あさおきて2
「んゎ……」
頭上に伸ばした腕を、元の位置へ“ぽすん”と戻す。
ゆっくりと、頭が稼働を開始する。
カーテンの向こうが明るい。
鳥の囀りが、かすかに聞こえる。
朝だ。
もう朝。
あぁ……、朝か。
「しょ……!」
むくりと半身を起こす。
その動作によって、別離を余儀なくされた枕の感触。
ずり落ちた夏布団の肌触り。
すべてが名残惜しかったけれど、仕方がない。
「………………」
ベッドに腰を据えたまま、ゆったりと視線を巡らせる。
薄暗い一室は、全面に渡ってフローリングの敷かれた六畳間。
広すぎず、狭すぎず。 生活様式に見合った、ごく一般的な洋間である。
南側に大判のガラス戸を。 東側には、通常サイズの窓ガラスを配している。
現在は、いずれも厚手のカーテンによって、ぴったりと遮られていた。
それでも尚、それらの隙間から入り込んでくる陽光は、初夏に似つかわしい旺盛ぶりで、室内を直線状に照らしていた。
机と椅子のワンセット。 スチール製のラックに本棚。 背の低い丸テーブルに座椅子。 備えつけのクロゼット。
「ん……」
それら、諸々(もろもろ)の調度品に、しっとりと及ぶ光線を追って、ふと横合いを見る。
ベッドを据え置いた場所からすると、すぐ傍ら。 窓枠を覆うカーテンが、仄かな暖色に染まっていた。
どこか気忙しい鳥の囀りが、その向こうから聞こえてくる。
じつに穏やかな印象だ。
平穏で平凡な、爽やかな朝の模様。
今日も、普通の一日になりそうだった。




