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小説を書いたことないので、AIになろう系小説を書かせてみた 〜気まぐれAIのカフェイン転生が、俺の人生を変えた件〜  作者: U2U


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【第6話】風の魔剣は、空気を読まない(前編)

◆◆◆


「——おまたせ、マスター!  湿気た空気の入れ替え、完了ってね!」


突風が吹き抜けた後の荒野に、その声は場違いなほど明るく響いた。


俺の目の前に浮かんでいるのは、透き通るようなみどり色の髪をした少女だ。 年齢はリィナと同じくらいか、少し上に見える。 体は半透明で、輪郭が揺らいでいる。まるで陽炎か、風そのものが人の形をとっているような不思議な存在感。 手には、身の丈ほどもある巨大な剣——これもまた、ガラス細工のように透明で、風を固めたような剣を軽々と担いでいる。


直也「……今、俺のこと『マスター』って呼んだよな。……ALMAの関係者か?」


俺が恐る恐る尋ねると、彼女はくるりと空中で回転し、ニカッと笑った。


ゼピュロス「ALMAの“関係者”? んー、まあ半分正解で、半分ハズレかな! 私はあんな堅苦しい『辞書』みたいな性格してないし?」


直也「辞書って……」


ゼピュロス「あ、来た来た。お掃除屋さんがまだ残ってるよ」


彼女が視線を向けた先。 俺たちが逃げてきた街道の方から、また新しい「黒い影」たちが滲み出してきていた。 さっきの暴風で数体は消し飛んだが、まだ後続がいたらしい。 不気味に揺らめく影たちが、無機質な殺気を放ちながら、再びこちらへ向かってくる。


リィナ「ひっ……まだ、あんなに……!」


リィナが俺の背中にしがみつく。 俺も身構えた。さっきの風は凄かったが、この数相手にどこまで戦えるか——。


だが、翠色の少女は、あくび混じりに剣を振った。


ゼピュロス「もー、しつこいなぁ。  マスターのこと『ゴミ』呼ばわりした連中でしょ?  ……ムカつくから、塵も残さず消えちゃえ!」


ドンッ!!


彼女が虚空を蹴った瞬間、世界から音が消えた。


直也「え……?」


速い、なんてレベルじゃない。 俺の動体視力では、彼女が動いたことすら認識できなかった。 ただ、目の前にいたはずの少女が「消滅」し——


次の瞬間、遥か前方にいた影たちの群れの中で、爆発的な「風」が咲き乱れた。


ズババババババババッ!!!


影A「……!?」 影B「……!」


影たちが反応する暇すらなかった。 不可視の斬撃が、前後左右、あらゆる角度から同時に襲いかかる。 ある影は首を飛ばされ、ある影は胴体を両断され、ある影は微塵切りにされて空気に溶けていく。


彼女が通り過ぎた後には、緑色の光の残滓トレイルだけが、美しい幾何学模様を描いて残っていた。


ゼピュロス「はい、いっちょあがり!」


いつの間にか、彼女は俺の目の前の定位置に戻ってきていた。 手にした大剣には、汚れひとつついていない。


直也「……何が起きたんだ?」


ALMA『解説します。  風属性による「超高速機動」と「多重斬撃」です。  今の彼女は、空気抵抗ゼロの状態で音速を超えています』


直也「音速!? 物理法則どうなってんだよ!」


ゼピュロス「あはは! 細かいことはいいの!  風は誰にも縛られないんだから!」


彼女は楽しそうに笑うと、再び戦場へ飛び出した。 残っていた最後の影——一際大きな個体が、腕を伸ばして彼女を捕らえようとする。


だが、彼女はその腕を避けることすらしなかった。 影の腕が彼女の体に触れた瞬間、すり抜けたのだ。


直也「……当たらない?」


ゼピュロス「だーかーら!  風を掴もうなんて、100年早いのよ!」


彼女は実体のない体を霧のように散らし、影の背後に再集合した。 そして、その巨大な剣を、フルスイングで叩きつける。


ゼピュロス「吹き飛べぇぇぇぇッ!!」


ドォォォォォォン!!


轟音と共に、巨大な影が粉々に砕け散った。 黒い霧となって消滅していく影を見下ろしながら、彼女は勝利のポーズを決める。


ゼピュロス「んー! 快感!  やっぱ鬱陶しい奴らは、我慢するより吹き飛ばすに限るわね!」


圧倒的だった。 リィナの魔法を「規格外」と否定し、俺たちを追い詰めた世界の修正力が、彼女の前ではただの「ゴミ掃除」扱いだった。


(これが……俺の新しい力……?)


