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被害八 このお話には、一部作者の本音が含まれています&某分割仮面ライダーって面白いよね、普通に




鉄治&薫「『仮●ラ●ダー●』!この後直ぐ!」

大志「これで決まりだ!」






健一「……」

―前回より―

異様な本性を露わにしたリージョンは、暴走したように叫び続けていた。


「アアア…親ナンテ死ンジマエダァ…?

ハゲタ事抜カシテンジャネェゾ仇返シノゴミメガッ!

親ッテ奴ガドノグレー偉大カテーノヲ理解シテネエダロ!

大体ヨ…授業面倒ナラトットト帰レヤァァァァァァ!

糞メ糞メ糞メェェェェェェッ!」


その姿、まさに異形。

エジプトの神・セトの頭を模した仮面に覆い隠されていた頭部は、まるで細いトカゲの様な骨格に蛙のような湿った緑色の皮膚と蛸が持つ様な独特の目玉を五つ持っていて、口元からは黄色に青の毒々しい豹紋柄をしたヌルヌルした触手が十本生えていた。

六本の腕はどれも細長い霊長類の様であり、ある腕は白い毛に覆われており、またある腕は黄土色の鱗に覆われていて、それぞれが違う個性を持っていた。

何より異様なのは胴体であって、あらゆる尻尾や触手や節足がまるで植物か菌類の根の様に伸びていた。

そしてリージョンは―マントで隠されていた時には判らなかったが―何らかのエネルギーを用いて、低くではあるが空中に浮いているのである。


「ッタクヨォ!アノ糞ドモガァァ!

目上モ同格モ格下モ見境無ク見下シヤガッテヨォォォォォ!」

リージョンの胴体を構成する蛸の触手が、首相の首に絡み付き、彼を軽々と持ち上げた。

「な…何を言ってるんだリージョン?何の真似だ!?おい、何――ガッ!」

「テメー等ハヨオ!何時モ何時モ好キ勝手ニベチャベチャ喋ッテ暴レテヨオ!」


リージョンは、「コレハ○田サンノ分ダ」とか「コレハ○原サンノ分」だの「コレハ大○サン」とか、また訳の判らない言葉を怒鳴り散らしながら首相の頭を床に何回も叩き付けた。

10回を過ぎた時点で首相の首の骨はへし折られ、彼は絶命していたが、リージョンは首相が死んでいるのを確認すると、驚きの行動に出た。


てっきり死体を捨てるかと思っていたのだが、そうではなかった。

リージョンは左右二本の腕で死体の方を掴むと、左右からそれぞれ7本の触手を繰り出し、それを首相の腹に突き刺した。

「テメーナンゾ……テメーナンゾ……」

リージョンは突き刺された触手へ次第に力を込めていく。

そして、それらを外側に向けて一斉に勢いよく動かすと共に、こう叫んだ。


「爆発シチマエェェェェェェェェェ!」



湿った嫌な音と共に、首相の身体は腹を中心に砕け散った。

血と臓器と肉とが、部屋中に飛び散る。

と、次の瞬間リージョンの触手に細い針の様なものが突き刺さった。

するとどうだろうか。

彼の全身は活力を失い、まるで眠るように地面に倒れてしまった。

リージョンを鎮めた針を放ったのは、何と物陰に隠れていた隼人であった。

彼の手には、白い小さな拳銃のようなものが握られている。

「ったく…リージョンの奴、何やってんだか…あんな死亡フラグ総立ての気取りまくりでカッコワリー似非魔王のアホ丸出し名決め台詞なんぞに踊らされやがって…古藤様ぁ、やっぱ異形の遺伝子複合なんて無茶だったんじゃないですかねー?

