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魔法少女?いえ、魔法好きの喪女です……  作者: 山海千歳


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27 遺跡①

 ルーナ達が帰った2日後、シズクは大量のデータとにらめっこしていた。


「主様……それ全部、遺跡に関する資料ですの?」


 肩に座ったツバキがホログラムモニターを覗き込んで言う。


「うーん、アタシが作った魔導具の設計図とかも入ってるけど……大半は遺跡から見つかった資料だね……まぁ私物もそれなりに混じってはいるけど……」


 大半が魔導兵装に関する研究資料だが、データの中には二千年前の研究員の私物とおぼしき小説や日記なんかも混じっている。


「あの空飛ぶゴーレムは主が作ったのじゃろ?妾も使役してみたいのじゃ、作ってたもれ」

「ゴーレム技術はドワーフが得意って聞いた、カナ?」

「でも、空を飛ぶゴーレムなんて聞いたことないですの……主様はドワーフよりも優れていますの」

「くふふ、やっぱりボクのマスターは偉大だね……さすマス、カナ?」


 三人の言葉にある空飛ぶゴーレムとは、シズクが作ったドローンの事である。


 凡そ2ヶ月前……シズクが解雇された前日、メアリーが帰った後に実用試験のためオートモードでドローンを飛ばした。

 指示した任務は周辺の警戒と探索……。

 一晩してから回収する予定だったのだが、いきなり言い渡された解雇通告に頭が真っ白になってしまい回収するのを忘れてしまっていた。


「まさか、アタシの魔力を辿ってこんな遠くまで飛んで来るとは……」


 簡易的な人工知能を搭載してあるのである程度は自己判断で行動することはできるが、まさか居なくなった主を探してこんな遠方まで追いかけて来るとは思ってもみなかった。


「忠犬ハチ公さながらだよ!偉い偉い!」


 昨晩、飛来するドローンを見るまで綺麗さっぱり忘れていたことを棚に上げ己が作品をペットの如く撫でるシズク。

 ドローンに意思があったら非行に走ったことは間違いない……空を飛ぶだけに……。


 ともあれ、シズクが試験的に周辺探索を命じた結果、ドローンは周辺施設である研究所について調べ上げてきた。

 そして、調査したデータには研究所が所蔵する資料も含まれていたのだ。


 明らかに法に触れる間諜行為だが、本人にその意図はなく既に事後であるため、シズクは事実は事実として反省し、反省が終われば早速とばかりにデータの確認に勤しんでいるのだ。

