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神祇 ─じんぎ─  作者: 高石童話本舗
あらかじめ
8/1823

あの頃の8


「よし! 行く? 行こっか?」


「おう!!!」


幼なじみが、彼にしては珍しく上擦(うわず)った声で吼えた。


余程に緊張しているらしく、いつもの軽妙な雰囲気は微塵も感じられない。


「モッチーちゃん、本当に大丈夫かな……?」


「ん。 危なくなったら、すぐ逃げよう」


他の面子(めんつ)も、かたい表情で林の向こうを見つめている。


なにがあっても不思議じゃない。


ふと違和感を知って、ちょうど林道の入り口にあたる大銀杏(おおいちょう)に目を留める。


よく肥えた(みき)の中ほどに、立派な風体の小刀(しょうとう)が、ひっそり(かん)と突き立っていた。



「………………」


各々(おのおの)、言葉すくなに林道を進む。


いかに(まば)らな木立とはいえ、枝葉が頭上に“こんもり”と茂っているため、身辺は暗い。


前後にあたる外界の明るみが、何十メートルも遠くにあるような錯覚がした。



「あった…………」


「けっこう広いね? やっぱり」


「うん……」


そうこうする内、無数の落ち葉からなる林道が、平らな土の道に切り替わった。


そうすると、お目当ての場所は、すぐ目と鼻のさき。



すっかりのぼせ上がった、夏の大気によるものだろうか。


草のにおいが、いやに鮮烈だったことを、よく覚えている。


()えた水の臭気も同様で、今でも(つぶさ)に思い返すことができる。



“あの頃の、懐かしい匂い”


そう表せば、たしかに花がある。


けれども、あの思い出は、もっと(すご)みの効いたものだった。

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