つうがくろ2
「やー、昨日の番組さー……?」
「えっ? 何も見てないです私っ!」
「あ、そっか。 ごめんごめん!」
お決まりの挨拶を経た後、二名と足並みを揃えて、通学路を歩み始める。
「もうすぐ夏だねー?」
「ね? だんだん暑くなってきたし、いよいよ夏って感じです?」
「夏といえば夏休みだよ! 今年はさ、ドコ行こっか?」
「やっぱり海じゃないです? 夏休みといえば」
「海! いいね! 海だよ史っ!?」
「なぁ? 行くにしても、どこがいいかね?」
この珠衣には、とにかくいつも走っているイメージがある。
快活で健全な彼女には、ピッタリのイメージだ。
どんな事に対しても、全力を出しきる。
そういった姿勢こそが、この珠衣という友人の本分である。
たしかに、多少の空回り感が、時には否めないこともあるけれど、一緒にいて楽しいという点では、誰にも文句の付けようが無かった。
「けど、今日は暇なん?」
「へ?」
「や。 別に慌ててないって言ってたろ? さっき」
何とはなしに史が口にしたところ、珠衣は“きょとん?”としてみせた。
まるで寝耳に水か。 現状を把握していない。
「ほら、生徒会の朝礼? いつもは──」
「あ……っ!」
そんな彼女も、当の差し出口を経て、ようやく事態を察したようだった。
勢いよく腕時計を確認し、すぐに満面を蒼白させる。
「こんな時間!? もう!!?」
そうして、大いに喫驚したかと思うと、後は全力疾走あるのみだった。
「ごめんね!? 先行くから! また後でねっ!?」
その寸前に、きちんと挨拶だけは施していく。
こういう辺りに、彼女の健全ぶりというか、屈託のない精神が、よく表れているように思う。
「あー……。 いつも通りですね? 珠衣ちゃん」
「なぁ?」
元気に後ろ髪を跳ねさせる背中。
それを見送りつつ、穂葉が眩しげに述べた。
「あんなに慌てて……。 転ばなきゃいいけど」
「めっちゃ走ってるもんなー」
その模様は、現在のような通学時に、見慣れた光景である。
ゆえに、呆れ半分・安堵半分といった具合か。
ともあれ、変わらない風景だ。
「私たちも行きましょうか?」
「ん。 そうな?」
平穏で平凡。
こういった普通の有り様こそが、現世の姿なのだろうと。 本来の姿なのだろうと、史は思うのだ。
「明日も晴れるかなぁ?」
「ん? なんかあったっけ? 明日」
「んーん。 特に用事はないけど、晴れのほうがいいじゃないですか。 やっぱり!」
何のことは無いやり取りを、のんびりと交わしつつ、二名も一路、学校がある方角を、ぶらぶらと目指すのだった。




