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異世界ダンジョンRPG+H 転移先が魅惑のおじさんボディでした  作者: 七渕ハチ


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第1話 ファーストキスから始まる、おじさんの物語

 高校を卒業後に寮を引き払って実家へ帰ると、こんなに田舎だったかと嘆息した。しばしの休みも、スマホを手にごろごろ過ごす以外はすることがない。ついには散歩へ出かける始末だ。


 空気のよさを感じるが自然の中で走り回たい欲求は萎んだまま。それでも、幼少期の記憶を頼りに彷徨うのは面白さにつながる。


 標識を目印に道を外れて、秘密基地を作った森の石垣跡近くに向かう。覚えのある大きな木は健在だが、他は鬱蒼と茂る草木に飲み込まれていた。


「確か……」


 ふと思い出して奥に進むと肝試しスポットの古いトンネルが現れる。車が一台通れる幅でレンガ造りの雰囲気がいかにもだ。


 スマホのライトを灯りに入ると温度が下がる。もうあの頃とは違うぜと先を行くが普通に怖い。崩落という危険性もちらつくが距離は短め、すぐに出口の自然光が見えた。


 反対側に着くと森の風景は同じなか、昔の道路が微妙に残る。これなら迷わずに戻れるな。徐々に冒険心が湧いてきた。


 頭で地図を描き、あそこの裏手に当たると予測する。コンビニ代わりの個人商店に寄る算段をつける途中、地面に生える人工的な細い長石が目に入った。


 先端が尖って腰かけるには不向きだ。十メートル間隔でいくつも置かれて興味に追う。森の深い部分で遊ぶのは禁止されてたし、意外と知らない謎物体があるな。


 ぼんやり歩いていると薄っすら霧が漂い始める。割と時間を潰せたので、それを合図に引き返すことにした。長石の正体解明はまたの機会か。


 朝食時にテレビで流れていた天気予報は晴れだったけど、突然の雨に降られると困る。休みに風邪は勘弁だ。


 しかし、次第に霧が濃くなるため焦って走る。そろそろ道路へ出てもいいはずなのに、肝心の長石が途切れた。


「えぇ……」


 実家近くの森で迷子は笑えない。地面を見過ごした可能性を考慮に戻ると、次は二階建ての洋館に行き着いてしまう。


 古さはあれど寂れた印象には遠い。スマホはなぜか圏外で誰かが住んでるかも親に確認できなかった。


 さらに危惧する雨がポツポツ頭に当たる。せめて帰り道だけでもと助けを求め玄関扉をノックした。


「すみません!」


 インターホンはなく反応を待つがひと気は皆無。緊張に取っ手を押すと軋みながら開いた。


「し、失礼しまーす! 誰かいませんか!」


 一歩入るもシンと静まり返るエントランスでは雨音が響く。留守か空き家か。どちらにせよ屋内をうろつくのはマズいが、霧が収まるまでの雨宿りは許してもらえるだろう。


 玄関扉を背に座ったところ、急なまぶたの重さに耐えられず横へ倒れた。理由は不明で身体の力が抜けて意識が落ちていく。


――カラカラとキャスターの音が聞こえる。


――血だまりに獣が溺れる。


――小さな骸骨が眼球を抉り取る。


 奇妙な夢にうなされて起きると錆びた診療台の上だった。頭痛がひどく崩れた屋根に差し込む光へ違和感を覚える。どうやら顔へ巻かれた包帯のせいで右目が隠れていたらしい。それを緩慢に外して台を下りた。


 荒れた部屋には木くずが散らばり、壊れた棚へ大小様々な汚れた瓶が並ぶ。割れた鏡の前を通ると、そこに映る姿に唖然とした。小太り気味で貫禄のある体型に加えて容貌がおじさんだ。某空飛ぶ豚リスペクトなフォルムは、本来の自分とかけ離れている。


【対 象】サネカズ♂

【年 齢】41歳

【種 族】ヒューマン

【ジョブ】異邦人 Lv0

【習得済】色情家 Lv5


 放心状態で鏡を見続けると脳内に文字が浮かんだ。


【対 象】右目

【効 果】鑑定の魔眼


 何だこれはとの疑問ばかりで混乱が増す。異常事態について説明をくれる人は、どこにもいなかった。




 ◇




 この世界には多様な女神が存在する。剣や魔術に商売など細かく分かれており、信仰を授かると特別な力が開花した。それらはジョブと呼ばれ人生に大きく影響を与える。なんとも、ありがたみの薄まる表現だが。仕事に直結する意味でぴったりか。


 今の自分は探索者で他ジョブへの転職を目指し、ダンジョンにて修行中だ。さすがに祈るだけでは剣術士や魔術師になれない。剣を振り魔術の真似事で能力を伸ばす鍛錬が必須だった。


