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6.最終試験

久し振り&結構飛ばしました!しょうがないよね前座だし。

そのあとのことは正直よく覚えていない。ただ、私を捕まえた誰かの気持ち悪い感触と、折られた手足の痛み、薄暗い小屋、すえた臭い、そしてもうろうとする意識の中で感じた熱さ。その間私はただただ逃げたい、死にたくないと思っていたことだけは覚えている。

 気づいたら、私は手足が折れてろくに動けない状態のまま森の中に転がっていて、小屋は燃え上がっていた。その後意識を失った私が目を覚ましたのは、あの白い空間で、

[二次試験 クリア者121名 死亡者74名 後18名が試験中です]

ちょっと懐かしく思えるあの電光掲示板もどきを見て、どうやら試験に合格したらしいとぼんやりとした頭でそう思った。



 その後結局、私たちは17回の試験を経ることになった。あの二次試験の時に生き残った人たちは、私を含めて皆『祝福』とやらを開花させたらしくて、あれ以降一気に脱落者が減ったのだ。

 私が開花させたのは転移能力、ただし私自身と身に着けたものしか転移させられず、今いる場所が危険であればあるほど、転移先が安全であればあるほどスピーディーに、遠くまで転移できるというもの。

 神様曰く、逃げるに逃げられない状態に置かれた私の『逃げたい』という願望が反映された形だそうで…、神様には、

『やっぱり君はとことん場違いだね!笑い死ぬかと思ったよ』

などと言われる始末。実際二次試験以来、以前の事はよく思い出せないし、現地人に殺させたり、不幸な事故を誘発させたりと一度たりとも自分の手を汚せなかった私が、場違いと言われるのも仕方ないとは思う。

 まあ、自嘲はここまでにしよう。なんたってようやくの最終試験だ。これさえ潜り抜ければこんな生活ともおさらば、ここにいる半数はまた平和に生きていけるのだから。そう考えれば次の試験も少しは気が楽になるというものだ。きっとまた誰かを殺させられるのだろうし、何人も殺さなくてはいけなくなるのかもしれないけれど、死なない為にもきちんと殺さなきゃ――

『さて皆さん、これまでお疲れ様!ようやく人数も16人になったしこれでいよいよ最後だね!ここから半分選ぶ以上、やっぱり最後はこれでしょう!』

『今から二人ずつ一対一で殺しあってもらいます』

…え?

『場所はいつも通り地球上のどこか適当な位置になるかな、ある程度離して配置するから、

どうにか相手を探し出して殺してください、もちろん手段は問わないよ?他の人達を巻き込むなとも言いません、街ごと焼こうが、星ごと砕こうが好きにしてください!まあ星を砕くのはさすがにまだ無理だろうけどね』

いや、待って、待ってほしい

『あ、そうそう当然相手の事は知っておきたいだろうし、きちんとやりあってほしいので対戦相手の能力はそれぞれに教えてあげるからね~』

この15人の誰かを殺す?そんなこと――

「そんなのできるわけが―――!」

『では頑張ってきてください!あでゅー!』

そうして私は最終試験に放り込まれた。

甘かった、甘かった甘かった甘かった甘かった!優しい神様なんかじゃ無いと知っていたのに、私たちを追い込むことが目的だと言っていたのに!なのに最後だから、これまでも必死で大変だったからなんて…そんなこと考慮してくれるわけなかったのに!

