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花影5
それは、現状に照らし合わせても同様である。
“人間ではないものは、存在するか否か”
その答えを、真実として欲する友人。
そんな彼女に、この口から答えを伝えるのは易い。
しかし、せっかく“心”があるのだ。
人間には、なにかを感じ、物事を考える頭がある。
それは、いわば人間の特権であり、人間が“人間”たり得る素晴らしいことである。
まずは己の力によって、真実にいたる道を見出してこその“人間”だ。
そこに、有無を言わせず自分が介入することは、人情味をおおいに逸した行動であり、人権を踏みにじる行いである。
ともすれば、自分は守りたかった。
たとえ真実をひた隠しにしてでも、人間の特権というものを、守りたかったのだ。
「なんて言うか……、答えることは出来るんだけど──」
「いや、皆まで言わなくていいよ。 こっちとしても、自分の足で真実を探すのは吝かじゃないんだ」
「そっか……?」
「うん! たぶん、家系かな? 血が騒ぐ!」
結局のところ、このザマだ。
“人々と共に、人間らしく”
日常生活を送る上で、平坦な指針をさだめているにも関わらず、都合の良いときだけ、神を気取る。
『………………』
いつの日だったか。
あの女を地獄へ落とす際に、あの女が最後にみせた悲しげな表情が、かすかに脳裏をよぎった。