「ヤバイのが来るぞ!」


「一人麻痺しちゃってる!」


「どんくさエルフは置いてけ!」


 壁を一枚隔てた通路から騒ぎ声が聞こえてくる。仲間を放置する口ぶりだな。


 足音が消えたのを確認後に隠し扉を開ける。ボッチにもパーティメンバーを見捨てるのは無法行為だと分かった。助けられそうなら、お礼を期待してチャレンジだ。


 レンガ型の石が四方を囲む通路を進むと、大部屋の端で誰かが倒れていた。急いで近づき観察する。薄紅色の髪を持つ綺麗な少女で、目を見開き硬直させた身体をピクピクと動かす。麻痺の症状以外は傷もなしか。


「ピギイイイィ!」


 奥で響く嫌な叫びに両脇を掴んで引きずる。急いで通路を戻り隠し部屋に入って扉を閉じた。念のため息を潜めて待つと何者かが通り過ぎる。静かになったところで少女を調べてみた。


【対 象】エビネ♀

【年 齢】20歳

【種 族】ハーフエルフ

【状 態】麻痺

【ジョブ】剣術士 Lv1

【習得済】探索者 Lv7

     精霊術師Lv1


 右目に宿る鑑定の魔眼が対象の情報を脳内に映す。レベルとかいう概念は世間一般的に広まっておらず、おそらく個人の偏りある認識で表現されていた。


 そして、エルフ自体に会ったことがないのにハーフとは。耳の形はヒューマンとほぼ同じ。習得済ジョブの精霊術師も初めて聞くジョブだな。


「解麻痺ポーションを使います」


 ここのダンジョンは、ヘビの環境生物がいて噛まれると麻痺に陥る。対策万全にアイテムを購入したが、そもそも自身への解除は難しいのか。ボッチのハードモード具合に肩を落としながら、鞄の横ポケットに仕舞う小瓶を取り出す。


 黄色い液体を少女、エビネの口元に垂らすけど身体がピクつくせいでこぼれる。じゃあ一気にと流し込んだら瞳の動きが妙で……?


 もしやと、慌てて姿勢をうつ伏せに咥内へ指を入れて吐かせる。これ、喉を上手く通らず窒息しちゃう? 誰かに飲ませるなんて経験はなく正解が分からない。試すにも予備は残り一つ。失敗で買いに戻るのは道中が怖かった。


 あんな鳴き声のモンスターは、しばらく通うが初遭遇だ。できれば正体を聞いておきたい。


「うーん……」


 パーティに捨てられた美人さんは恩を売る相手に適任だ。おっぱい大きいし。悪戯し放題な状況を自覚すると理性が暴走しかけた。


「口移しはマズい、ですか……?」


 下心の発想もナイスアイデアに思える。見知らぬおじさんにされるぐらいなら、死んだ方がマシかもしれんが。逆の立場で考えたらげんなりする。


 時間経過で治れば万々歳な一方、続く痙攣に身体は平気なのかが問題になる。


「置き去りか口移し、どっちにします?」


 最悪な選択肢の提示も隠し部屋に連れてきた親切を理解してほしい。会話すらままならず瞳の動きで判断するしかなかった。


「置き去り……口移し……置き去り……口移し……」


 置き去りは横にぶれて、口移しが縦にぶれる。後者を望んで見えるが、言い訳のスタンスは明確にしとこう。こっちも嫌々だと先手で伝えるか。


 解麻痺ポーションを少し口に含んでエビネと唇を合わせた。舌を押さえつけ、ゆっくり飲ませたあとに咥内を開く。大丈夫、窒息は回避できた。


 ちまちまと繰り返す行為はヒナへの餌やりを連想する。色気はさほどですぐに小瓶が空になった。様子を窺うと痙攣が収まりひと安心だ。


「あ、うぅ……」


「待ってください」


 か細い声を出し上半身を起こすエビネにストップをかけ、主導権を握りにいく。


「おじさんのファーストキスだったんですよ?」


「ひ、ひぃ! す、すみません! とても助かりました! ゆ、許してください!」


 精一杯に凄んでの牽制は成功だ。押しには弱いタイプらしいな。


「助けてあげたんですから、誠意におっぱいを揉ませてくれても構いませんよね」


「ひゃ、ひゃい! どうぞ!」


「嘘です。冗談です」


 革の胸当てを外す動きを止める。まさか、あっさり了承するだなんて。別にパワハラだセクハラだをしたいわけじゃない。


「本当は滅茶苦茶最高のキスでした」


「え、キモ……」


 急に冷めた表情で予想外の口撃にあう。なぜ助けた俺がダメージを受けなきゃならんのだ。


「やっぱり揉ませてください。脱がしますよ」


「きゃー! 犯されるー!」


 両肩を掴んで揺らすと逆に頬を緩ませるのは何?


 たとえ、エロ同人みたいに乱暴を働いても糾弾はされなそうだけど。落ち着かせて会話を試みることにした。

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