20話:おかいものにいこう!
「あーるーこー、あーるーこー、わたーしーはーげーんきー」
「あー、ちいさいころに、よううたったねぇ」
「あんた……いろいろとだいなしだから やめてよ……」
上機嫌で歌いながら歩いていたるなに、りんが無粋な言葉を投げていた。その言葉はこっちも気が滅入るからやめてほしい。
俺はみづきを後ろからぎゅーっとしながら歩いている。少し、いやかなり動きづらいけれど、みづきがかわいいから仕方がない。仕方がないんだよ?妹分の面倒は見てあげないとね?迷子にならないように、しっかりとぎゅーってしていないと。
「……ところで、どこにいくかきめたの?」
みづきがきょとんとみんなに問いかける。俺が抱きついても何も言わないあたり、みづきもこの体勢を気に入ってるんだろうか。
買い物に行こうと言ったのは俺だが、俺自身、どこにどんな店があるのかなんて知らない。
俺が買い物に行こうと提案をした後にるなとりんが、ほれいくぞ、すぐいくぞと、とたたたたーと駆けていったものだから、みづきの手を引いて追いかけるのが精一杯だった。
そんなわけで、先を進むるなとりんしかどこへ行くのか知らないのだけれど、
「さぁ?」
「しらんよ?」
と、結果としてノープランで先を進んでいた2人に俺とみづきが怒るまで、そう時間はかからなかった。
はてさて、特にどこ、と決めてなかっただけで、一応、それなりにどうするのか決めていたるなーーりんは、本当に何も考えていなかったーーが示した先には、いつかのお使いの時にも来た商店街だった。
うんうん、買い物をするという目的から離れていないので悪くない選択肢だと言える。
てくてくとことこ歩いていけば、そう時間はかからずに商店街にたどり着いた。
商店街は以前と変わらず活気が溢れており、各店々がそれぞれの自慢の商品をアピールしている。
なんとなく、昼に屋上で見た光景を思い出してしまう。現代の、寂れた商店街。それがまるで嘘だったかのように、俺が子どもの頃にそうだったように、商店街は騒がしくも温かい、不思議な空気を出していた。
「ついたー!ところで、みんなおかねいくらもってるの?」
そう、買い物をするにはお金が必要だ。
お金は『おてつだい』で手に入るが、1回にもらえる量は少ない。ただし、その分物価が低いので、そこまで問題にはならないが。現代物価の10分の1ぐらいに思ってくれればちょうどいいくらいか。
ただし、それは服などの装飾品の話で、たとえば食べ物や飲み物はもっと低く、だいたい一律で1ぺただ。まぁ、ゲームの性質上、そういった部分はどうでもいい部分だからだろう。それにしたってテキトーな気もするが。
「わたしは、200ぺたあるよ」
俺もちょくちょく『おてつだい』をしているからそこそこお金はある。しかも、今まで使う場所を知らなかったから、結構あると自負している。
「わたしは150ぺたぐらい。こないだまであんまりろぐいんできていなかったからなぁ」
るなは意外とお金を持っていなかった。
「……100ぺた」
みづきは行動しなさすぎだ。主な収入源が魚の餌やりからなんだろうけれど、それにしては意外に持っている。
「うちはー、……これいわなきゃあかん?」
りんが、自分のシステムウインドウを見てから言い淀む。そう言われると気になるのが人間の性というものだろう。
「みんなおしえたんだから、ちゃんとおしえなさい!」
るなが代表で怒った。このパーティで遊ぶ時は毎回お姉さん役である。苦労性のお姉ちゃんって感じだ。俺と月本と鈴宮で遊ぶ時も、同じような役回りになるのだから、これはもう宿命といってもいいのかもしれない。
「いうからおこらんといてー……600ぺた」
「600ぅ!?」
るながぴょんと飛び跳ねそうになりながら驚いた。
俺とみづきも声にならないほど驚いている。みづきなんか、いつもの半眼が、完全に見開いてしまっている。目を丸くして、っていうのはこういうことのことを言うのだろう。
というか、600って、俺の3倍は持ってるよな。一体何をどうしたらそんなことになるんだ。
「いやな、このげーむって『おてつだい』のしゅるいがめっちゃほうふやん?うち、そういうのしらべるのすきやし。きがついたら、ぎょーさんおかねもってたんや」
なるほどと俺は思った。確かに、鈴宮は昔から凝り性というか、調べ回らないと気が済まないというか、そんな性質だった。ひどい時はデバッカー紛いのことをしていた時まである。
確かにこのゲームは『おてつだい』の種類が豊富だ。こちらから話しかけて発生させるものから、NPCから話しかけてくるものまで、本当に多岐にわたる。その種類は今の時点でも全てを把握しきれていない。
それもそのはず、こんな変態チックなゲームなのに、サーバー管理に使われているのはいわゆるスーパーコンピュータであり、状況に応じてイベント、クエストの精製を行っているのだから、イベント数を数えるというのが無理な話なのだ。数えるためにイベントを起こすたびに、新しいイベントが追加されるのだから。
「そんなわけで、いちじきはいろいろ、いべんとをしらべまわってたんやけど、むりげーだとおもったからゆっくりぷれいにきりかえたんよ」
なんてしみじみ言うりんに、
「じゃあきょうは、りんちゃんのおごりであそんじゃおー!」
というるなには、色々と台無しだよ、と言う言葉を送っておこうと思う。




