喧嘩
騒ぎの起きた場所に来たマーオが見たのは厳つい男を足蹴にする美女の姿と、その隣でつまらなそうに髪をいじっている成人してそんなに経っていないと思われる少女の姿だった。
「これは一体どういう場面なんですかね?」
『さあ?』
精霊と二人首を傾げながら成り行きを見ていると、男が女の足の下から這い出ようと暴れている。だが女が軽く踏んでいるように見えるが男はなかなか起き上がれないでいる。
騒ぎが聞こえてきてからそんなに時間が経っていない。それでも一応の事態の収束をしたのか事態を窺おうと集まってきた面々がその場から離れていく姿が目立っていた。
来たはいいがどうしたものかとマーオは悩んだ。このままここにいて何があったのか確認したい気持ちもあるが、ここにいることで厄介ごとに巻き込まれる可能性を考えたのだ。
「これに懲りたら二度と馬鹿なこと言うんじゃないよ!!」
マーオが逡巡しているうちに問題は解決してしまったようで、女が男を蹴りつけてそれで終わりだと立ち去ろうとした。
だが男の方は我慢が出来ず、吐き捨てるように女に言葉を投げつけていた。
「はっ!! 皆知ってることだろうが、お前らが実力もないってえのに勇者の旅に無理やりついて行って邪魔してたってことはよ!!」
「何だって?!」
「ふん!! 本当の事だろうが!! その証拠に勇者は城で持て成されてるのにお前たちはこんなとこにいるじゃねえか!!」
男の言葉に女は再度怒りを覚え殴りかかろうとするが、それよりも早く男は走り去っていく。
その言い逃げする姿は板についていて、あまりに見事な負け犬姿に精霊は声をあげて笑っていた。
だがマーオは男のそんな姿よりも言い捨てた言葉の方が気になっていた。
「あ~~もう!! あんた達も見せもんじゃないんだから、さっさとどっかいきな!!」
女はいまだに周りにいて様子を窺っている者に痺れをきらし大声を張り上げていた。その言葉に周りに僅かに残っていた者たちも怒りの矛先が自分に向いてはたまらないとそそくさと離れていく。
マーオはその場を離れるか一瞬考えたが、男の言葉で気になることがあったためその場から動かずにいた。精霊の魔法があると油断していたこともある。
「あんたも何時までそこにいるつもりなんだい」
「へ?」
しかし気にされないと思っていたマーオの考えとは裏腹にその場で佇んでいたマーオを腰に手をあてた女が睨み付けていた。