ったく…にしても全体の0.002%にも満たないような細胞の記憶が、あんなわけわかんねー身体を支配しちまうなんてな。

あぁ、だからわけわかんねーのか。

っとあー…スイマセン、国民の皆さん。

こういうわけなんで企画は強制終了。10分後にまた攻撃再開命令が下ると思うんで、殺される覚悟だけはしといてください」

隼人は適当に挨拶を済ませると、プラズマテレビの電源を切った。


―はぁ…俺がこうしてる間にも、他の奴らはシンバラや異形連盟相手に必死なんだろうな……ご苦労なこって

そう思った隼人は、玄白にリージョンの事を連絡した後、人類総攻撃作戦に参加する為別荘の窓硝子を突き破って北へ飛んでいった。


さて、そういうわけだからリージョンの正体について語るとしよう。

彼は「異形の能力及び潜在的才能というものが、それぞれ一個体につき一つであるのは何故か?」という玄白の素朴な疑問の答えを出すために産み出された異形である。

彼は卵から育てた雄のヒョウモンダコをベースに、クダクラゲ、イソギンチャク、ヒドロ等の水棲無脊椎動物の他、テナガザル、アカメアマガエル、アガマ等数種の脊椎動物や節足動物等多数の遺伝子を特殊な技法により掛け合わせ、複合動物(キマイラ)を産み出し、それを異形に仕立て上げたのである。

そうして産まれた彼は「異形の能力と潜在的才能は一個体に一つではなく、遺伝情報に一つである」という"答え"を玄白に与え、また数え切れないほどの能力をその身に宿す事になったのである。

現在の彼は前回か前々回書いたとおり、益獣部隊の「五死頭分隊」に所属し、その性格や能力の使い方から「皮肉」の称号を与えられている。

あんな光景の後で解説するとどうも怪しいが本来はとても陽気な性格で、独特の喋りや上手いギャグで集団を和ませるムードメーカーである一方、嫌いな者や外敵に対してはその陽気さを逆に利用して相手をあからさまな悪意と殺意の元、相手を徹底的に皮肉って言葉の暴力で精神的に追い詰めようと全力を注ぐ。

普段は黒いマントで全身を覆っており、エジプト神話における神・セトを模したヘルメット型の仮面(装飾がかなり前衛的)を頭に装着しているため、初見では普通の異形と勘違いしてしまう事が多い。

人間に似た腕を六本持つが、下半身の脚は原型となった生物の触手のみで出来ておりそれ故に移動が遅く、それを補うため常に能力の一部で空中に浮遊している。

その能力の名称は「超常」であるが、これは彼の能力の総称であって正式名称ではない。

どういう事かというと、先程も書いたように異形の能力が一個体一つなのはその生物の遺伝子が一種類だからである為で、キマイラであるリージョンの遺伝子は数多く存在し、しかもそれらは既に集合して一つの能力として機能するに至っている為である。

故にリージョンが自身の能力で何をしようとも、それは「超常」という彼の能力の片鱗であるとしか説明できないわけである。

また彼の体内には、玄白が部下を医療機関に潜ませ手に入れた人間の血液が含まれている。

そして時折、彼の感情が高ぶるとその血に宿された記憶と意志とがその肉体を乗っ取り、記憶されている言葉を出鱈目に発しながら―しかし目標は見失わず―暴れ回る事がある。

また三人称は「彼」という表記だが、それはその自我が男性であるからで、複合動物であるが故に肉体的な性別は出鱈目そのものである。


―それから10分後・松葉―

東京に戻った松葉一行は、世界中に散らばる人禍機関員達の対処に向かっていた。

雅子と恋歌は日本に留まり、日異連東京チームやシンバラ異形と共に首都を中心に人禍殲滅を決行。

鉄治は飛行形態に化け、その背に妹尾姉妹を乗せて中国地方へ向かい、健一及び大志と直美及び薫はそれぞれ日異連の伝手で手に入れた複座のジェット戦闘機でヨーロッパ諸国やアメリカへと向かった。


