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【完結】長い眠りのその後で  作者: maruko
第三章 長い眠りのその後で

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第十二話 謝罪と和解

よろしくお願いします

公爵邸の地下には3つの牢があります。

簡潔に表現すると高い、狭い、丸い。

この牢はお邸が建立された200年前に作られた物で代々の当主が魔法で操っている物。

当主が魔力持ちでない場合は王宮魔術師団長に依頼する手筈らしいです。


今回サンディル様が当主になったのは彼が不在の時だったので、お義父様の時のまま団長が牢の鍵主だったのに私が嫁いだ時に変更になりました。


牢番みたいで嫌だったのだけど、サンディル様に変更する前にスノーを『高い』に入れてしまったので、今回の件が解決するまでそのままなのですって⋯⋯しまった!変更してから入れれば良かったのに少し焦っちゃいました。


あの怪しい国にスノーが間諜としては役立たずだと気づかれる前に保護しなければと思ったから。


その怪しい国の名は、サンディル様の過去戻りのおかげでやっと確定しました。

《マッケナン王国》

以前お義父様に見せてもらった地図で確認した時も思ったけど、小さな小さな王国です。

国全体で公爵領とうちのスパナート伯爵家の領地を足したくらい。


あの国がなんの為にこんな事を考えたのか不思議です。

ミント伯爵の甘言に乗ったとしてもリスクが大きいと思うのだけど⋯⋯。


今スノーを入れている、罪人を保護するための牢『高い』は地下なのに実質は公爵家のトンガリ屋根の部分に当たる所にあります。

簡単に言うと入るのは地下からしか入れられないけどそこから魔法で上に飛ばす?みたいな仕組み。


狭いは文字通り狭い。丸いは同じく丸い。

どちらもほぼ拷問用の牢です、よく考えたら普通の牢は公爵家には存在してません。


その丸いに新たにスノーの姉が入りました。

元アッパール夫人とミント伯爵は王家の方で引き取って頂きました。

だって普通の牢がないのだもの⋯⋯⋯。


さてさて罪人の取り調べはお義父様と旦那様にお任せして私は今からメリルに会う予定です。

昨日メリルから先触れが来たので、会うのは何年ぶりかしら?彼女が結婚してから会ってないと思うので7年振りです。



──────────────



応接室に通されたメリルとバスティナ伯爵様は座らずに立って私を待っていました。

それにもびっくりしてしまったけれど、まさかメリルが伯爵と来られるとは思ってませんでした。

二人に挨拶をして座るように促します。

向かいに私も腰をおろしメリルを観察するとやはり微量の魔力は存在しておりました。


「公爵夫人、時間を取って下さりありがとうございます。突然お邪魔しまして申し訳ありません」


伯爵様は謝罪を述べ頭を下げられましたが、メリルも同じく頭を下げたので私は慌ててしまいました。


「バスティナ伯爵、メリル頭を上げてください。

⋯⋯⋯ごめんなさい、長年の習慣で夫人の事を呼び捨てにしてしまいました」


「いいえ、公爵夫人。私はその長い間、貴方様に対して大変酷いことをしてしまって、お詫びをしに参りました。洗脳されていたとはいえ本当に申し訳ありませんでした」


再びメリルは頭を下げます。

ふと疑問に思ったのですが、それが顔に出てしまったのでしょう、伯爵が察して説明くださいました。


王家の命でメリルの洗脳を解くために伯爵が携わったのですが、魔法での洗脳ではなかったため、かなり難航したそうです。

精神魔法なら魔法で解除するので、魔力持ちからするとそちらの方がまだ遥かに安易に出来るそうです。

結局は伯爵では解除するのが難しく、なんとこれを解いたのは父だったとか⋯。


父にそんな特殊な能力あったかしら?


父は商談相手と話をする時、よく刷り込みをするそうで、それを反対にするだけだからとメリルの洗脳を解くのを買って出たそうです。

なるほど商才があると思ってましたが、まさかの商談相手を洗脳してたとは⋯⋯。

それって有りなんでしょうか。

っていうか出来るならもっと早くメリルが洗脳されてる事が解ればよかった。

父が解けるのなら尚更でした。


「伯爵夫人、もし差し支えなかったら前の様にアディルとお呼びくださいませ。公の場では困りますが今は家庭内の事なので、私もメリルと呼んでしまいそうですし。本当ならお姉様と呼ばなければならないかもしれませんが、ごめんなさい、まだ呼べなくて」


「いいえアディル、いいのメリルでいいわ。

私、何故貴方達が私とキャンベラを姉と呼ばないのか理由を知ってたの。お父様とお母様のお話を聞いてしまったのよ、その時は洗脳されてたから二人もそしてアディル達も憎んだわ。でもね、私も母になってようやくわかった事もあるのよ」


母になってわかった事?