「しかも…」

能力が相手にばれてて?しまいに相手も同じく能力持ち?そんなの――

「勝てるわけがない!どうやって勝てっていうの!?」

私の能力は逃走専門の転移、神様にも場違いだと言われるような力で、これまでの試験でも勘違いさせた現地の人々に殺させたり、足場の悪い場所などに誘い出して転落させたりなど、直接手を下したのなんて最初の一回ぐらいだった。けどそんなの通じるわけがない、どうすれば、どうすればいいの、だってこのままだと殺される

「嫌、嫌!せっかくここまで生き延びて、その為に何人も殺してきたのに、なのにこんな!「哀れだな、極めて普通の精神、なんて書いてあったがこれ程とは」え?」

声?なんでだってここは神様に送り込まれてすぐ逃げてきた山奥でこんなとこに人がいるわけ

「ここで死んどけ、そのざまじゃあ生き延びても永劫苦しむだけだろう」

なのに上背のある男の人が、刀を持って、ギラリと、腕が――

「あ、ああああぁぁぁぁっぁぁぁぁ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「逃げたか、しかし片腕失くしてあの出血、加えて俺の能力とくれば逃げてもしょうがないのは解りそうなものだが。まあそれどころではないのだろうな」

あの(クズ)もなんとも惨いことをする。あんな子をわざわざここまで残すとは。かといって殺さない訳にもいかない。少なくとも俺自身こんなところで死んでやるわけにもいかないのだから。

「お望み通りやってやるさ、ただし覚悟しておけよこのクズが。これまで殺した者等に誓って絶対にお前を殺してやる」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とっさに右に跳んで、転移で逃げたのは我ながらファインプレーだったと思う。家主が留守中の民家に転移で飛び込んで、

「う、う、うううぅぅぅぅぅぅ!」

ひとまず、左腕の付け根を縛って、ひじのあたりの断面から焼くことで出血は止まった。けど痛み止めなんてないから当然今もとてつもなく痛い。そんな中発狂も気絶もしていないのはひとえに死にたくないのと

『対戦相手:ケリー・トウドウ

 身長:175cm 体重:67㎏ 性別:男性

 祝福:追跡転移

     ・名前を知っており、一度視認した相手の下に転移可能

     ・転移対象は自身、及び所持品のみ(他生物の転移不可)

     ・距離、重量ともに制限なし

     ・世界間移動不可

                      では健闘を祈ります!by神』

 ポケットに入っていたこの紙に書かれたことがそれどころではなくなるほどショックだったから。最悪にもほどがある、勝てっこないのはさっき思い知らされた。しかもこれでは

「当然逃げられないし、逃がさんよ。祈る間も与える気は無いとも」

「っ!」

跳んでも――

「無駄だ」

跳んでも――

「だから無駄だというのに」

跳んでも――

「抵抗したいのは解るが、苦しみが続くのみだぞ?」

一抹の望みにかけて何度跳んでも追いついてくる。神様のくれた紙に書いてあった内容からしても、転移を繰り返したところで見失ってくれるとは思えない。だから逃げ切る為には転移中に相手が死ぬか、書かれていなかったことに期待するしかないのだけれど――

「……」

さっきから噴火直前の火口の直上に跳ぼうが、ちょうど開くところの水門の前に跳ぼうが何をしようと追いついてくる、煤一つついていなければ、濡れた様子も全くなしだ。

「どうやら自滅を狙っているようだが無駄だ。跳ぶ先がどうなっているかぐらいは事前にわかる。でなければ追跡などとは呼べんだろう」

やっぱりか、これで希望の一つが消えた。それでも――

「それでも私が跳び続けてる限り、追いつけても殺してるひまがないんでしょ、だからさっきからペラペラしゃべってたんじゃないの?」

「そうだな、だが――」

そうと解れば逃げるに限る。このまま逃げ続けて一旦でいいから諦めさせれば、そうすれば

「あ」

そしてどうなるの?

「そん、な」

腕を切られて、追いつかれ続けて肝心のところをすっかり忘れ去っていた。これは――

「そう、これは殺し合いだ。お前が逃げ続けたところでそもそも意味は無い」

また追いつかれた、逃げないと、逃げないと殺されてしまうけどじゃあいったいどこへ?

