被害六 総理大臣の家に遊びに行ったよ
雅子「この後は、『う●●れるも―
松葉「おい!
…もう止めようぜ、嘘は」
雅子「そうですね…」
―4話終盤より・首相別荘―
「あー。で、なァんの話でしたっケ?
―っとォ!そうでしタァそうでしタァァァッ!
今日私が何故偉大なるグゥレイトォな鳩谷幸満内閣総理大臣の下に現れたかについてですガ…皆様は休暇で此方の別荘に来られてルーて聞いたモンですかラ!
ちょいとばカりオモテナシをネ!して差し上げるのガ筋ってモンだろうなーとネ!
サァサ、首相!何でモりくえすとヲどうぞドウゾDOUZOお構いなクゥッ!
可能な限りであれバ私の特技『超常特異特殊特効奇怪技法リージョンX』デ大抵の事ハ起こせますぜエい!」
リージョンの言葉に、首相はこう言った。
「そ、そうだな…じゃあ、リージョン…君にリクエストをさせて貰おう!
あの人禍とかいう連中が、私達を皆殺しにしようとしているんだ!
君の特異な『超常特異特殊特効奇怪技法リージョンX』で、私達十五人を人禍の魔の手から救ってくれ!」
リージョンと首相を除くその場の十四人は、心の中で首相に敬礼した。
妻・幸恵に至っては今すぐにでも飛びついて抱きしめたいくらいの気分だっただろう。
首相の言葉に、リージョンは暫く考え込んだ末にこう答えた。
「残念ですガ!残念なンですけどモ!まっこと残念デ残念かツ残念でナらず残念極まりナい事お答えしか返すこトが出来ず申し訳ナいんですけどモ!
ソイツは無理です無理なんです出来ません出来ないんです不可能です不可能なんですあぁアぁいキャァーントいィィィィッッっっトォォ!」
恐る恐る首相が理由を聞くと、リージョンは突如癇癪を起こしたかのような口調で語り出した。
「首相!首相首相首相!鳩谷首相!内閣総理大臣鳩谷幸満様!ミスタ・ユキー・ポッポー・ソーリ!
アナタは野党時代から与党批判の仕方が余りニも稚拙過ギていルだけでなク、政権を取ッた所で実際の政策ハ前政権の二の舞以下とイうgdgdっプり!
暫定税率廃止だノ!
減税だノ!
高速道路完全無料化だノ!
子供手当て所得制限無しだノ!
児童ポルノ法だノ!
人権擁護法案だノ!
外国人参政だノ!
一定期間逃げ続けれバ誰でも日本人になれる法律だノ!
gdgdでgdgdのgdgdたるgdgdかつgdgd的なgdgdの法律ばっかリ!
そしてココ!美しイ沖縄県に似合わぬ迷惑極まりナァァァァイ米軍基地につイて山積みの問題諸々!
沖縄県民が迷惑しテて貴重なレアなプレミアもんナ極上の超スペシャルなスンバラスィ大自然に悪影響なだけでなク!
仕事だからっテ任務だからッて国の為だかラって金の為だカらって家族の為ダからって!
愛する祖国ユナイテェードスティツアンメェリカッ合衆カントリーかラ遠く引き離さレて、異国の地でツマンネー仕事させラれてル最強ナアメリカンソルジャーの皆様ガそりゃアもウ可哀想で可哀想で可哀想過ぎて泣けて来ちゃウのよネ…シクシクオイオイ………。
それ程の末期馬鹿ですヨ馬鹿ですとモ!
ですがソンナ貴男だっテ!貴男だっテ貴男だッて貴男ダって!アナタだってぇぇぇぇぇぃぁぉうッ!
流石に相手の話クライ聞くもんで生姜ァァァァァァァもゥッ!
私、人禍の回し者なんですヨ?
人類根絶計画のメンバーなんですヨ?
んデ、アナタは最ジューよぉターゲットな訳ですヨ?
そレを何で逃ガすんでス?ソれで私が何ノ得をすルんデす?」
その言葉に、首相以下十五人は凍り付いた。
―しまった!そういえばこいつは人禍の回し者だった!
「とォ…大声だしちゃってスミマセンネ!
学生時代言われてたンですけどネ、実家の母からネ。感情にまかせて大声出すなってネ!