 全く持って手前勝手、我田引水な思考と言えるが、こと研究に関してシズクはたくさん棚を持っている……都合良く収めるための……。


「なんじゃ、難しい顔をして……何ぞ目新しい発見でもあったのかや?」

「うーん……ちょっと遺跡の見取図が気になってるんだよね……違和感があると言うか……」


 兵装の設計図やそれに関する実用試験データは元々閲覧が許されていたので良く見知った内容だ。

 そこには特筆すべきことは何もない。

 しかし、遺跡を探索した時に描いたとおぼしき手書きの見取図が妙に気になるのだ。


 遺跡は短辺200m、長辺500mの長方形で全部で三階層からなる地下構造体だ。

 残された資料から兵装の研究施設だったことが判明している。

 地下一階は研究員の居住スペース、地下二階は区分けされた研究室が並び、地下三階は広い実験室と観測室で構成されている。


「これだけの大きい施設なのに……それを管理する部屋がどこにもないんだよ……普通に考えて、魔力の供給は統合管理した方が楽だと思うんだよね……」


 遺跡の魔導具は全て回収され具に解析が行われている。

 その中に居住環境を整えるために使用していたと思われる大型の魔導具が各階層から見つかっている。

 資料によれば、その魔導具は大きさの割に小さい魔石が幾つか内蔵されていただけとある。

 発見した研究者が魔石を交換してみたところ全く起動せず、壊れていると判断されたらしい。


「主様は隠し部屋があると考えているんですの?」

「そうだね~……隠し部屋と言うより、この場合隠し階層かな……」


 これだけピッチリと長方形の構造物が縦並びになっているところへ、コロンと隠し部屋が飛び出しているのは構造的に違和感がある。

 前世の建物を知るシズクとしては、もう一階層丸々あると考えた方が違和感がないのだ。


「でも、地下四階に続く階段はない、カナ?」

「くははっ、いくらなんでもそれを見落とすアホはおらんじゃろ」

「何を言うのよ、主様があると言えばあるのですよ!」

「三人とも……ここの所を見てくれる」


 ツバキが示したのは遺跡の端っこにある小さな小部屋だ。

 大きさは2m×2mの正方形、扉はなく入った直ぐ脇の壁に文字盤のようなものが嵌め込まれていたらしい。

 見取図には倉庫と小さく記されている。


「これってエレベーターだと思うんだよね……こんな小さい倉庫なんて使い勝手悪いだけじゃない?」

「「「えれべえたあ?!」」」


 その証拠に全ての階層の同じ位置に全く同じ小部屋がある。

 前世のような階層をぶち抜いた穴がないので確信は持てないが、もしかしたら古代文明時代には転送魔法があったのかもしれない。


「それなら、確認に行けば良いのじゃ」

「賛成なのです、ウチが主様の正しさを証明して見せるのです、ムフゥ!!」

「邪魔するヤツはボクが蹴散らして見せる、カナ?」

「何を言う!主の敵を屠るは妾の役目ぞ!アヤメは引っ込んでおれ!」

「じゃあ、ボクはマスターの傍でマスターを守る役目を引き受けよう、カナ?」

「そ、それはそれでズルいのじゃ……妾も主の傍にいたいのじゃ!」

「はぁ……いい加減にしないと主様に飽きられますの、要らないモノは丸めてポイですの」


 またぞろグダグダになりそうだったので、シズクは三人、特にサクラを宥めて落ち着かせる。


「何があるか確かめてみたいけど……国が厳重に管理してるらしいんだよね~」


 捜索許可を貰えれば問題ないのだが、地位も権力もない平民のシズクにはどだい無理な話だ。

 必然的に不法侵入しか策はない。


「警備がいない、なんて事は……やっぱり、あり得ないよね~」

「そんなもの強硬突破一択じゃろ」

「はぁ……これだから、脳筋は始末に負えないですの……」

「ふふっ……とりあえず、見てから決めれば良いとボクは思う、カナ?」

「まぁ、そうだね……現場に行ってから考えようか」


 資料を一通り確認してから、シズクは三人を伴い北の遺跡を目指して樹海を後にした。



 --------


 寂れた街道が森の中まで続いていた。

 鬱蒼と木々が繁る森の中をひたすら進むと、突然目の前に小高い丘が姿を現した。

 丘の麓には大きな洞窟がぽっかりと口を開け、どこまでも続く闇が生者を死の国へと誘っているかのようである。

 洞窟の入り口には簡易的な関所が設置されており、傍らには監視兵の詰所が建てられていた。


 既に日は傾き、月の女神が落とした夜の帳が辺りを宵闇の世界へと変えていく。

 そこかしこに設置された魔導具の灯りが、それに抗するかのように煌々と周囲を照らし出している。


 詰所では真剣な顔付きをした男が二人……テーブルを挟んで向かい合っていた。


「オシ、その勝負受けたぜ、コールだ!コール!」


 目付きの悪い青年が傍らに置いてあった銀貨を一枚、硬貨の山へ重ねる。

 それを見た無精髭の男が口角を上げて応える。


「おいおい、良いのかよ、ビル……この勝負に負けたら2日分の稼ぎが飛ぶことになるんだぜ?」

「へへっ……もうその手には乗らないぞ!ブラフだって分かってんだ、今度こそオレが頂くぜ!」


 ……とそこへ――。


「ヒック……オ~イ、交代の時間だぞ、ビル~」


 赤ら顔の中年が入ってきた。

 その手にはしっかりと酒瓶が握られている。


「何だよ、ラカのとっつぁん!まさか呑みながら門番してたのかよ……さすがにマズくネェか?」

「うるせぇ、コイツは酒じゃねぇや……水だ水!命の水ってヤツだ……ヒック……」


 二人のやり取りに無精髭の男が割って入る。


「まぁ、良いじゃねぇか……こんなとこ来る奴なんて居やしねぇさ……中にはもう何も残ってねぇって話だしな」

「でもよぉ、森の奥にはオーガが居るって聞いたぜ?」

「何だ、びびってんのか、ビル……結界石もあるから、オーガなんて来やしねぇよ……ヒック……」


 詰所の周りには魔獣避けの結界石か等間隔に設置してある。

 かなり高価な魔導具だけあってその効果は絶大だ。

 魔石の消費は激しいが大抵の魔獣は近づくこともできない。


「まぁ、スライムだけはあんまり効かねぇから注意が必要だがな」


 無精髭の言葉に青年が噛みついて言う。

 負け続きのポーカーもあってかなり反抗的である。


「ケッ、スライムなんてオーガに比べたら雑魚だろ雑魚……オレが蹴散らしてやんよ」

「オイ、ビル……お前本気で言ってんのか?オーガよりもスライムの方がよっぽどおっかねぇんだぞ?バカだろお前……」

「へ?嘘だよな?だって物語じゃあ、最弱の魔獣だって……」


 信じられないといった顔で視線を二人の間で行き来させるビル。


「あ~ぁ、アレか……お前勇者列伝信じちゃってる痛い系だったかぁ……」

「何だよ、それ……世界を救った勇者の言葉なんだから間違ってねぇだろ?」

「バ~カ……勇者の話も作り話に決まってんだろ……異世界なんてあるわきゃねぇよ……ヒック……」

「マジかよ……それ……オレを騙そうとしてんだよな?」

「まぁ、勇者が史実か創作か、オレには分からねぇが、スライムが雑魚なんかじゃねぇのは本当だからな、勘違いして特攻なんかすんじゃねぇぞ?」

「わ、分かった……覚えておくわ……」


 青年が本気の雰囲気を感じ取って肩を竦めた。

 その声音には僅かに怯えが混じっている。


「まぁ、それはそれとして……勝負の続きだ、ビル……ほれ、フルハウス……」

「ふ、フルハウスだぁ?ま、マジかよ……」

「残念だったなぁ、ビル……またオレの勝ちだぜ」

「ち、ちきしょ~!今度こそブラフだと思ったのに……また負けかよ~」

「どうする、ビル……もう一勝負いってみるか?」


 頭を抱える青年に無精髭が悪魔の囁きを掛ける。


「このまま、引き下がれるかよ!受けてやらぁ!!」

「オイオイ……警備を放っぽらかすのかよ……ヒック……」

「うるせぇ、酔っぱらい!誰も来ねぇんなら居ても居なくても同じじゃねぇかよ」

「「くくくっ……違げぇねぇや」」


 ビルの台詞に、二人が声をハモらせ楽しげに笑う。


「ヨ~シ、次はお前にカード切らせてやるよ」

「おうよ!!」


 この日、ビルが監視の番に就いたのは月が中天に架かってからのことだった。


週一でのんびり更新して行くつもりですが、空いてしまったらご免なさい。m(_ _)m

気長に付き合っていただけると嬉しいです。

感想など頂けると励みになりますので、是非一言でも下されば幸いです。\(_ _)


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