表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/53

12.王太子は暴走して天誅

計画していた初仕事の前に急遽初仕事を終えてしまった聖女は少しスッキリした顔で馬車の中に座っていた。

私達は何とも言えない顔で各自座っている。

だって浄化ってうよりは食事だったよ。

グワッて大口開けてベロンッて舌で巻き付けて吸い上げていたよ。

ラーメンでも食べてる感じで。

ラーメンなんて食べ物あったかな。


「皆さんどうしたんですか?」


「いや、そのだな…」


王太子との距離も少し空いた気がするけど嬉しくも何ともない。

瘴気が無くなるんだから王太子として喜んで賞賛するべきではないのか。

自分の理想の女性だったはずなのに素っぴんジャージでビール飲んでる所を見て幻滅したみたいな。

ジャージって何、ビールって。

この頃頭の中で知らない単語が飛び交うのが多くなってきた。

聖女が来てから更に酷くなったように思える。


「次の場所はもう少しです。聖女様は疲れていませんか?」


王弟殿下は態度を変えずに聖女を気遣い、聖女はそれに笑顔で返した。


「はい、さっきから元気というか、何か体を動かしたくなるような感じなんです。お腹というか胸がいっぱいという感じで」


興奮気味の聖女の目はキラキラしていて走り出してしまいそうな気配だ。

お腹が一杯の部分で三人の空気は完全に凍った。

これは食べたね。

瘴気は聖女のご飯なのかもしれない。

異世界では瘴気を食べるのが主流なのかもしれない。

だから聖女を召喚させて食べてもらうのだろう。

そう私は結論付けた。


「聖女様は疲れていないのだな。だが、旅はまだまだ続く。これからまたこの様な急に起こる浄化をしなくてはいけなくなるかもしれない。私の肩でゆっくり休んでいるといい」


よそよそしさはあっという間になくなったかと思えば聖女の頭を自分の肩へと寄りかからせる王太子。

目をパッチリ開いたまま聖女は私を見つめてくる。


「この世界にセクハラって言葉あります?」


ある。

そう言いそうになって飲み込んだ。

この世界にはない。

はず。

聞いた事のない言葉なのに理解できるのはなぜなのか。

性的な嫌がらせの言動のような意味合いだったと記憶しているが、考えても考えてもその言葉は分からない。

また胸がモヤッとする。


「ありませんね」


王弟殿下が私の代わりに返事をするが、聖女は確実に私へ質問していた。

男性である王弟殿下は王太子の味方に付くと考えたとみた。

同性の私に助けを…求めた?

聖女は王太子の行動が迷惑なのだろうか。

そんな疑問がきっと顔に出ていたのかもしれない。


「じゃあ、DVなんかも無いんですね」


暴力系な意味合いだった気がした。

ズキンッ

頭に何かの衝撃が加わったように痛む。


「王太子殿下、聖女様を離して頂けますか?」


「お前が何を言う」


「聖女様はお疲れでないと…」


「煩い!そんな嫉妬など醜いにも程がある!」


私が口を出して良い案件ではなかったと後悔しても遅い。

後悔先に立たず。

好きでもなかったけど、優しさに絆されて好きになった。

でもその優しさは偽りだったなんて、百年の恋も冷めるものよね。

胸の中に冷たい風が吹き視線をそらすと、隣で動く気配がした。


「王太子殿下はご自分の立場を弁えて下さい」


王弟殿下は動いている馬車の中でも危なげなく動いて王太子の肩から聖女を離してあげた。

無理矢理ではなく、スマートに動いた後はまた元の場所に帰っていった。

横に居る私には見えないのだが、顔を上げて真っ直ぐ王太子を見つめている王弟殿下は稀な気がする。

いつもフードに顔を隠している印象が強かったから。


「叔父上まで聖女様との仲を嫉妬するのですか?」


鼻で笑う王太子に私の気持ちは確実に冷めて怒りという新しい熱さを吹き込んでくる。

聖女も座り直して王太子との距離を少し取り、引いた表情で横に目を向けていた。

彼女は感情を隠せないようだ。


「あの、聖女ってどの辺りの地位ですか?」 


急な話の方向転換に私と王弟殿下は顔を見合わせてしまった。

お互い口元を手で隠しながら考え込むと前から軽快な声の返答が飛んできた。


「王族と同等だ。だからこそお互いに手を取り合って瘴気に立ち向かい、愛を語らってその先を求めるのだ。だから安心して私と結婚することが出来る」


誰もそこまで言ってない。

聖女の立ち位置聞いてるわけで、王族との結婚など話題に出てきていない。


「王族ってリョウイン王弟殿下ですか?」


リョウさんという呼び方は改めていたらしい。


「なっ!?違う!叔父上はどこかに婿へ入る予定だからな!その点私は王太子だ。私の花嫁には何不自由ない生活が保証されている」


「レイディアさんの将来は安心ですね」


「こいつの話はしていない!こいつは侯爵令嬢だから聖女様より格段に地位が下になる。聖女様は私の隣で王妃になるのが相応しい地位ということだ」


「こいつって……婚約者なのに?」


「聖女様が来る前に陛下が決めた婚約者だ。聖女様との結婚なら誰もが異を唱える事はないだろう」


同じ女だからなのか、この会話中の聖女の気持ちが分かる気がしてきた。

物凄く馬鹿にしている。

分かっていてこんな会話をしている。

しかも聖女の目が完全に王太子を蔑んでいた。


「それはレイディアさんとの婚約を破棄して私と結婚するという事ですか?」


「ああ!その通りだ!問題など何もない!」


承諾の意を得たと言わんばかりに目をキラキラさせて聖女を見る王太子はそのまま抱き着こうとした。

が、ガコンッ!!!

聖女は脚を振り上げて王太子の腹に膝をめり込ませ、衝撃で反対側の壁に吹き飛んでぶつかった。

短いスカートが盛大に捲れ上がるのを見て私は慌て、手でスカートを抑えに動いた。


「あ、私レギンス履いてるんで大丈夫ですよ」


にこやかに笑う聖女はスカートを捲って黒い下着を見せてきた。

だが、そうじゃないのだよお嬢さん。

読んで頂きありがとうございます。

下部にあるいいねや感想、評価を貰えたら幸いです。

宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