標的狙撃【スナイパー】
【お知らせ】
かなり前にこの作品の省略名を募集したのですが、省略名を決めました。
その名も『あじくる』です。
まぁなんと呼んで頂いてもいいですけど、とりあえず正式にはこうしようかと。
「俺を捕まえにきたァ?ッてことは俺に喧嘩を売りにきたッて解釈してもいいんだな?」
「─────。」
アクセルと呼ばれた青年の問にアルケナは答えない。アルケナの眼前に立っている青年。アクセルはまるで外界から乖離されているかのような異様なオーラを放っている。
「ッどいつもこいつもてめェの命を無駄にしやがッて。もッと賢い生き方が出来ねェのか?」
アクセルは呆れた様子で冷静に淡々とそう述べる。しかし、その感情にはどこか怒りが混じっているような気がした。
傍観軍最強の男アクセル。売られた喧嘩は必ず買う男。買った喧嘩は相手を殺すか、自分が殺されるかの二択。それ以外の決着は許されない。もし、逃げようもんならその人の面影が無くなるぐらいにまでただの血肉へと変える。殺すことを厭わない男。
そんな狂人に「喧嘩を売られた」と解釈された以上、もうどこにも逃げ場などない。
正々堂々と戦い、アクセルを捕まえるか、アクセルに血肉にされるかの二択だ。
「私は誇り高き先代ケフェウス聖騎士団団長の娘。アルケナ・エリダヌス!」
「そういえば自己紹介がまだだッたなァ。俺はこの人間界に生まれ、数十年後に死んで亜人界へと降り立った。傍観軍の頂点に君臨する男。アクセル・ミラーだ。」
その時、アクセルは初めて本名を口にした。
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「どうぞ、かかッてこいよ。」
アクセルは相手に先制攻撃のチャンスを与える。今の彼の様子を一言で表すとするならば、『余裕』という言葉が再適正だ。特に構える様子もなく、よそ見をしてあくびをしているぐらいの余裕っぷりを見せている。
相手を侮蔑するかのような態度のアクセルに対して、苛立ちを覚えたアルケナは、腰に収めている美しい剣を抜き、
「構えていない相手を攻撃することを許して下さいね!!」
そう吠えてアクセルの方へと走っていく。犬人族の亜人とあって、その力強い走りと、素早い動きでどんどんアクセルとの距離を詰めていく。そして、アクセルの前に立ち、その美しい剣を振りかざし薙いだ。
『キィィィィィィィィィイン』
甲高い金属音と共にアクセルは真っ二つに一刀両断されて………。
「────ッ!!」
いなかった。
アルケナの剣がアクセルの脳天に触れようとした瞬間にアクセルは左手を出した。
アクセルの左手に触れた剣はガラスのように木っ端微塵に砕け散った。
ほんの刹那の間に起こった信じ難い出来事に、アルケナは呼吸をすることを忘れるぐらいの恐怖に襲われた。圧倒的な力を前に足が動かない。
心では「戦わなければ」と思ってはいても身体がそれを否定する。アクセルに対抗することを身体が拒絶する。
「てめェ、相手がどんな技を使ってくるのかわからねェのに突ッ走ッて来やがッて。相手の様子を見てから動く。これ基本だろォ。」
アクセルの発言はまさに余裕だ。こんなやつの攻撃の様子見なんてできるはずがない。先攻なんて譲ってしまったら一撃で吹き飛ばされてしまう。そんな気がした。否、実際そうなのだ。
絶大な力を持つアクセルにしかそんなことできないだろう。
「何突ッ立ッてんだァ?攻撃してこねェなら、こッちからいかせてもらうぜェ。」
「──ッ!?」
アルケナが返事しようとした時には既にアクセルの拳がアルケナのみぞおちに打ち込まれていた。
宙に打ち上げられたアルケナは、そのまま受け身をとれずに地面に叩きつけられる。
みぞおちを殴られて地面でもがき苦しむアルケナを見下ろしながらそばにやってきたアクセルは、辺りに飛び回るハエを見るかのような目でアルケナを見る。
「あァ?」
よく見ると、アルケナは手に15センチほどの木製の杭を持っている。
アルケナはそれを後方に投げた。
この少女が何を思ってやったのかアクセルにはわかりかねなかったが、特に意味がない事だと思い無視をする。
アルケナはもがきながらもなんとか声を出そうとする。しかし、口を開けば出てくるのは血と嗚咽だけ。アクセルはか細い呼吸をするアルケナの下にやってきたしゃがんだ。
「あァ?」
よく見るとアルケナは少し笑みを浮かべている。この状況の何が楽しくて笑っているのだろうか。アルケナの笑い声は次第に大きくなっていく。大きくなると言っても「クスクス」ぐらいの声しか出せないけど。
「───ッ!?」
背後から何かが向かってくる気配を感じたアクセルはとっさに振り返る。見るとそこには先ほどアルケナが後方に投げた杭がこちらに向かってきている。
この刹那の間に状況を理解したアクセルはとりあえず右の掌を前に出す。
アクセルの掌に当たった木製の杭は木っ端微塵に砕けた。
アクセルは足元で転がっているアルケナの方に目を向ける。
「ハァ…ハァ…。これが…私の…有効魔法…ハァ…『標的狙撃』。ハァ…触れた敵を標的にし、投げたものはどこに投げたとしても標的を狙撃するまで追跡し続ける…。今回の場合は…ハァ…触れられただけど…。」
タダでさえ呼吸するのが苦しい程に傷ついているのに、アルケナはなんとか言葉を並べて、そう説明した。




