じらそーれのはしやすめ ぷりも!
※頭をからっぽにしたうえでお読みください。
恵業は、ホワイトボードにびっしり埋め尽くされたインクを見て、長い、本当に長いため息をついた。
「案の定というか、お前、カルマファミリーにとって1番大事なことを陽に教えてなかったのかよ……」
(そこ⁈)と陽は軽くツッコむ。無論、心の中で。
恵業は、くたびれた様子でソファに腰掛ける。
何を言われているのか分からない、ととぼけ顔を決め込む影助。
「格好はつかねぇが、まあいいか。陽には特別に、カルマの秘密を教えてやろう! 勉強会第二弾だ!」
「えー、新参者に手の内明かしまくってるじゃないスかー」と影助。
恵業は、過激派の外野に構わず続ける。
「ずばり陽に質問だ。カルマファミリーの"カルマ"って、なんだと思う」
(カルマ……あまり、馴染みのない響き)
陽は一生懸命、自分なりの答えを絞り出そうとする。
「! ボ、恵業さんが、カルタで世界王者になった!」
「ボスでいいぜ」と恵業はフランクに言う。
「頑張って考えてくれたことに拍手を送りてぇが、全然違うな」
陽は自信があった分、ちょっとショックを受けた。
「"カルマ"ってのはな、
業、Calma、狩る魔と訳すことができる」
陽、紙貸してくれーーと頼まれ、大雑把に10枚分くらい、メモ帳の面積が減った。
恵業は大きな文字で、3つの"カルマ"を書いた。
「一つ、業。これは仏教用語で因果応報という意味だ。
二つ、carma。イタリア語で凪と訳される。……激動の時代にどっしり構える俺たちにぴったりだろう?
そして三つ、狩る魔。これは文字通りだな。」
(イタリア語の授業、中学生くらいまでは得意だった気がするんだけどなあ)
ーー第二言語とはいえ。
業って、"恵業"の業とも一緒だ、と陽は思う。
「よおく覚えとけよォ! 我らがボス・恵業 笛吉郎がお考えになられたありがたーい名だ!
ダブルミーニングならぬ、トリプルミーニングのな!」
Riflessione(反省)中と書かれたプラカードをぶら下げたまま、影助は声高らかに叫ぶ。
「影助、ヨイショしたってお前の給料は上がらねぇぞ」
陽の新たな雇用主。
どうやら粋なこと(ダジャレともいう)をするのがお好きなようで。