あの頃の16
「………………っ!」
呆然とした。
“頼みと綱”と表すには、いまだ語弊がある。
私たちは、まだ彼女のことをよく知らないし、彼女に対する信頼もない。
けれど、この場でザリガメに立ち向かうことができるのは、彼女を置いて他には無い。
それは事実だったし、先の暴れっぷりを見れば、一目瞭然だった。
寒気がした。
あの女性が負けてしまえば、私たちの命運は尽きる。
子ども心にそれを理解して、泣きそうになった。
どうして、こんな場所に来てしまったのだろうかと…………
友達を連れて来てしまったのだろうかと、後悔もした。
助けて欲しい。
心から、そう願った。
そうした私たちの懇切に、彼女はすぐさま応えてくれた。
先述の通りだ。
彼女の化け物ぶりは、この程度で挫かれるほどヤワじゃない。
あの時から、彼女は私たちのヒーローになった。
「………………」
濛々(もうもう)と噴け上がる砂塵の煙幕。
それを手腕のひと振りで払い除け、しっかりと地面を踏んで、体勢を正す。
右腕に反動を持たせたところ、愛刀がチャキリと鳴いた。
これはこれで格好いいのだけど、やはり小うるさい。
刃味のよい刀身には、果たして褐色の鱗がキツく食い込んでおり、金具にもガタが来ている。
使い物にならない。
なので、早々に見切りをつけて、肩越しに遠くへ放り投げる。
大きく息を吸って、内心を平定する。
すぐにカッカする悪癖を戒めつつ、子どもたちの声に耳を傾ける。
のんびりしていられない。