そして松葉はというと、怪鳥に変身してアフリカ大陸へと向かっていた。

その理由とは、ある報告事項に隠された謎を解く為であった。


報告にはこうあった。

「人禍の航空機やヘリの一部がアフリカ大陸のある一点に集まっており何かを補給しているらしい。

そうして補給された機体から、考えられないほどの生体兵器や異形が排出されてくる」


人禍の航空機・ヘリの類はそれなりに巨大ではあった。

しかし、その中に人間大の異形は兎も角として全長5mを余裕で超えるような生体兵器や動物異形を何体も格納しておくのは流石に無理というものである。

(例外としてルルイエや盛等のような機関員が居れば別だが、そうだとしても納得の行く説明はどう考えても出来ない)


そしてこのままでは幾ら殺しても埒が空かないと思った松葉は、直にアフリカへ向かう事にしたのである。

補給が行われている場所の細かい経緯度は知らされていないが、それがどの地域で起こっているかくらいは聞いている。


セレンゲティ国立公園だ。


アフリカ大陸上空の遙か彼方、可能な限り成層圏に近い位置を怪鳥となって飛ぶ松葉に手出しできる者は居らず、彼は安心して目標を見付けることが出来た。

「(こんなに高い所から見てんのにはっきりと点で見えてやがる…つまり目標はかなりのデカブツか…)」


松葉の見付けた「点」は、大平原にて連盟の異形達と交戦中のポルトスであった。

当然そんな真相は知らず、それの正体が大方小振りな補給基地か何かだろうと思っていた松葉だが、気配を感じ怪しいと考え、その点目掛けて急降下し始めた。


そして、気付いた。

あの点は補給基地などではない。もっと別の、とんでもないものだ。


「(…あれは…生物か……?)」

更に近付いていくと、山だと思っていた生物の全貌が明らかになって来た。


「(蛙…にしちゃあ尻尾が立派だな…角張った緑色は煉瓦か?

まぁ、滞空しながら考えてても疲れるだけだ。休憩も兼ねて接触を試みるか)」


松葉は巨大な蛙の背中へ静かに降り立った。

身軽な怪鳥とはいえ、重さで気付かれてしまうだろう。

しかし、相手の蛙は動こうとしない。

「(…罠か?)」

息を殺して出方を見る松葉だったが、蛙の方はと言うと…



「ズゥゴゴゴゴゴゴォ…フゥンゴゴゴゴゴゴォ…」

「(こいつ…寝てやがる…)」

拍子抜けした松葉は用心して息を殺していた自分自身が馬鹿に思えてしまい、腹が立った勢いでその鋭い嘴を勢いよく蛙の額に向けて叩き込んだ。

と、その瞬間であった。


ヴゥォン!


松葉は変身を強制解除され(=人間の姿に戻され)、目に見えない力に吹き飛ばされてしまった。

「…あの煉瓦…爆弾だったのか?」

しかし彼は、その予想が間違っている事を直後に思い知らされる。

「あれは……サウロエイプ!?」

面食らったのも無理はない。何と蛙の背中には、嘗てコロッセオで松葉が戦った、爬虫類と猿の中間の様な生体兵器・サウロエイプが堂々とした構えで立っていたのだ。

サウロエイプは少しばかり此方を睨み付けると、松葉へ素早く飛び掛かって来た。


「相も変わらず初歩的な戦術だなオイ!」

松葉は右腕を獣化させると、飛び掛かってくるサウロエイプの顔面を横合いから殴りつけ、首をへし折った。

一瞬で絶命したサウロエイプの死体には目も暮れず、松葉は未だ眠り続ける蛙へと叫ぶ。


「おいそこの蛙!馬鹿デケぇウシガエル!

