、きっとなにかあったんだよ」

  「なにかあったらだめでしょ!?」

  「しー。みづきがおきちゃう」

  「おきてなさいよ!?」


  やいのやいのと騒いで待っていると、りんがようやくやってきた。悠々と、余裕綽々にてくてくと歩いてきた。


  「いやー、おまたせおまたせ」

  「おそいじゃないのよ!」

  「ごめんなぁ、ちょっといろいろあってなぁ」


  じゃあいこか、なんて軽く言って俺たちはみんなりんについて歩いて行く。おっと、その前にみづきを起こさないと。俺はみづきの身体を優しく揺すって起こす。


  「みづき、おきて」

  「…………むにゃぅ……おはよ、ひーちゃ」

  「おはようじゃないよ、りんきたからいくよ」

  「……ん」


  いつもの商店街を抜けてさらに進み、てくてくと歩いていけば河川敷が見えてくる。それから、たくさんの|NPC(大人達)の姿。ガヤガヤと集まって何かを話していたり、袋を持って散り散りになっていたりする。


  「あれはいったいなにをしてるの?」

  「あれはなー?ごみひろいや!」


  そう言ってりんは河川敷に通じる坂を下っていく。それを追いかけるように俺たちもついていく。坂道をすたたーと下るもんだから、危うく転びそうになる。あ、るなが転んで一回転した。

  下り終えると、|NPC(大人達)の中の1人が話しかけてきた。


  「おやおや、お嬢ちゃんたち、いったいどうしたのかね」


  いつものことなんだけれど、お嬢ちゃんって呼ばれるのはくすぐったいんだよな。今の自分の見た目を見てお嬢さんじゃないとは否定できないんだけれど。わかっているんだけどもこう、なんか、ね。


  「きょうはなー、おてつだいにきたんや!」

  「そうかいそうかい、そんじゃーあっちでお婆ちゃんに袋と軍手もらってなー」

  「はーい!」


  りんは指差された方向に駆けていく。俺たちもそれについていく。


  「おー、りんちゃんかい。いつもありがとうねぇ」

  「えーのえーの。それよりぐんてちょうだい!」

  「はいはい。お友達の分もね」


  |NPC(大人)言ったことが気になったので、りんに聞いてみる。


  「あのひと、りんのことしってるの?」

  「いろいろ『おてつだいクエスト』やってるうちにしりあいになってなー」

  「そうだったんだ」


  渡された軍手を手にはめる。大人用の大きさだからぶかぶかだ。


  「ぷっ、ひなちゃんぐんてにあわなーい」

  「るなだってにあってないくせにー!」

  「なにおー!」


  ぎゃーぎゃーと喧嘩する俺たちを横目に、みづきとりんがせっせとゴミ拾いをしている。


  「ひなちゃんたちもはよやりぃな」

  「あ、はい」


  黙々とゴミを拾う俺たち。ペットボトル、タバコの吸殻、ビニール袋、いろんなゴミが落ちている。ゴミ袋をいっぱいにしたら、『おてつだいクエスト』は完了だ。


  「おーわった!」


  るなが声を上げる。ゴミが袋の中にいっぱいになったので、それをおじさんに渡しに行く。


  「はい、がんばったね」


  と優しく言ってくれた後に、みんなにシールを貼ってくれた。


  「これでぜんぶだ!」


  やったーとみんなで手を合わせて喜んだ。きゃっきゃきゃっきゃと跳ね回った。

  結構ギリギリのタイミングだったのか、運営からメッセージが届く。


  「いべんとおつかれさまー!30こあつめたこには、あしたすてきなぷれぜんとがとどくからね!たのしみにまっててね!」


  そんなメッセージを残してイベントは終わった。

  俺たちはいつまでも喜び合っていた。


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