何かしら?私はわからずメリルに聞くと彼女は教えてくれました。


「私、実はね、子供が苦手だったの。それが元々なのか洗脳の影響かは解らないのだけど、正直アディルやアンディーと遊ぶのも苦痛で⋯⋯。最初は二人だから嫌なのかと思ってたのよ。仲良くするふりは復讐のためになんて思ってたもの。でもねバスティナへ嫁いでから孤児院の慰問とかあって、昔は何も思わなかったのに子供達が苦手で手を繋ぐのも緊張してしまって。

昔お祖母様と行ってた時は平気だったのに、なんて思った時に、そういえば昔は私も子供だったなと。

そしてよく考えたら二人の事だけが苦手とか嫌とかじゃなくてスパナートにいる時の慰問も嫌だったなと気づいたの。

あぁ私は子供が苦手だったのだと、はっきり解ったのはバスティナへ嫁いでからね」


メリルの告白に唖然としました。

周りの大人、お祖母様やメイドはメリルは上手に子供と遊ぶのよ、と言っていたけど演技だったのね。


「それがね、子供を自分が産んだ時この子は私が絶対に守るんだ!って思えたの。苦手でも嫌でも全然なくて。自分の子供はそう思えたの。それでも他の子は苦手だったわ。それでね、初めてお父様とお母様の気持ちが解ったのよ。それは理屈ではないのだと、やっぱり他所の子は他所の子なんだって。

でもそれは仕方がないことなんだって。

そうしたらお祖母様やお祖父様が私に注いでくれた愛情は本当に稀有な事だったのだと、ありがたい事なんだと気づいたの。

それでもね、子供の時から復讐の事だけを考えてた私にはまだ葛藤が続いてて⋯⋯それ以上考えちゃいけないって復讐するんだって⋯⋯。

今、洗脳が溶けたら一体何に復讐しようとしてたんだろうって思うのよ。

私を生かしてくれたのはスパナート家なのにね」


メリルは泣きながら告白します。

サンディル様の過去戻りを見た私はメリルの出生の秘密を知っています。

メリルには伏せているけど実母のティーナ様の事はメリルはどう思うのでしょうか?


「アディル、私はキャンベラにも酷い事をしていたの。

私が話したキャンベラの行いは殆ど嘘なのよ。

でも嘘の辻褄を合わせる為に彼女を操ろうと魔法を使ってたの。

自分が洗脳されて復讐心に囚われてて今それがとても辛いのに、その辛さを私は彼女に十数年も⋯⋯。

何も罪のないキャンベラにもアディルにもアンディーにも。本当にごめんなさい、謝って許されないのは解っているけれど、それでも謝罪しか今の私には出来る事がなくて⋯本当に、本当にごめんなさい」


「許すわ」


私はメリルの謝罪を受け入れました。

だってメリルのした事は洗脳されてした事で彼女には非がないのです。

出生の事だって彼女の預かり知らぬことです。

あの頃私は辛かったけど悲しかったけど、あれが誤解とか勘違いとかでの行いなら許すのは無理だったかもしれませんが、洗脳という卑劣な行いの犠牲者に罪は問えない。

ましてや生命を奪ったとかの重罪ならまだしも私を陥れただけです。

私がいいなら良いのです。


「⋯メリル。私からこんな事を言い出すのも変かもしれないのだけど、これから私達は本当の家族になれないかしら?姉妹は無理でも従姉妹とか親戚とか、そんな感じから始めて、少しずつ家族になっていけたらと思うのだけど、駄目かしら?」


「⋯⋯いいの?アディルそんな夢みたいな事。

本当にいいの?」


「えぇお願いしたいです。本当の敵はメリルやキャンベラではないもの、きっと父や母も喜んでくれると思うわ。一番喜んでくれるのはお祖母様かも」


「お祖母様はきっと喜んでくださるわ。私洗脳が解けて思ったのだけどお祖母様はとんでもなくお人好しなのね。当たり前ではないのだと改めて思ったもの。私は幸運に恵まれていたのだわ。お祖母様という幸運に」


「そうよね、あんなにお人好しも珍しいけれど。でもお祖母様の真似は私にはできないわ」


私達は二人で笑い合いました。

初めて心から()()()()事ができたのです。

17年かかったけど、人生の始めのちょっとです。

これからはずっとこれが続いていくのだと思うと本当に嬉しくて私も涙が溢れて⋯⋯そしてメリルと抱き合いました。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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