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神祇 ─じんぎ─  作者: 高石童話本舗
争いの果て
1349/1823

決死の場

しかし、この事態も間もなく収束するだろう。


他の者ならいざ知らず、あの(つわもの)を相手にしておきながら、考えもなく空へ上がったのは(まず)かった。


あれではいい(まと)だ。


「…………っ!」


見越した通り、虚空を見据える彼の眼に、一点の炎が(とも)った。


あれは(まさ)しく身を()くような嗜虐心(しぎゃくしん)の表れであり、確固たる勝機を目の前にした王者の眼光であろう。


次の瞬間には、彼の口腔(こうこう)から吐き出された灼熱の奔流が、真っ直ぐに空へと駆け上がっていた。


火力を()める余暇(よか)など、僅僅(きんきん)数秒にも満たぬ。


にも関わらず、尋常ではない威力(もの)が、彼の口から(ほとばし)っている。


(あわ)せて、その体躯を起点に発散された熱風が、周囲一帯をむざむざと焼き尽くし、(たちま)ちのうちに地獄絵図を()んだ。


「──────!!!」


(ひとえ)に怒りのためか、もしくはかの御一党に対し、(ゆる)しを()う目的かは定かでない。


(それがし)の口が、意図せず滅茶苦茶に動き、声にならない声を上げた。


(しか)して、この胸中を少しでも()み上げてくださった結果か。


天を指向した壮絶な火炎は、姫の横合いへ大きく()れ、雲際(うんさい)の彼方へと消え去っていった。


「…………っ」


否否(いないな)、これは断じて、当方の切願が(こう)(そう)したものではなかろう。


声にならぬ声とは、じつに言い得て妙である。


周囲を占める熱気によって、某の喉はすでに半分ほど潰れている。


いずれにせよ、声がきちんと届いたところで、かの炎の御仁が、他者の言い分を素直に聞き取るとは思えない。


では、果たして何事が起こったのか。


答えはいたって簡潔である。


「待って! 待ってください!! 天國さま!」


満身を投げ出した女官が、まるで大樹(たいじゅ)(すが)りつくかの如き所作(しょさ)で、彼の腰にかたく取り付いていたのである。

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