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化学式と呪文

2話です!

「この道具がなんなのか答える前に一つ聞きたいんだが…」

「なんだ?」

「そもそも何故僕らは互いに話が通じてるんだ?」よく分からないが、少なくともアクタはこちらの世界の住民ではないだろう。言語なんてこの地球上でさえ無数に存在する。違う世界の住民に言葉が通じる訳がない。

「そんなのは簡単だ。私がちょいと魔法をかけた。」

「…そうだろうとも」

魔法ってのは異世界の住民の言語も翻訳できるらしい。便利なものだ。

「そういえばさっきは文字も読めてたよな?」

「いや、あれはお前が読みを言ってから書いてたからだが…まあ一応読めはするぞ?」

「なら、これはどうだ?」

僕の名前を書いた封筒を裏返し、ボールペンを走らせつつこの封筒がかつて試みた銀杏封筒の名残だということを思い出す。

そうして僕が書いたのは、『H2O』。

言わずもがな、水の化学式である。大抵こういう時に書くのはかっこいい数式か有名なフレーズと相場が決まっている。しかし、僕は数学が苦手な理系である。数学も文学も知ったこっちゃないのだ。

話が逸れたが、魔法とやらの翻訳機能の性能を知りたくなったのだ。

「あー、えいちにおー?と読むのか?お前の国の言葉ではないだろう?」

なるほど、恐らく彼女の翻訳魔法(仮)は今日本語に設定されていて、大方カタカナの英語でも見えているのだろう。

「これは化学式ってやつで表した“水”だ。」

「水!?このうねうねした記号がか?」

「まあそのうねうね記号一つ一つに意味があって、それらを組み合わせることでこの世の物質全てを表すことが出来るって訳だ。」

「ああなんだ、それなら」


「呪文と一緒だな。」

なんとか会話を続けているが、未だに興奮が収まらない。まさか私の魔法がここまで使えるとは…

この魔法は、多言語翻訳を目的として私が開発したものだ。こちらの世界には大まかに四つの言語が存在している。(向こうの世界にもいくつかあるようだが)

だが、基本的にこちらの世界では四つ全ての言語を習得しているのが当たり前である。翻訳するなんて発想すらない者もいる。そんな中、私は未だに母国語以外の言語がカタコトなのである。いくら落ちこぼれとはいえ、こんなこともできないようではマズい。そう考えて必死に開発したのがこの魔法である。お陰で私はなんの問題もなく全ての言語を操れるようになったが、まさか異世界の言語にも対応できるとは…

「呪文と一緒?どういうことだ?」

「呪文はより強力な魔法を放つために、様々な効果を持つ短い呪文をいくつも繋げて詠唱するからな。」

「それより、カガクシキ」

「え?」

「もっと教えてくれよっ!」


「あー、外が暗い…」

「ん?ああ、もうそんな時間になってしまったか」

「よし、僕はもう寝るぞ。まだこれが夢と決まった訳じゃない」

「そんな事言っていいのかー?まだまだ質問漬けにしてもいいんだぞ?」

「勘弁してくれ」

あれから数時間、僕はアクタに質問漬けと言う名の暇つぶしに付き合わされた。

彼女もまた暇らしく、たまに愚痴や普段の暇つぶし方法やらをこぼしていた。

彼女がホワイトボードの向こうに引っ込んで行ったのを見届けた後、僕は眠りについた。


「…寝たのか。」

『夢なーらばーどーれーほどーよーかったでーしょーう』などと知らない歌を口ずさみながら布団とやらに身を埋めるイトセにしつこく言われたため、私は痺れた腕をさすりながら部屋に戻った。

そこで『ボールペン』という道具について聞くのを忘れていたことに気付きまた魔法陣に上半身を乗り出しているのだが…

「まあ、明日にしといてやるか」

丁度開け放たれた窓の外には、綺麗な満月が浮かんでいた。

感想を下さい!ほんとモチベーション上がるので!!!

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