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6話:みづきとどうぶつさん に

 

  ガヤガヤと、何人かの男の子達がやってきた。

  なんで今日に限って、普段人がいないこないところに集まって……。まさか、俺とみづきがここに来るところから見られていた? そして、うさぎ小屋があることに気がついて、近づいてきたのだろう。

 

「えっ、なかにおんなのこいるじゃん!めっちゃかわいい!」

「まじ?ほんとだ!かわいいじゃん!」


  こっちを見て、かわいいかわいいと囃し立てる男の子たち。

  中身から見て、同性に見られてもなんとも思わないだろうと思っていたのだけれど、こう、見世物のように見られると、さすがにいい気分はしない。

  あんまりにもジロジロ見てくるので、小屋の奥の方に、みづきを連れて逃げ込む。

  小さな小屋なので、そんなに意味はないのかもしれないけれど、少しでも逃げたかった。

 

「あ、もうちょっとで、すかーとのなかみえそう」

「まじで!?どこどこ!」


  そんな声も聞こえてくる。思わずスカートの裾を抑えて、中が見えないように身を守る。キッと睨みつけても、彼らが怯んだりということはなく、むしろ余計にかわいいなどと言い始めた。

 

「……ひーちゃ、だいじょうぶ……?」

「う、うん。だいじょうぶ……」


  みづきが、不安そうな顔でこちらを見ていた。俺がこんなんじゃ、みづきを余計に心配させてしまう。

  けれど、あのたくさんの男の子たちをどうこうできる自信もない。


「えー!なんではいれないんだよ!」

「この中は、飼育係の子か、その子が入れてもいいといった子しか入れたらダメなの、ごめんね」


  小屋の入り口近くで、男の子の一部と、ずっと待っててくれていたNPCの先生が揉めていた。

  どうやら、小屋の中までは追ってこれないらしい。

  入ってきた時のことを省みるに、飼育係というのはみづきのことなのだろう。

  つまりは、この小屋にはみづきと、みづきが一緒に入ってもいいと、認めた人しか入れないらしい。


「なんだよー!いれろよー!」

「ひっ!」


  ガシャン!と、小屋の入り口のドアや、入れないけれど中が見えるように設置された鉄柵を蹴り出す子まで現れた。

  その様子に、俺たちは身を寄せ合って怯えていた。

  ガシャンガシャンと、だんだんと強くなる音。

  このまま、男の子達が諦めるまで出ていけないのだろうか。

  そんなときであった。


「こらー!きみらなにしとんねん!」


  と、どこか気の抜けた関西弁の女の子の声が聞こえてくる。


「あんまりみったくないまねしてるとなぁ、せんせーよぶでー!?」

「へんっ!よべるもんならよんでみろよ!」

「いうたな!こうかいしてもしらへんで!」


  そんな言い合いをしているりん。あんまり無茶はしないでほしいけれど、助かった。

  しばらくすると、NPCが何人か現れて、男の子たちを連れて行ってしまった。まさに悪いことをした幼稚園児といった姿だった。


「さてさて、なにがあったのかな……ってひなちゃんにみづきちゃんやん、なにしとん?」


  こちらの姿を見るなり、そんな気の抜けたことを言うりん。

  助けてもらって嬉しかったのだけれど、まずは言わせて欲しい。


「なにがあったかしらなかったできたのっ!?」

「なんやなぁ、すっごいもりあがってるからなんやろなー、っておもってきたら、なんやおとこのこたちが、らんぼうしてるからなー。かーっとなって、おこってもうたわ」

「そ、そっか。でも、ありがとう」


  結果として、りんに助けられたことに違いはないので、りんにお礼を言う。


「……りーちゃ、あいがと」

「いやー、うち、めっちゃかっこええやろ?」

「……それがなかったら、もっとよかった」


  がーん、という音を立てたような、そんな動きをりんがする。

  それを見て、俺もクスクスと笑ってしまったけれど、気になっていることをりんに聞いた。


「で、りんはいままでなにやってたの?」

「んあ?うちはなー、いろいろしらべものしててなー」

「しらべもの?」


  りんが言うには、ろぜったさんやありすの話を受けて、どんな『おてつだいクエスト』があるのかとか、どういうイベントがあるのかを、少し調べておこうと思ったらしい。


「それで、なんやこっちのほうで、みたことのないいべんとがおきたゆーてな、みにきたら、ひなちゃんとみづきちゃんがとじこめられてるやんか。うちからみたらなにごとやー!ってかんじやで」


  確かにそうだ。

  側からみたら、確かに閉じ込められて虐められているようにしか見えなかっただろう。


「まわりから、いろいろされたのはあれだったけど、なかにはいったのは、みづきのおこしたいべんとだよ」

「……りーちゃもはいる」


  そう言って、りんを小屋の中へと招き入れる。


「おー……おー?みづきちゃんがはいっていいゆうたらはいれるんか」

「けんしょーもーどはいいから、はいっ」


  そう言って、抱きかかえたうさぎを1匹りんに渡す。

  うさぎはひくひくと鼻を動かして、りんの腕の中でもぞもぞと動いている。

 

「ふあぁ、かわいいなぁ、ほんまにかわいいわぁ」

 

  りんの顔が、とてもうっとりとしている。

  ここのうさぎさんたちはかわいいから、そうなってしまうのも仕方がない。

  隣でどやってるみづきさんは気にしないでおこう、そうしよう。


「でもほんとうにかわいいよね、うさぎさん」

「ほんまになー、こう、いやされるわー」


  うさぎ小屋で、うさぎさんと戯れる。

  だんだんと、ボーっとしてきたけれど、ちょっとだけさっきのことを思い出してりんに話しかける。


「そういえばなんだけど」

「んー? どないしたん?」

「さっきのおとこのたちは、なんだったのかなって」

「あー、あれなー」

 

  りんは彼らのことも知っていたようで、こっちに来た子たちは、結構過激なグループらしく、起きたイベントを奪い尽くすような、そんな連中らしいということ。

  もちろん、彼らのことをよく思っている人は少なく、同盟内でも揉め事が起きているらしいのだけれど、結局のところ抑止力はなく、彼らの行動を止めるには至ってはいなかった。


「あれはおっかなかったよぉ……ひどいことされるかとおもった……」

「どうじんしみたいに?」

「それはないわ」


  普通に怖がってたのに、りんの一言で気が抜けたというか、呆れたというか。

  それでも気が楽になったきがするのは、りんのおかげなんだろうか。


「ひなちゃんはえっちなこやなー」


  やっぱり、何も考えてないだけなんじゃないだろうかと、俺は頭を悩ませるのだった。

 


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