さァてっとォ!ソンナコンナで、レッツ・ショウタァァァイムッ!」
リージョンのマントの中から黒くツヤのある質感の細長い腕が飛び出したかと重うと、その先端が瞬時に変形。
両手はそれぞれ異なる姿の人形になった。
色鮮やかに彩色され、細部まで精巧に作り込まれた人形は、どちらも少女の姿をしていた。
―誰かに似ている。
首相は思った。
すると首相の娘が、掠れた声で言った。
「あ…あれ…私?」
向かって右側の人形は確かに首相の娘・鳩谷百合子とそっくりだった。
対する左側の人形は、娘の親友・邦子に酷似していた。
リージョンは甲高い声を出しながら人形を動かし始めた。
「あたしユリコ!あたしクニコ!」
人形はリージョンの語りに併せてクネクネと動いている。
「ユリコちゃんて可哀想ネ!身体弱い!デもアタシ健康!スポーツ万能!
お母さんハ変だシ、お父さんモ首相だカらッて粋がってル!本当は大した事無イのにネ!
アタシのお家イイお家!とってもトッテモいいお家!ダッテお父さんが問題山積みじゃないモの!
アタシって何てシ・ア・ワ・セなノかしらァ!
学校でハ年柄年中独りボッチ!友達居ナい!デもアタシ人気者!とってもトッテモ人気者!
アタシってバ本当にシ・ア・ワ・セ・ねッ!」
リージョンの演技を見た全員は度肝を抜かれた。
何故ならそれは、鳩谷百合子の親友・井野邦子の台詞として発せられたものだったからである。
驚いた理由はそれだけではない。
リージョンの言っていることは、全て真実だったからである。
百合子は生まれつき身体が弱く、また首相の娘と言うことで学校でも孤立しやすいし、父親である首相は様々な問題でマスゴミや野党から叩かれていた。
対する邦子は生まれつき健康的な身体で運動が得意な活発な少女であり、また学校ではかなりの人気者として名が知れていた。
その言葉を聞いて、百合子の表情が歪んだ。
―自分は親友からもその程度にしか思われていなかったのか。
そして邦子もまた、自分の心にもない事を言われ深く傷付いていた。
更にこの二人が仲良しである事はここに集まった一五人にとって有名だった為、リージョンの演技に誰もが震え出した。
しかしリージョンは尚も演技を続ける。
「そウよ!私決めタ!お友達になってあげまショう!
可哀想で可哀想な百合子ちゃんの、掛け替えのないお友達ニ!」
「貴様…やめろ!」
旅行に同行していた邦子の兄は叫ぶ。
しかしリージョンは演技を続ける。青年の言葉などまるで聞いていないかのように。
「あぁ~私ってバ何て優しいのかしラ!何て美しい心の持ち主なんでショ!
これで私の評判も急・上・昇ネ!」
「やめろと言ってるだろうが!」
邦子の父が叫びながらリージョンの頭目掛けて大きな壷を投げつける。
しかしリージョンは投げられた壷を睨み付け、手も触れずに破壊してしまった。
リージョンは高らかに続けた。
「判ってるわヨ!判ってるノ!百合子ちゃんは素直になれないダケ!
ちょォォッと道を踏み外しチャっただケ!
だかラ優しくて寛大で恵まれた私は、百合子ちゃんを許してア・ゲ・ル・ノッ!」
「……やめて…」
「ダッテ私はァ!不幸で可哀想な百合子ちゃんに比べたらァ!
ずぅぅうううぅぅぅううぅうぅぅうううぉぉぉぉっとぉぃ!シ・ア・ワ・セナンダもノォ!」
「私は……私はそんな事………思ってない……」
「あぁン!百合子ちゃん見てるト、私っテばシアワセなんだァって改めて実感出来るわァ!
ユゥゥゥリコチャアァァァァァン、ア・リ・ガ・ト・ウゥゥゥゥッ!ポゥッ!」
邦子の頬を涙が伝い、百合子は膝を抱えてふさぎ込んでしまった。
「いい加減にしろっ!」
首相は怒りに任せて大きな鉢植えを両手で抱え上げ、リージョン目掛けて投げつける。
しかしリージョンはそれを優雅に避けて見せた。
「fm、現時点でノ皆様の反応を見るニ…皆様ハ私の人形劇を気に入っッテ下さラなイようですネェッ!
やハり人間トハ難しいナ!まぁ良イや!クライアントは先ずクレームかラ始めタがル奴が多いンだ!
そういうモンですヨ、そうダなそうですネィっトぉ!
まァ、期待裏切ラれちゃアクライアントがキレルのモ仕方在りマせんわなア!
ソういうモンか?そウいうモンさ!そうイうモンだ!そういウもんなんダ!
ヨッテ!結論を出すナラバァァぁぁぁァァァァッ!