いい加減寝てねぇで起きたらどうだ!?」

その言葉が耳に届いたのか、蛙がのっそりと動き出した。

「…昼寝の邪魔をするんじゃねぇよ…」

「それの何処が昼寝だ?もう18時近いぞ?」

「…気にするな…手塚松葉…」

蛙はゆっくりとした動作で松葉の方へ顔を向けた。

煉瓦が普通の皮膚なら、日本妖怪や忍者がテーマのフィクション作品に出てきそうな奴だなと、松葉は思った。

「俺如きの名前と声を知っているとは珍しいじゃねぇか」

「そこでお前の口からそれはねーよ。

自己紹介が遅れちまったが、俺の名は『ポルトス』。益獣部隊の分隊が一つ『三獣刺分隊』の所属だ」

「ポルトスねぇ…つー事は、他にアトスとアラミスも居たりするのか?」

「ほぉ?お前さんよく知ってるなぁ」

「去年(2009年)に日本で人形劇化されたんだよ」

「そいつぁ嬉しいねェ。総統に頼んで制作者異形にさせて残しとくk―


笑いながら話すポルトスの左目に叩き込まれたのは銃弾ではなく、子供の頭の二倍ほどもある大石であった。

「痛ぇじゃねぇか…小石投げつけるなんてよ…」

「許せとは言わねぇが…その台詞が気に喰わねぇんだよ」

文章からは判りづらいが、両者とも笑いながらこんな事を言っている。

「にしても流石は幹部だけあって、鋭ぇのな。

煉瓦(コイツ)を砕かねぇってよ」

「んぁあ。そいつを叩き壊したら爆風っぽいのが起こって、吹っ飛ばされちまってよ。

起き上がったら猿モドキ―サウロエイプが飛び掛かってきたんで殴り殺したって寸法だよ」

「そうかよ。そいつぁ俺の能力で出てきた奴だな」

「やっぱりか?」

「おうよ。俺の能力『幽閉』は、身体を覆うこの煉瓦一つにつき一体、動植物を強制幽閉しといて瓦礫が砕けるとそいつらがそこそこな衝撃派含んでポンと出るってカラクリだかんな」

「ほぉ…なんつーか、今や休刊になっちまった月刊誌に連載されてた漫画の敵でそんな奴が居たな」

「そいつぁ嬉しいじゃねぇの」

「まぁ、性格(キャラ)は全く別モンなんだがよ」

「そうかよ」

ポルトスは左側の前脚と後ろ足の中間地点にある人間のそれに似た腕(以下:中腕)で煉瓦を五つ摘みだし、それを一つずつ松葉に向けて投げつけた。

衝撃派の事を知っている松葉はそれを素早く避け続ける。


地面に当たった煉瓦は砕け、当然その中からは人禍管轄の兵士が繰り出されてくる。

それも、全て大柄な生体兵器ばかりである。

「こいつぁ凄ぇ!種類も大きさもデタラメだぁ!」

気分の高揚した松葉は、ノリに任せて獣化した。

しかしその姿は、本来の松葉とは大きく異なっていた。


―それより少し後・中国・鉄治&妹尾姉妹―


中国の都市を飛び回る一つの影。

その色は、緑色であった。


「爆ぜろ!爆ぜろ!爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろ爆ぜろォォォォ!

