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神祇 ─じんぎ─  作者: 高石童話本舗
あらかじめ
14/1823

あの頃の14


「キョオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」


先に仕掛けたのは、ザリガメだった。


住処(すみか)から勢いよく這い出すや、太い節足をせわしく動かして、猪突猛進。


一同のもとへ、やにわに殺到する。


巨大なハサミが晴天を(さえぎ)り、すぐに大振りの一撃となって打ち下ろされる。


「おぁぁッ!!!!!」


これに対し、脚部をするどく(しな)らせた穂葉が、体躯を(ひるがえ)した。


見事なトーキックが炸裂し、固い甲殻をまとったハサミの表面に、火花が立った。


巨体が斜めに(かし)ぎ、あわや横転の危機に見舞われる。


しかし、背中に負った甲羅のおかげか。 安定感はすこぶる高く、この程度では、そうそう腹部を晒しそうにない。


「あはッ!!?」


心底(しんてい)から生じた痛烈な苛立(いらだ)ちを、奥の歯でブチリと咬み殺す。


左のサンダルを楚々(そそ)と引き寄せて、軸足の調子をたしかめる。


「おらぁッ!!!!!」


続けざま、激烈な踏み切りに転用されたそれが、平らな畦道(あぜみち)を陥没させた。


強靭な膂力(りょりょく)をフルに活用し、並々ならぬ腕っぷしを底上げする。


狂ったように疾走した左拳が、光焔(こうえん)の軌跡をゆらりと描いた。


これを(はば)んだ真っ赤なハサミ。 ()いては、その巨躯が全身で体鳴し、大気を尾長に震撼させた。


この衝撃に、数本の節足が(こら)えきれずに瓦解。 ズシンと尻餅をつく格好で、ザリガメの異容が後退する。


「よっしゃあッ!!!」


これを勝機と解した穂葉が、勢いよく疾駆した。


夏晴れの田舎道に、点々と白煙が生じるも、すぐさま風色に飲まれ、ゆるやかに立ち消える。


その名残(なごり)を惜しむように、一際(ひときわ)の土煙が爆散し、少女の矮躯(わいく)が勇躍した。


「ぬんッ!!!」


「ピシャ…………ッ!!?」


弾丸じみた初速を巻きつけた膝頭が、ザリガメの鼻っ柱を打撃。


にぶい膜鳴(まくめい)がして、(あし)ほどもある触角が、左右に折れ曲がった。


これには、さすがの巨大甲殻類とて、(たま)ったものではなく。


「ピキ……ッ! ピキャアァァッ!!!」


両の前足で鼻先をかばいつつ、悶絶した。

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