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神祇 ─じんぎ─  作者: 高石童話本舗
さがしものと
91/1823

なかま


「どうする? 今日のところは、もう引き返す?」


「いや……」


史の問いかけに、いち早く応じたのは、珠衣(おさななじみ)と仲良く手をつなぐ望月だった。


その瞳は、前方をまっすぐに見据えている。


貪婪(どんらん)な食欲を大いに示し、廊下の先を、スッポリと飲みくだす暗闇。


ちょうど、口蓋(こうがい)を押しひらいた生物の形容か。


ともすれば、いま、自分たちが踏みしめているものは、(まぎ)れもなく“舌”なのかも知れなかった。


これから踏み出す先は、“口内”なのかも知れなかった。


正統的な形容の通りに、口をポッカリと開けて、一同を待ち構える暗闇だ。


それは、一見すると鈍重でしかない。


しかし、その(じつ)は、非常に利敏(りびん)な獣よろしく、忌まわしい目論(もくろ)みをひた隠しにして、ただひっそりと、一同の到来を待ちわびているのだった。


「いや。 ここで引き返すわけにはいかないよ」


用法こそ定かではないが、持参したノートPCを、胸の前でギュッとやる。


そうして、自身を(ふる)()たせ、内心を鼓舞する。


「うん……! そういうワケにはいかないよ。 ここで引き返せば、望月家の名折れになるもの」


次いで、勇敢でありながら、じつに健気(けなげ)な心中を、望月は有り(てい)に述べた。


「それに……」と、ひとまず前方を注視する作業に見切りをつけて、視線を横合いに向ける。


そこには、ちょうど史をはさむ格好で、二名の幼なじみがいるわけだけど、双方とも、なにやら自分たちの足元を、そろって眺めていた。

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