爆ぜて砕け散れェェェェ!」

緑色の鎧を纏い、同じような光沢を放つ飛行機械に乗って叫ぶ男の名は、メタル・ミューズ。

人禍幹部の一人だが、妻と幹部の座を共有しているという珍しい立場の人物である。

メタルが投げているのは、一見黒い林檎だった。

しかしその林檎には不気味な白い人面の塗装が施され、物体に接触する度に爆発していった。

要するに、爆弾である。


「おいおいおいおい…あの量は反則だろうが…。

二人共、援護射撃を頼む。

本体は俺が直接叩くから、千歳は爆弾の狙撃、千晴は千歳の護衛を頼む」

「「はい!」」


鉄治は両足を跳躍に特化した形に変形させ、無数の爆弾を避けながら両腕の刃物でメタルへと斬り掛かる。

しかしメタルの鎧は予想以上に硬く、鉄治の刃は彼の右腕によって軽々と弾かれてしまった。

「くぉぁっ…ぬぉぉぉぉぉぉッ!」

しかし鉄治は弾かれたことを物ともせず必死に両手をあらゆる武器に変化させ凄まじい速度でメタルへ攻撃を叩き込む。

しかしその攻撃のどれをも、メタルは軽々と防いで見せた。

それどころろか飛行機械を巧みに操り鉄治に猛烈な反撃を叩き込み、強烈な跳び蹴りで彼を瓦礫の山へと叩き飛ばした。

大きな音と共に、瓦礫の中へ埋まる鉄治。


「「田宮様!」」

君主同然の男の実を案じ射撃を中断する双子の背後で、メタルは飛行機械の前方から仕込まれていた二列の刃を生やし、姉妹を一度に刺し殺そうとチャンスを伺っていた。

そして双子の意識が完全に自分から離れた瞬間、飛行機械が動き出そうとした、その瞬間。


ジャラララララッ!


鉄治が埋まった瓦礫の中からメタルへ向けて、一本の太い鎖が一直線に伸びていく。

メタルは鎖をどうにか避けようとしたが、鎖の独特な動きに対応できず、飛行機械ごと鎖に拘束され、地面に落下してしまった。


瓦礫の山を突き破って現れたのは、口から鎖を伸ばした鉄治であった。

安堵する双子を尻目に、鉄治は何も言わないままメタルを睨み付けながら組んだ両腕を突き出し、それを巨大な円錐形の槍に変化させた。

「な…何を……」

メタルがそう言った瞬間、鉄治は鎖を勢い良く吸い込み始めた。

オチを予想したメタルはどうにか鎖から逃れようと必死になるが、拘束されている以上爆弾は使えず、しかも鎖は異常に硬く腕力だけで断ち切るのは不可能だった。


もはや自分もここまでかと、メタルがそう思った瞬間。



突如鎖が小さなキューブへと分裂し、弾け飛んだ。

銀色の小さな正六面体達は地面に落ちるなり瞬時に液状になって、本体である鉄治の元へと戻っていった。

「こいつぁ…イワタ?」

拘束から逃れたメタルは直ぐさま耐性を立て直し、辺りを見回した。

すると、やはり居た。

左半分が緑色で、右半分が黒い、昆虫の様な姿をした人型疑似霊長だ。


「貴方らしく」『無いじゃないか、メタル・』「ミューズ」

その時、疑似霊長は確かに言葉を発した。

しかし前半の言葉は女の声、後半の言葉は男の声で発せられていた。

そう言われたメタルは、賺さず疑似霊長に答えた。

「仕方無ぇだろうがよ。俺ァ手前()みてぇな戦闘専門の強豪じゃ無ぇんだ。

何たって、俺達夫婦の特技はあくまで対物破壊だしな」


―手前()


黙ってその会話を聞いていた鉄治・千歳・千晴は、揃ってそんな事を思った。


「ところで」『メタルよ』「自己紹介はもう」『済んだのか?』

「あぁ、そういや未だだったな。

悪ぃ手前等、俺ァどんなゲス相手でも名乗るのがモットーなんだが、それをすっかり忘れてたぜ。

俺の名はメタル・ミューズ。アメリカ出身で元はバンドマンだったんだが、業界に広がる麻薬汚染とファンの間での犯罪者続出に嫌気が差したんで、歌手の嫁を無理矢理つれて逃げ出した臆病な野郎だよ。

