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・・・。

少し沈黙が流れた後、私はアントンに話かけた。

「ここでの生活はどう?楽しい?」

アントンは質問の真意を確かめるように、私の顔を見た。

お互いの視線がぶつかり、再び沈黙が流れた。

アントンはフイっと視線を外し、頭を下げた。

「はい。王女様のお陰で何不自由なく暮らせています。ありがとうございます。」

「そう?ならいいのだけど。ねえ、アントン。あなた来年はここを出て働かないといけないでしょ?不安はないの?」

「・・・不安はあります。ここでの生活はすべてが揃っていて、何不自由なく暮らせて、幸せです。でも、俺は、外に出たら自分の力で生きていかないといけない。勉強ができない俺は、文字も読めないし、書けない。おまけに計算もできない。働く力もないしコネもない。そんな俺に、何の仕事があるのかもわかりません。」


勉強もしない、職業訓練もしない、ここで日頃、何をして過ごしているのか。

ふとそんな疑問が湧いた。


「・・・一日はとても長いと思うの。ここで貴方達は何をして過ごしているの?」

「朝起きて、朝ごはんを食べ、片づけをします。洗濯物を洗って、建物の掃除をします。昼ごはんを食べて、また片づけをして、こうやって外で遊びます。そしてお風呂に入って夜ごはんを食べて寝ます。」


なんて幸せな生活なのぉ~。夢の世界だわぁ~。あらぁ~想像以上よぉ~。そうよぉ~。


こんな上げ膳据え膳の世間知らずな生活をしていて、外の世界に出た時に不安を感じられるアントンが、素晴らしいとさえ思えた。物事をきちんと理解し、自分の価値判断がしっかりしている。将来有望な少年だと思う。


「ねえ、アントン。貴方、将来やりたい事とか夢なんてある?」

「・・・そんなのあるわけないです。俺は働けて、生活が出来ればそれでいいです。」

「そう・・・。」

俯いて力なく話すアントンに、私はそれ以外の言葉を見つける事が出来なかった。


こんな将来有望な少年をここで躓かせるわけにはいかないわぁ~。

これが私のやるべき事なんだわ!やっぱりここに来て正解だったわね~。私の勘はあたるのよぉ~そうよぉ~。


私が今向き合うべき問題は、将来この国を支える子供達の未来を考える事。子供達皆が、自分のやりたい事に向けて努力し、夢を見られる世界にする。

とても大変な事だけど、それが実現できればその世界はきっと美しいと思うわ。


私は、早速院長と話す事にした。


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