まなびや
市の南東部に位置する砂取地区は、この町の産業と、特に関わりの深い地域である。
中小企業の工場。
各種、下請け会社のオフィス。
それらが雑多に並び立ち、平日はもっとも活気に溢れる地域でもあった。
一同が通う高校の所在地も、ちょうどこの地区に相当する。
「よっす! おはよぅ!」
校舎の二階。 二年二組のドアを開いた史と穂葉に、軽い調子で声をかけてきた男子生徒があった。
どうやら、彼もまた、たった今到着したばかりの様子である。
「お? 今日はまた、えらい早いな? つーか、何時? いま」
「おはよー、幸介くん」
彼もまた、先の賑やかな友人と同じく、二名とは昵懇の間柄にあたるクラスメートである。
「なに不っ思議そうな顔してんな? そんなに珍しいかー? この時間に、俺が学校いんの」
「ぜったい雨降るわ。 洗濯物入れとけばなー……」
「え? ひでえなー!?」
教室の正面に掲げられた時計の針が、予鈴の時間に到達するには、まだ多少なりと余裕がある。
基本的に、遅刻が常の幸介である。
そんな彼が、こんなに“早く”登校するのは、非常に珍しいことだった。
「やー。 たまにはさ? 早朝の町中を、こう、ぶらぶら歩くのも悪くないかなーってな? 思ったんだなー!」
「早朝……?」
とは言え、そんなマイナス要素を感じさせない好人物である。
まず、“気さくでいい奴”という第一印象。
しかし、付き合ってみれば分かる、家族や友達を何より大切にする篤い性格。
そこにルックスの良さも加われば、彼が高校内で人気を博する理由も、大いに頷けるものだった。




