第31話
「ドゴゴゴゴーン」
轟音と共に目の前に眩い光がラットに直撃した。
バチバチバチ!肌に痺れる様な痛みが走り顔が強張る。辛うじて見えなくならなかった片目に入ってきたのは、ラットから青い電気がパチパチと弾け、丸焦げで煙りを立てている姿だった。
「おい、傀!お前さー、最後まで気を抜くなよ〜!」
木の影から唐突に声が聞こえた。
横を見ると、ローブ姿の深くフードを被った男が歩いてくる。
辛うじで見える口元はニコニコ笑う笑顔、その笑顔は朗らかな人柄が溢れていて、まさに好青年、そんな男だった。
「よぉ!傀、久しぶりだな」
「ご、豪君…あの…」
聞きたい事はいっぱいあった。
だが、豪の顔を見たら何も言えなくなってしまった。
それは安心したからや、久々の旧友との再会などの理由ではない。
それは、言葉では言い表せない。一見、好青年だが、豪には何もかも沈み込んでいく様なおどろおどろしい雰囲気が包み込んでいた。
昔、傀は豪とは親友関係にあったが、今の豪は昔の豪とは全く別人の様に変わってしまっているた。
だからなのだろうか。
しかし、僕は確かにそんな気がした。
「ん?なんだ傀?」
「い、いや、何でもない。」
「なんだよ〜、途中で辞めんなよ。気持ち悪いだろ?」
「いや、本当に何でもないって」
「わかったよ。でも、まぁ〜気になるなー」
「そ、それにしても久々だね」
「本当だよな。って言っても、あのとき傀見かけてんだよね」
「あの時?」
「街で似てる人がいるなーって」
「やっぱりあれは豪君だったんだね」
「そうそう!まぁ俺も声かけないで消えたのが悪いんだけど、仕事中で声掛けらんなかったんだよなー」
ニヤニヤと笑い時折、からかってくることがあったがそれは今も健在のようだ。
「あの時の顔。思い出しただけでも、ブフゥ〜ッ」
手で口元を必死に押さえているが笑い声が漏れている。
「ちょ、僕どんな顔してたの?」
「いや、すまんすまん、久々でついな」
「相変わらずなんだから、でも元気そうで良かったよ」
「傀もな〜」
急に真剣な面持ちになって聞いてきた。
「ところで、本題に入ってもいいか?」
その目は黒く闇に囚われたように渦を巻いていた。
「厳しい事言けど、今回は危ない所だったから即死で決めたけど、恨みがあるなら恐怖を植え付けるようにゆっくりじわじわと殺していくやり方をやるべきだ。
そして、ちゃんと逝ったか確認するまでは気を抜かない。窮鼠猫を噛む、って言うだろ?」
さっきのは完全に油断してしまっていたし、一番やってはいけなかったことだと改めて思う。
もし、豪が助けてくれなかったらと思うと背筋がゾっとする。
「う、うん…。ごめん、さっきはありがとう」
俯くようにお礼を言うが何かの気配で顔をすぐさま上げると一瞬豪の背後に小さい何か見えた。
「ん?いや、俺もコイツ追ってたから別に構わないぜ、気にすんな!」
「いや、でも…」
そう言いかけると豪の背後から声と共にそれは姿を現した。
「マスター、そろそろ」
それは、ティラと瓜二つで、でもどこか違う。例えるなら月と太陽そんな感じの妖精だった。
「ん?ああ、もうそんな時間か」
ティラに似た妖精はコクッと頷く。
「わるい傀。積もる話がありそうだけど、それはまた今度な」
「え?ちょっ…」
「んじゃ、またな!」
嵐の様に去っていく豪を僕は唖然として見ることしかできなかった。