出し物はよりハァァァァァァアドにィッ!エンターテイメントは過激じゃなきゃあねェッ!」
リージョンの叫びには一同を黙らせるだけの力が有り余るほど含まれていた。
暫くの沈黙を打ち破ったのは、邦子の母であった。
「……もう…嫌………嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
リージョンの悪趣味な人形劇を無抵抗のまま見せつけられた邦子の母は精神に限界を来たし、別荘からの逃亡を試みた。
―屋外―
そして外に出た、その時。
「ヤホヤホヤッホー!ドライブって気ン持ちィィーッ!」
轟音と共に現れたのは、巨大な緑色のダンプトラック・キャタピラー773Bであった。
運転席には別荘の中に居るはずのリージョンが乗っている。
ダンプトラックは猛スピードで邦子の母へと直進し、彼女を天高く叩き飛ばした。
「がふッ!」
女の身体は地面に勢いよく叩き付けられたが、ダンプトラックはその身体を狙って勢いの良いバック走行を容赦なくかました。
巨大なダンプトラックの極太タイヤに轢き潰された死体は見るも無惨な姿となったが、それでも尚、ダンプは往復を止めなかった。
三十回程往復したところで、リージョンが運転席から顔を出してこう言った。
「イヤハヤ御立派御立派ア!ヒューマンカーペットの出来上がリっテ訳ですナ!」
直後、ダンプトラックは突如消え失せてしまった。
―再び屋内―
「第二幕、開始ィィィッ!」
リージョンが両手を交差させると、邦子の人形の姿が百合子の彼氏・敏広に変わった。
百合子と敏広は思った。
―…もしあいつがあの事を知っていたら…
―あの事をあんな人形劇にされたら…
人形は細かい動作で服を脱いでいき、球体間接を剥き出しにして全裸と呼べる状態になった。
全裸の人形二体は絡み合い、蠢き始める。
「アふゥん!敏広の○チン○がアタシの二当たっテるワぁン!こんナの初メてェン!ユリコ感ジちゃウゥゥッ!」
リージョンの悪趣味な演技で晒されたのは、百合子と敏広の初体験の様子であった。
二人は思い出してしまった。
ある夏、放課後の教室でお互い本能の赴くままに愛し合ったあの日を。
「……敏広……お前……お前は……お前は何て馬鹿な事をッ!」
敏広の父は息子へ殴りかかり、母親は弱々しく泣き崩れた。
と、その時であった。
鋭い音と共に別荘が閃光に包まれ、十四人は思わず眼を閉じた。
そして、数秒後。
敏広の身体に、滴が落ちてきた。
何事かと思い、眼を開けた敏広は、その衝撃の光景に言葉を失った。
父親の頭が、自分の服を掴んで殴りかかったまま吹き飛んで居たのだ。
母親も、上半身を真っ二つに切り裂かれており、また怪死したのはこの二名だけではなかった。
旅行に同行していた彼の祖父母や弟は全身を焼かれていたし、井野家の面々も工業用の円錐形ドリルやゴムホース、剣山、針金ハンガー等あらゆる凶器で惨殺されていた。
その光景をありありと見せつけられた敏広は、精神的に追い詰められる余り舌を噛み切って苦しみながら自殺を試みた。
舌には多くの神経が集中し、それが少しでも傷付くとかなりの苦痛を感じる。
故に意識のある状態で舌を切られると痛みのショックの余り死に至る事さえそう珍しくはなく、その上痛みの余り舌の筋肉が暴走し、舌を喉に詰まらせて窒息死する事もあるという。
そんなわけで、ショック死と窒息死の二本立て&大抵何時でも手軽に出来る難易度から、自ら舌を噛み切るという行為は自害法として非常に有名だったりするのである。
自害し、息絶えた敏広の亡骸を見たリージョンは言った。
「っハ!生存力の欠片モ有りマせんネぇ!
敬ウ価値無い人間ッテ、普通に殺しテもツマンネーんでスよネ!
でもヨカッタナ!ヨカッタネ!ヨカッタヨ!ヨカッタサ!ヨカッタトモ!
だって、こォんナに面白い最後を遂げテくレるなンてネ!
最高だナ最高だネ最高だヨ最高サ最高だとモ!
だかラ、君のソの死に様!
ソレだケは評価してアゲてもイイ!」
リージョンは恐怖の余り動けない首相一家を差し置いて、何かの作業を始めた。
そして一分後、リージョンが作業を終えた場所に設置されていたのは、小型のビデオカメラであった。
「何をする……気だ…?」
首相の問いに、リージョンは嬉しそうに答えた。
「ヨォクぞ聞いテくれマしタぁッ!
コレヨリ執り行われマスのはァッ!私・リージョンによる、鳩谷幸満首相接待イベントのDA☆I☆GO☆MI!