「ようやく気付いたようだな、逃げ場などない。片腕を失い、劣悪環境を転々とし続けたお前と俺のどちらが早く死ぬかなど解りきっている」

そう、そうだ。いまにげたところでにげきれない、どれだけにげてもこのままじゃわたしはしぬ

「故、お前の逃走に意味があるとすれば、誘い出しか時間稼ぎなのかと思っていたが、どうやら本当にただの逃走だったようだな。であれば何を期待していたかも想像はつく」

どうしようどうしようどうしよう、あれがなにかいいているけどどうでもいいどうすればどうすればどうすればどうすればいったいどうすれば、もうやだやだいやだいやだいやだにげようそうしようきっとそうればうまくいってそうだそもそもわたしのほうがさきにしぬかなんてわからないんだからにげきれてしまえばそれで済む、そうだ、そうしよう、彼の転移から逃げるのは難しいだろうけど、そこに関して書かれていなかったってことはきっと彼の転移は――

「これ以上無闇に引き延ばす気はない。故に先に言っておく。俺の転移に回数制限などない。転移を行う事やそもそも連続で活動できる時間に関しても、今のお前と俺ではどちらが先に力尽きるかも明白だろう」

「あ、あ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

解らされた、これ以上もないほどに痛烈に。そう

「理解したか、逃げ場などもうどこにもない」

そうだ、そしてきっとここまですべて、あの紙を見て私がどう考えるかまで見透かされたうえでのあの紙なのだと理解できてしまったから

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「立ち向かっては来ないのか、と言いたいところだがやはりこうなるか。せめて言い残したいことがあれば聞くぐらいはしよう」

「あああああ、うううぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁ」

「…哀れな、悪い夢は終わりだ、もう眠れ」

そう、しぬ。わたしはしぬ。いまなにかをいっててにもったもの(刀)をふりおろしてくるかれによってわたしはしぬ。よけることはできない。にげるばしょがない。にげるいしはたたれた。きぼうはなかった。おもいこむよちもうばわれた。しぬ。しぬ。しぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしぬしわたしはしぬ。こんどこそかんぜんに、いきかえるよちなどなく、どんなきぼうもなくただしぬ。しにたくないしにたくないしにたくない、けれど、もうどうしようもない。

『本当に?』

わらいごえがする、ほんとうにてがないのかとわらっている。でもほんとうにどうしようもない、だってむりだ、にげられない

『それじゃあ死んじゃうよ?いいのかな?』

いやだ、いやだいやだしにたくないしにたくないしにたくない、けどしぬ、どうしようもない、ていこうできない、にげられない。

『殺せばいいじゃない、そうすれば万事解決!君は生き残れるし彼に追われることもなくなるよ?』

できっこない、じこのゆうはつはしっぱいした。ほかのひとならころせるともおもえない。なによりここからいきてにげられない。

『本当に?』

むりだ、むりだ、むりだ。どうしようもない。

『頑なだねぇ、しょうがない出血大サービスだ!』

なにか、とてもいやなことがおきるような

『いまだけ理性を無理やり飛ばしてあげよう!』

むだだ、そんなものもうのこってない、そんなことをされたぐらいでどうにかなるわけ

『なるし、残ってるさ。だって』

やめて、やめてやめてやめてやめてくださいおねがいしますもうしにたくないなんていわないからあきらめるからおとなしくしてるからだってもうくるしいのはいやだいやだいやだいやだいやだ

『この期に及んでまだ自分は手を汚していない、なんて思ってるんだから』

そして理性が飛んだ、私の心を守ろうとしていた理性が飛んだ。そう、あのときもいっしょでこわくてきもちがわるくてまっかでうでがあしがてがふれてうるいえがもえるにげられないとまらないにがしてくれないこわいいやだにげたいにげたいにげたい、だからにげるために、まっか、に

「あ――、■■■■■■■■■■■―――!」

「な!?」

そうだにがしてくれないんだからにげばをうばうんだからしかたないだいじょうぶにかいめだからっきとじょうずにまっかにちいさくできるから――

「ふざけ、こんな不条理が――!」

ばいばい


いよいよ次々回あたりで転生する…?(予定)

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