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52.玲子との最後

暗い銀河。

宇宙の真ん中に立っていた。

歩き出した私には自分から伸びる銀色の細い紐が命綱のように感じてその方向へ進んでいく。

呼ばれるように進む私の体は重だるくてどこかで横になりたくなる。

そしてふと瞬きをした瞬間、懐かしい光景が広がった。

美華と二人で暮らしていたワンルームのアパート。

部屋の真ん中に置いていた小さな卓袱台(ちゃぶだい)の所に一人の女性が座っていた。

()だ。

黒い髪を後ろに纏めて縛り、部屋で着ていたTシャツとゆるいスボンでいつも通りに座っていた。

私はここに居るが、玲子もここに居て、そしてこっちを見上げてきた。


「…お邪魔します」


無言で座るのも居心地が悪くて声を掛けるが玲子はただ微笑むだけ。

了承かなと思い、座ってただ黙って見つめ合った。

ここが何なのか、私達はなぜ二人で向かい合う事になったのか。


「なぜここに…あなたが居るの?」


「………」


自分を何て呼べばいいのか、この女性は本当に玲子なのだろうか。

質問をしても返答はない。


「あなたが私なら何故ここに居るの」


「………」


ただ微笑んで居るだけの彼女は答える気が無いのかもしれない。

でもこちらが質問すると少しだけ表情が変わる。

さっきは微笑みで今は少しだけ楽しそうに笑っていた。

その意味が分からないまま考えてみる。

ここに呼ばれた意味。

目の前の玲子が私だとすると、なぜ玲子は現れたのだろうか。


『玲子が剥がれた』


ダーディナ様がそんな事を言っていた気がした。

だからダーディナ様との繋がりが無くなったと。

剥がれた玲子は何処に行ったのかと考えたら答えは目の前に座っているのではないか。


「あなたが私から剥がれた玲子?」


今度の笑みは正解と言っていると確信出来た。

剥がれた玲子が今目の前に居るという事は何かを伝えたいとか。

でも一切喋る事がないとなると伝えたい事が分からない。


「喋れないの?」


肯定と言えるはにかむ笑み。

質問にも頭を振るより顔で表現する。

自分の事ながら面倒くさい奴が相手になってしまった。


「ここがアパートだと仮定するなら、あなたは成仏出来ない霊って事よね」


否定の悲しげな笑い。


「あなたが私を呼んだ」


肯定の笑い。


「成仏したい」


複雑な笑み。


「私と一緒に行きたい?」


満面の笑み。

剥がれた玲子は私と共に行きたいという事で呼んだらしい。

でもどうやって?

困惑が顔に出てたのか、笑いながら両手を差し出してきた。

その手を繋ぐと流れてきたのは玲子だった私の気持ち。


「そっか…これは成仏とは違うわね」


人が人として新しい生命へと生まれ変わる時、誰しも記憶かリセットされる。

なのに変わった生まれ変わりをしてしまったせいでリセットが上手くいかなかった。

だから前世が消化不良で残ってしまっている。

それを消化したいのだ。

記憶が消えてしまったとしてもやる事は変わらない。

この国の為に聖女の役に立ち、そして家の為に結婚をする。

それだけの事。

玲子(わたし)レイディア(わたし)だから。


「これからも私の中でよろしく」


笑い掛けると背後を指さされた。

振り向くと私から伸びた黒い紐。

手を繋いだまま困惑した顔を私が見せた瞬間、ザシュッという切り裂く音が響き渡りアパートの天井が裂けた。

また同じ音が響いて壁が裂けた。

そして最後に同じ音で床が裂けて一緒に黒い紐が切り離され、足が吸い込まれる。

手を離していないのにいつのまにか玲子は居なくて、胸の片隅に嵌まった。

欠けたピースのように。

投げ出された体は何かに守られるようなきつい締め付けを感じたけど、安心感もあって身を委ねる。


「レイディア様」


聞こえた声に目を開けると広い背中が目の前に。

お腹に圧迫を感じて周りに目を向けると大きな体の肩に担がれた状態であったらしい。

頭を上げると反対側には聖女が担がれていて脱力感から気を失ったままだと考えられた。

そして何で私はこうなっているのだろうか。


「おい、レイディア孃を離せ」


「はい」


ゆっくりと降ろされて地に足が着いても力が上手く入らないまま座り込みそうになり、それを力強い体に支えられた。


「王太子殿下」


支えてくれた嘗ての婚約者と目が合う。

そして次に降ろされた聖女はまだ意識がない状態で王弟にお姫様抱っこをされていた。

どう見ても恋愛に発展しそうな美男美女が正真正銘な親子とは何とも悲しいかな。


「離せ!このクソッ!」


そして助けてくれたらしいガオンの大きな体で見えなかったが、鎖に締め上げられたファティナが髪を振り乱して叫んでいた。


「ん?ファティナ?」


夢に出てきたご自慢の体は少し痩せている感じだし、髪も艶無く短め、胸も無くなって着ていたドレスか可哀想な感じになっていた。

そして極めつけが睨んでくる目に既視感。


「置物侍女…」


私を監視していた置物侍女がそこにいて私を睨み続けていた。


「彼女が探していた侍女ですか?」


「その…ようですね…」


「彼女はファティナという初代国王の婚約者だったそうです」


「初代国王の婚約者!?」


「はい。レイディア孃とダーディナ様の繋がりに感化され前世の記憶が蘇ったそうです。そしてダーディナ様の崇拝者だったそうですよ」


「彼女は魔力研究員の一員だったんだ」


王太子の説明と共に背後に近付いて着たダーディナ様が補足説明をしてくれた。

が、情報が中途半端過ぎて理解が追い付かず助けを求めるようにマキスト様を目で探してしまったのだった。


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