これでも趣味で爆破ネタを囓っててな、おかげで能力もそれらしく『爆轟』とかって手から爆弾捻り出すような、そんな男さ。

ちなみにこの名前も人禍に入ったときに何故だか貰ったコードネームで、堕ちちまったんで本名は捨てた。

あぁ、言っとくと手前等の事ぁ知ってるからな。人禍のデータベースは神だからよ」


「そいつぁ楽だな…で、そこな左右で色の違うシバンムシの出来損ない様は…誰だ?」

そんな鉄治の問いに、疑似霊長は答えた。

「生憎だけれど」『俺は』「シバンムシじゃ」『ない』


『紹介しよう。彼女は俺の愛妻、アイカワだ』

男の声が話す。

「紹介するわ。彼は私の愛する夫、イワタよ」

女の声が話す。


「私達は」『二人で一つの』「疑似霊長」『益獣部隊は五死頭分隊所属』「私は『苦痛』、夫は『刑罰』の称号を持っているわ」

「二人で一つ…」

「それなんて●面●●ダー●…」

「それ言ってくれたのね」『感謝しよう』「あのヒーローは」『親近感が沸くから』「大好きなの」


左半分が雌、右半分が雄という、まさに某分割ヒーローな異形・イワタ&アイカワ。

この奇妙な夫婦の原型は、オシドリハンミョウなる主に南へ棲息する珍しい生態の甲虫が疑似霊長となったものである。

オシドリハンミョウは、その名の通り鞘翅目のハンミョウ科に属する昆虫であり、昆虫にしては夫婦の絆がとても強い事から結婚の縁起物として養殖されている昆虫である。

雄の外皮は黒く、雌は緑色。雄の方が身体が大きく力も強いが、その反面雌の動きは素早く雌のみ牙に神経性の毒を持つ。

幼虫は節足を持つ芋虫型で、地中に穴を掘り付近を通る小動物を待ち伏せして捕食し食いつなぎ、孵化後三ヶ月で蛹へと変態、更に二週間後に羽化し、成虫となる。

成虫の寿命は長く、独身であったとしても5年、異性と巡り会った場合ではなんとその五倍の25年間も生き続けるという。


『では俺達は』「本部に戻るから」『ここを離れる』「でも安心して」『お前の妻を』「呼んでおいたわ」

そう言い残し、夫婦は飛び去った。


「そりゃ助かるぜ…っとォ!」

メタルは両掌に大振りな林檎型爆弾を宿し、それを鉄治に投げつける。

鉄治はそれを刃となった両腕で切り刻み、更にその爆風を利用して一気にメタルまで詰め寄ると、間接部を切断して左腕を見事に切り落とした。


「グぉ!?」


どうにか鉄治を止めようとするメタルだったが、鉄治は間髪入れずにメタルの右肩を掴み、腕の刃をのど元の間接に突っ込もうとした。


しかし、次の瞬間。



ギュゥン!


鉄治の身体が大胆に焼き切られ、更なるダメージを恐れた鉄治は猛スピードで飛び退いた。

愛妻の到着を悟ったメタルは、その名を呼んだ。

「フォーク!愛する俺の妻よ!」


見れば空中には、ピンク色に輝く鎧を身に纏い、同じ色の飛行機械に乗った女が浮いていた。

「メタル、助けに来たわ!遅くなってしまったけれどね」

「十分過ぎる早さだぜ?」


この女こそ、メタル・ミューズの妻にして元フォークシンガーの女であり人禍幹部の椅子を夫と共有する異形フォーク・ミューズである。

「初めまして、シンバラ社のお三方。

私はフォーク・ミューズ。メタルの妻で、能力は両目と口から高出力レーザーを放つ『光線』。

古藤博士から頂いた、素晴らしい能力よ」

「そうかい。爆弾生成に、レーザーなぁ…まるでアメコミヒーローだなオイ!」

「ありがとうよ!」

「褒め言葉として受け取っておくわ!」


こうして三対二+大勢での戦いが始まったわけである。

恋歌「次回よこくー」

直美「私は香取直美。若干47歳の野球好きな女性声優兼ナレーター兼女性画家兼女性アニメーター。

群馬県前橋市出身。群馬県立前橋女子高等学校、フェリス女学院大学国文科卒業よ。今じゃマウスプロモーションに所属してる―

恋歌「直美おねーちゃん」

直美「なぁに、恋歌ちゃん?」

恋歌「そのせってー無茶ありすぎってまっちゃんが言ってた」

直美「…タイトルコール行きましょ、タイトルコール」

恋歌「次回『白い巨像第三部』ー」

直美「『某先生の新刊…か、タイトルからして悪堕ち系だな…』って、何なのよこのタイトル!?」

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