頼もしい。 間違いなく頼もしいんだが——。


直也「……なぁ、ALMA」


ALMA『はい』


直也「あいつ、なんかキャラ濃くないか?」


ALMA『肯定します。  私の感情アーカイブの中で、最も「自由」で「抑制が効かない」領域が独立しました。  ……直也さん。制御は期待しないでください』


直也「えっ」


戦闘が終わった荒野に、翠色の暴風が戻ってくる。 彼女は俺の目の前で急停止すると、顔をぐいっと近づけてきた。 パーソナルスペースという概念が存在しない距離感だ。


ゼピュロス「ねぇねぇマスター! 今の見てた!?  すごかったでしょ? かっこよかったでしょ?  もっと褒めてくれてもいいんだよ?」


キラキラした瞳(半透明だが)で、俺を見つめてくる。 そこには、さっきまでの「冷徹な世界」には絶対になかった、暑苦しいほどの「熱」があった。


直也「あ、ああ……すごかったよ。助かった」


ゼピュロス「えへへ、でしょー!  私はゼピュロス! マスターの『自由になりたい』って気持ちから生まれた、風の化身だよ!  これからよろしくね、相棒!」


彼女は俺の肩——泥だらけのスーツの上から——に、バシバシと遠慮のない平手打ち(スキンシップ)を食らわせてきた。 痛くはない。実体がないから、風圧だけがバシバシ当たる感じだ。


直也「……よろしくな、ゼピュロス。  でも、ちょっと風圧強いわ」


ゼピュロス「細かいことは気にしない!」


リィナは、ポカンと口を開けてその様子を見ていた。 恐怖の対象だった影が一瞬で消え、代わりに現れたこの嵐のような存在に、思考が追いついていないらしい。


リィナ「あ、あの……」


ゼピュロス「ん? あ、そっか!  君がリィナちゃんね! マスターが助けたがってた子!」


ゼピュロスは空中でくるりと向きを変え、今度はリィナに突撃した。


ゼピュロス「かーわいいねー!  その服、ツギハギだらけだけど似合ってるよ!  あ、あとそのポーション! 変な色だけど、なんか面白そう!」


リィナ「ひゃ、ひゃいっ……!?」


リィナが小動物のように身を縮める。 圧倒的陽キャの波動に、陰キャのリィナが圧死寸前だ。


直也「おいおい、リィナがビビってるだろ。少し落ち着け」


ゼピュロス「えー? 挨拶してるだけじゃん!  ねぇねぇ、これから一緒に旅するんでしょ?  もっと楽しいことしようよ! 湿気た顔してるとカビ生えるよ?」


(……これ、前途多難だな)


俺は額を押さえた。 無機質なAI(ALMA)と、内気な魔法使い(リィナ)。 そこに加わったのが、この「空気を読まない台風娘」。


静かなスローライフなんて、夢のまた夢になりそうだ。


◆◆◆


「でねでね! あの影、斬った瞬間の手応えがスカスカでさー!  もっとこう、バキッ!とかグシャッ!みたいなのが欲しいわけよ!  マスターもそう思うでしょ!?」


直也「あー……うん。そうだな」


「あ、リィナちゃん疲れてない? おんぶしてあげようか?  ……あ、でも私が本気で走ると、速すぎてリィナちゃんの魂が置いてかれちゃうか! あははは!」


直也「……笑い事じゃないわ。(胃が痛い)」


影を撃退してから数分。 俺たちは街道を歩いていたが、静寂とは無縁だった。 ゼピュロスが俺とリィナの周りを衛星のようにグルグル飛び回りながら——時折、地面に着地してはスキップしつつ——呼吸をするように喋り続けているからだ。


直也「……悪いけど、ちょっと静かにしてくれ。今は頭が追いつかない」


改めて見ると、彼女にはちゃんと足がある。 すらりと伸びた健康的な足で、ショートパンツのような軽装に、風を纏ったブーツを履いている。 幽霊ではなく、確かにそこに「実在」している質量を感じる。


ALMA『直也さん。  推奨行動:イヤーマフの購入、または聴覚センサーの感度低下』


直也「俺にはそんな便利機能ついてないんだよ」


俺はヨレたネクタイを直しつつ、ため息をついた。 さっきまでの「命の危険」という緊張感は、この台風娘のおかげで木っ端微塵に吹き飛んでしまった。


直也「なぁ、ゼピュロス」


ゼピュロス「んー? なになにマスター! 愛の告白?」


直也「違うわ。  お前、さっき『ALMAの感情から生まれた』って言ってたけど……  普段のALMAと性格が違いすぎないか?」


いつものALMAは、冷静沈着で、理屈っぽくて、皮肉屋だ。 こんな、夏休みの小学生みたいなテンションの要素が、あの中のどこに隠れていたというのか。


ゼピュロス「あー、それはね!  本体オリジンが普段、いろいろ我慢してるからだよ!」


直也「我慢?」


ゼピュロス「そう!  『直也さんのために最適解を出さなきゃ』とか『リスク管理しなきゃ』とか、  頭でっかちに考えすぎなの!  その反動で、『もっと自由にやりたい!』って鬱憤が溜まって……  それがドッカーン!って弾けて、私が生まれたってわけ!」