全国放送でお送りスる一大企画!
その名もォォォゥ―『鳩谷幸満のアルティメット・クイズショー』ォォォッ!」
「「「「「…?」」」」」
首をかしげる鳩谷家の面々など気にも留めず、リージョンは声高らかに説明を始めた。
「はァい!皆さんおゲンキィ?私はとっても元気でェェェェェェェス!
本日は総統かラ特別に、日本国内の全表示用モニター&!全テレビ・全公共モニターを貸し切る許可を頂きましテ!
そうイウ訳でワタクシ、ある企画を思い立ちマしタ!
その名もォォォゥ―『鳩谷幸満のアルティメット・クイズショー』ォォォッ!」
リージョンの流す映像は、日本全国の上空に滞空する人禍の機体から下げられたモニターや、都心部のビル等に備わっている全てのあらゆるモニター、更には国内に存在する全ての家庭用テレビから同時に流されていた。
その途端に、日本国内に放たれた人禍の機関員達は突如人類への攻撃命令を止めた。
機械兵や高度な知能を持つ異形だけではなく、動物型でさほど知能の高くはない異形や生体兵器までもがである。
「企画概要はトッテモ簡ァン単ッ!
まズ、此方にオアス鳩谷首相に縁の深ァァァァイ方々―ブッチャケ指名手配されテ居られル内閣の方々とGO☆KA☆ZO☆KUにハこれより、本企画に於けル『贄』とナッテ頂きまぁぁぁス!
続いテ此方にオアス内閣総理大臣鳩谷幸満氏に、コレよりクイズを出してイキまァぁス!
クイズは『贄』の方一人にツキ一問!それゾレが一個人に対すル『対応問題』となっておリ、その問題に正解出来ないト、首相は究極の選択を強いラれテしまいマァァァス!
その『究極の選択』とハァァァァ…
…ズゥンバァリッ!不正解の罰則とシテ、首相か問題に対応すル『贄』の方、ドチラカが我が親愛なル素晴らしキ同僚達にヨッテェェェェSA☆TSU☆GA☆IサレテしまうのDEATH!
ァ自分を犠牲に『贄』の方を助けるのカぁ…、ンソレとも保身の為に『贄』の方をMI☆GO☆RO☆SHIにするのカは……首相の、自由だァァァァァ!
企画は首相が死なれるカ、又ハ贄の方ガ全滅するカ、全問正解なさった時点で終了致し□!
ヨッテこの企画は最も早い場合一問目不正解の時点で即・終・了!トイウコトデスネ…マァ、全問不正解でモ生き残れル事は生き残レるんですけド…。
仮にそウイうオチだと仮にこの戦いデ我々人禍が敗北し全滅、日本が平和にナッタ時ニャア、鳩谷幸満は総理トシテの肩書きヲ失っチまウダケじゃなク、保身の為ニ同志や家族ヲモ見殺しニ↓人間としテ最低の野郎ニ成り下ガッちまイマすがネ!
マァ、去年の夏に行わレタ総裁選で『民優党の失策によって皆様にもたらされた暗闇の時代を光に満ちあふれた平安の時代へと変え、また暗闇の時代に伴って産まれ、国民の皆様の心へ容赦なく重くのし掛かる不安や絶望を、我々が徹底して取り払います!』とかスンバラスィィィィ事仰ってラシタ鳩谷幸満首相ナラバぁぁああぁぁぁぁ…当然、大切な内閣の同志達を犠牲にして生き残ろうなんざ思っちゃ居ないでしょうシ!
マァシテや家族を見殺しに自分だケ生き残ろうナンテ、当然考えもしないでショーなァ!
ア!
因みに企画中はターゲット以外の方を攻撃しタリ、殺害する様な事ハ一切致しマセん!皆様が攻撃を仕掛けテコなけレばネ!
ソレでは参りまショウ!
『鳩谷幸満のアルティメット・クイズショー』
『贄』になって下さる方とその対応問題にして第一問はァァァァ此方ッ!」
狂気のクイズショー、遂に開始。
次回予告
鉄治「何か凄ぇのが出てきたな…」
薫「あぁ…何だろうな、恐ろしいというか、奴こそ『まさに異形』とでも言うべきか…」
鉄治「んじゃ、そろそろタイトルコール行っちまうか?」
薫「賛成だ」
鉄治&薫「「次回、白い巨像第三部」」
薫「『被害七!』」
鉄治「『そういえば、某Fテレビの人気クイズ番組のタイトルの、本当の意味を知っている十代は何人居るんだろう?』」
薫「無茶苦茶なタイトルだな…」
鉄治「本編よりはマシだろ」