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神祇 ─じんぎ─  作者: 高石童話本舗
あらかじめ
9/1823

あの頃の9


どれほど時間が経っただろう。


私が用意した、敷物の上に女子。


男子は各々(おのおの)、柔らかい草の上に尻をつけて、この一時(いっとき)をやり過ごした。


誰かが持ってきたお菓子を()まみながら、すぐ(そば)にポッカリと横たわる池の様子を見やる。


直径にして、およそ10メートル前後か。


護岸は()されておらず、むき出しの土塊(つちくれ)がゆるやかに(くぼ)み、貯水池の全容を表している。


水はひどく濁っているため、中心付近の水深を量ることはできない。


当初こそ、本命のザリガメ論に終始した話題も、時間の経過と共に、どんどん脇道へ逸れてゆく。


お盆休みは、どうやって過ごすのか。


どこへ遊びにいくのか。


それら、身近な話題も、いよいよ尽き始めた頃。


「おまえ、誰か好きな人いんの?」


「はぁ!?」


暇を持て余した、おもに男子を中心に、あらぬ話題が。


(こう)ちゃんはタマでしょ?」


「え…………?」


「はぁ!? ちがうし!!」


「もうやめなよぉー!」



真夏の炎天下。


じりじりと焼けつくような日の光も、()して気にならなかった。


帽子はかぶっていたけれど、紫外線対策なんていう言葉を、私たちはまだ知らない。


「あれ? おっかしいですねー……」


「え?」


気心の知れた友達と交わす会話が、暑さを忘れさせてくれる。


あるいは、当時と現代で、夏の暑さというものが、まったく違っていたのかも。


当時の()だるような気温とて、現代の酷暑に比べれば、幾分かマシだったのかも知れない。


「ちゃんと(マーキング)しておいたのに……。 他人(ひと)の縄張りでなにやってるんです? え?」


「え? 誰…………??」


そんな、あわい夏の風情に、じっとりと蔓延(はびこ)り始めた惨烈な気色。


それに、私たちは気づけなかった。

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