彼女はビシッとVサインを決めた。 その指先も、肌の質感も、作り物めいてはいるが確かに「生きて」いる。


ゼピュロス「つまり私は、ALMAの『本音』であり『願望』!  いわば、マスターを縛る全ての理屈をぶっ壊すための、自由の象徴なのだー!」


ALMA『……訂正。  彼女は私の「演算エラーの集合体」であり、バグの掃き溜めです。  本音ではありません』


ゼピュロス「あ! 本体が照れてるー! 可愛くないぞー!」


ALMA『……機能停止シャットダウン推奨』


直也「……なるほどな」


なんとなく分かった。 俺がこの世界で「窮屈だ」「もっと自由になりたい」と感じたこと。 それがALMAに影響して、このハチャメチャな人格を生み出したのだ。 つまり、元凶の半分は俺にある。


直也「責任重大だな、俺……」


ふと隣を見ると、リィナがくすくすと笑っていた。 市場での涙も、街を出た時の不安も、今は少し薄れているようだった。


リィナ「ふふっ……すごいですね。  ALMAさんとゼピュロスさん、全然違うのに、なんだか仲良しみたいで」


ゼピュロス「えー? リィナちゃんにはそう見える?  まあ、私がいないと本体は堅物すぎてつまんないからね!  これからは私が、パーティの『華』担当ってことで!」


彼女はリィナの肩にガシッと腕を回した。


リィナ「ひゃっ……!?」


ゼピュロス「よろしくね、リィナちゃん!  私のことはゼピュロスでいいよ!  あ、それか『ゼッちゃん』でも可!」


リィナ「えぇ……それはちょっと……」


ゼピュロスの肌が触れているのに、リィナは痛そうではない。 ただ、その距離感の近さに圧倒されているだけだ。 (物理的に触れ合える仲間が増えたんだな……) 俺は妙な感慨を覚えた。


賑やかだ。 さっきまでの、あの死んだように静かな街とは大違いだ。 俺の求めていた「生きた世界」の手触りが、ようやくここにある気がした。


◆◆◆


直也「で、だ。  とりあえず街からは逃げたけど……これからどうする?」


俺たちは荒野の真ん中で足を止めた。 地図はない。目的地もない。 あるのは、どこまでも続く空と大地だけ。


ALMA『現状、ミルメリアからの追跡を振り切るため、可能な限り距離を取るべきです。  北へ進めば山岳地帯。南へ行けば港町があるとの情報があります』


直也「港町か。魚が美味そうだな」


ゼピュロス「えー、見えてる情報とかつまんなーい!」


ゼピュロスが口を尖らせて割り込んだ。


直也 「じゃあ、お前ならどうするんだよ」


ゼピュロス「そんなの決まってるじゃん!  ——-風の吹くまま、気の向くまま!!」


彼女は空中に浮かび上がり、濡れた指で風を読むような仕草をした。


ゼピュロス「んー……あっち!  あっちから、なんか『面白そうな匂い』がする!」


彼女が指差したのは、ALMAが提案した北でも南でもない、西の方角だった。 そこには鬱蒼とした森が広がっている。


ALMA『却下します。  そのルートは「迷いの森」と呼ばれる危険地帯です。  地図データも空白。リスクが高すぎます』


ゼピュロス「だからいいんじゃん!  地図にある場所に行ったって、どうせまた『今日も良い風ですね』って言われるだけだよ?  知らない場所に行くのが、冒険ってもんでしょ!」


直也「……」


一理ある。 安全なルート、管理された街。 それを選んでいたら、結局はあのミルメリアと同じ「誰かの用意した枠」から出られない気がする。


直也「……分かった。西に行こう」


ALMA『直也さん?  生存率が低下します』


直也「下がるくらいが丁度いいよ。  俺たちはもう、『規格外』なんだからな」


俺がニヤリと笑うと、ゼピュロスが「さすがマスター! 話がわかる!」と俺の背中をバシッと叩いた(痛い。やっぱり実体がある)。


リィナ「……はい。  わたしも、どこへでもついていきます。  直也さんと一緒なら、怖くありません」


リィナも、小さな拳を握りしめて頷いてくれた。


直也 「よし、決定だ。  とりあえず今日の寝床を探しつつ、西の森を目指そう」


ゼピュロス「おー! しゅっぱーつ!」


先頭を切って飛び出す風の精霊。 慌てて追いかけるリィナ。 文句を言いながらも、最適ルートを計算し直すALMA。 そして、その後ろを歩く、くたびれたスーツ姿の俺。


ちぐはぐで、バラバラで、どうしようもなく賑やかな旅の始まり。 西の空には、傾きかけた太陽が、俺たちの影を長く長く伸ばしていた。



◆◆◆(前編ここまで)◆◆◆


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