04
昼休み。
あいから友達とお昼ごはん食べると連絡があり。
知久は生徒会室に行っていて。
1人で何か食べようと。
学食に向かっている途中だった。
廊下の隅の端の方。
3人の女子がいて。
それも3人とも同じクラスの女子で。
1人の女子生徒を。
2人の女子生徒が詰め寄る感じで……。
「あたしはいつものやつ」
「わたしはどうしようかな」
「最近コンビニに新商品が出たんだっけ」
「あれがいいな」
「あっ!」
「あたしもそれにしようかな!」
「で……でも……コンビニは……外に……」
「見つかったら停学だから気をつけてね!」
「お金はいつもどおりで」
「でも……ずっと……もらえて……」
「何か問題がある?」
「…………」
「向こうでずっと友達がいなかったんでしょ?」
「友達が欲しかったんだよね」
「だからあたし達が友達になってあげてるじゃない」
「そうそう」
「だからその恩返しってことで!」
……
…………
………………
典型的なイメジのかつあげ。
高校生になってもあんなことするやつがいるのかと。
あさひは思わずため息をつき。
ああいうやつと同じ学校というのが恥ずかしくなった。
そして……。
あいと一緒じゃなくて良かったと。
あいは自分と違って本気で悲しんでしまうから。
できるだけああいうのは見せたくないとあさひは思っている。
あさひ「……まぁ見てしまったからな」
何もせずに通り過ぎるのも寝付きが悪そうになる。
どうしようかとあさひは考えて。
できるだけ穏便にすませたいと思って。
……演技には自信はないんだけどな。
と心のなかで思いながら……。
あさひ「よう」
あさひ「こんなところにいたんだな」
3人に向かって言った。
3人は驚いた表情を見せて……。
あさひ「ほら」
あさひ「委員会で一緒になっただろ」
あさひ「その時に昼飯一緒に食おうって約束したじゃないか」
とあさひでまかせを口にする。
あさひ「生徒会の知久からもお前と仲良くするようにって」
あさひ「頼まれてるからな」
「生徒会の知久って……」
「あの不良っぽい……」
小声で話す2人。
もちろん知久からそんなことを言われてない。
でも……。
権力はこういう時に使うもんだよなと。
自分はそういうやつだよなと。
「行こうぜ」
そう言ってあさひは手を伸ばす。
それは明らかに過剰演出ではあったが。
「う……うん」
あさひの方に手を伸ばしてくれたから。
あさひはその手を握って。
その場から離れていった。
……
…………
………………
「あの……ありがとう……ござい……ました」
あさひ「俺が嫌なもの見たくなかっただけだしな」
あさひ「……というか変なナンパみたいになっちまったな……」
「そんなこと……ない……です」
歩いて廊下の端から端まで移動して。
あさひは手を離して。
そういえば女子と手をつないだのはあい以外初めてだなと。
そんなことを考えつつ……。
あさひ「そういえば俺の名前も知らないよな」
あさひ「俺はあさひ」
あさひ「同じクラスだけど……」
「うん……顔は……分かる……」
あさひ「えっと……えちるさん……だったよな」
えちる「うん……覚えてて……くれたんだ……」
あさひ「今さっき思い出したんだけどな」
とあさひは嘘を付きつつ。
えちるが転校してきたことを思い出す。
もうだいぶ前と言えるぐらいの時期に。
とある高校が全焼するという出来事があった。
夜中のことだったので死人も怪我人も出なかったが。
学校という大きな建物が燃え尽きるという異常事態。
かなりのニュースになったのを覚えている。
事故か事件か。
専門家の間でも意見は別れていたが。
結局のところは原因不明のまま。
ニュースでは取り扱わなくなった。
といっても……。
問題なのはそこに通ってた生徒たち。
目の前にいるえちるもその1人で。
学校がなくなってからしばらくして。
あさひ達が通う高校に転校してきた。
えちる「前の学校でも……友達いなくて……」
えちる「わたし……うまく……しゃべれないし……」
えちる「それで……いじめ……られてて……」
えちる「でも……学校が……なくなって……」
えちる「……これでうまく……いくかもって……」
えちる「思ったけど……」
友達になろうと言ってきたのがああいう奴らだった。
どう慰めていいかあさひには分からなくて。
少し言葉に迷いながら。
あさひは言った。
あさひ「それなら俺と友達になってくれないか」
えちる「……え……?」
あさひ「俺も友達が少ないし」
あさひ「今日もその少ない友達にふられて」
あさひ「1人で学食に行こうとしてたんだ」
あさひ「だからえちるさ……」
あさひ「えちるが友達になってくれると嬉しい」
えちる「…………」
あさひ「もちろん、えちるがいいならだけど」
えちる「い……いい……の?」
えちる「わたしって……話すのが……苦手で……」
えちる「とろくて……何も……できないけど……」
あさひ「友達になることにそういうのは関係ないからな」
えちる「そ……それ……それなら……」
えちる「わ……わたしと……友達に……なって……ください……」
あさひ「もちろんだ」
そう言ってあさひは微笑んで。
えちろも微笑んで。
その笑顔を見ながら。
たまにはいいことをするのもいいもんだなと。
あさひは思った。




