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繋ぎ手と照らし手  作者: ビッグツリー
第一章 手掛かりを求めて~羽の神之塔編~
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七話 初めての村

 腕を後ろ手で重ね、腰ほどの長さのある艶やかな黒髪はそよ風に纏い、優し気な微笑みを漏らしては、鼻歌交じりに足を進めるあかりの姿がある。並ぶつむぎの一歩前を歩き、初めて訪れる村の光景を、その身で感じ取っているようだ。


 村には中央に一本の横幅の広い道が通り、その道を左右から取り囲むように、木造の古い建物が無造作に立ち並んでいる。多くは民家のようで、所々に店が並んでいるようだ。その村の大通りとも呼べる道の中、子供達は元気に走り回り、大人達は材木やクワを持って仕事に精を出している。古き良き下町の風景、そんな印象を受ける街並みである。


 

 村を見渡すように歩くあかりは、店が目に付くごとに足を速めては近寄り、並ぶ商品を目を輝かせて覗き込んでいる。まるでおもちゃを与えられて喜ぶ子供のように、無邪気に浮足立つ好奇心が、純粋無垢な心を躍らせているようだ。



 つむぎはくたびれたズボンのポケットに両手を入れ、猫背ぎみの背中であかりの後ろに付いていた。ちょこちょこと無邪気に走り回るあかりに、つむぎはあくびをしながら好きにさせているようだ。



 とある店の前にてあかりは立ち止まり、暖簾に描かれた絵をじっと見つめていた。その店は団子屋、描かれている絵は串に刺さった三色団子だ。


「つむぎ様、この絵はお団子なのですか?」

「ふわぁ~、ん? あぁ、団子だな」

「なぜ串に刺さっているのでしょう」

「その方が食いやすいし、歩きながらでも食えるからじゃないか?」

「そうなのですね!」


 あかりは増々と目を輝かせては団子の絵を見つめている。するとそんな様子に気が付いたのか、店主と思しき初老の男が店の奥から出てきた。


「どうもいらっしゃいませ。団子をお求めですか」

「えっと……あ、いえ……」


 俯いては恥じらい、小さく断りの言葉を零すあかり。首を傾げる店主の前に、小さくなるあかりを尻目に一歩前に出たつむぎは、頭を軽くかきながら口を開く。


「団子を二本もらおっかな」

「ありがとうございます」


 つむぎが小さな巾着からお金を取り出し手渡すと、店主は深々と一礼し、再び店の奥へと姿を消した。


 程なくして店主が現れると、漆で塗られたお盆を手に持っている。その上には、赤い皿に載った二本の串団子。



 つむぎは両手で二本の串団子を手に取り、おもむろにその一本をあかりの前へと突き出した。


「ほらよ」


 差し出された串団子をそっと両手で受け取るあかりは、きょとんとした面持ちでつむぎを見つめている。


「いいの……ですか?」

「あぁ、食いたそうにしてたからな」


 二人はそれぞれ片手に串団子を持ち、店の前に並べられた赤い布が敷かれた長椅子に座ると、つむぎは串を横にして一番上の団子を噛み、串から引き抜いては口の中へと団子を収めた。


「お前は箱入り娘だったんだろうが、こうして外に出たんだ。俺と一緒にいる時くらいは、遠慮なんかしなくていいぞ」


 もぐもぐと口を動かしながら当たり前のように話すつむぎの言葉に、あかりは優しく微笑むと、軽く下を向いては少し赤く染めた頬を照れ隠した。

 

 あかりは串の両端を掴み、団子をその小さな口で一口含むと、つむぎがその顔を覗き込む。


「どうだ? うまいか?」


 長く伸びる白い五本の指先を口元に添えると、あかりは満面の笑みをつむぎへと向けた。


「はい! 大変おいしゅうございます!」






 団子を食べ終え満足した二人は、店主が出してくれたお茶をいただきながら、その場でしばしの食後の休息を取っていた。長椅子の上では、つむぎが仰向けでだらしなく寝転がり、その頭の先に当たる椅子の端で、あかりが膝の上に手を添えては姿勢を正して座っている。


「とりあえず準備をする為に村に来たけど……あかり、何を準備すればいいんだ?」

「そうですね……家を出た私達は、生きていく上で必要最低限となる”衣・食・住”のうち、住を失いました。なのでこの先は住を探しつつ、まずは衣と食を確保するのがよろしいかと思います」


 頭の後ろで腕を枕代わりにするつむぎは、的確に状況判断を行うあかりの言葉に、目をパチクリとさせていた。


「お前、すげーな。俺なんて行き当たりばったりでどうにかなるだろうと思ってたけど、そう言われると説得力あるわ。ただの世間知らずのお嬢様じゃなかったんだな」


 つむぎは感心するように下からあかりの顔を眺め、あかりは頬を染め上げて小さく俯いた。


「……ありがとうございます。過保護にされていたので外に出たことはありませんが、幼少期から受けていた様々な教えを身に着けてきた賜物かと……」

「しっかり勤勉もこなしてたってことか~、俺はあんまり好きじゃなかったな。逃げ出しても、ばあちゃんに掴まって無理矢理教えられてた」

「それも愛ゆえにですよ」

「愛の教育的指導とか、ヤダぞ俺は」


 クスクスと小さな笑いを零すあかりに、つむぎも自然と微笑みを零していた。



「じゃあ、とりあえず服だな。あかりは欲しいのあるのか?」

「えーと……そう、ですね……」


 顔を真っ赤にさせては急に小さくなるあかり。つむぎは不思議そうに顔を覗き込む。


「さっきも言ったろ? 欲しいのがあるなら遠慮しないでちゃんと言え。これから必要な物なんだろ?」

「はい……その……下着の、替えを……」

「なんだ、パンツか」


 つむぎのド直球の言葉に、あかりの大きく膨らんだ羞恥心が、その顔を更に真っ赤にさせた。


 つむぎは椅子から立ち上がると、あかりを目の前に映しては腰に手を添えた。


「確か呉服屋があったはずだ。服関係はこの村にはその店しかないし、そこなら置いてるかもしれない。まずはそこに行くか!」



 ハキハキと物申すつむぎに、顔を赤く染め上げているあかりは、小さく頷くのだった。

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