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駄菓子屋から始まる異世界レベリング  作者: 八 五月 / 戯歌 飛龍
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第28話

朝よりも混んでいる市場を抜けたというのに、なかなか人の減らない人混みの中でティラとはぐれないように進む。

人々は、ある一定の流れに沿って歩いている。

故に、筋肉痛の傀には少し楽に歩くことができる。だがその難点といえば、精神力が削られることだろう。人混みに慣れていない傀にとっては、慣れている人よりも気疲れしてしまう傾向にあると言える。

はぁ、とため息をついた瞬間、


違和感


何かと考えていると、ハッと気づく。

探していた宿がそこにあった。

僕が本を読んでいる間にティラが調べてくれた、安くて質の良い宿の名前の看板がそこに書いてあった。

「ティラ!宿あったよ!」

「え、ほんとだ!」

どうやらティラも見落としていたようだった。

よかった。

宿に行く前にお金を確認しようと思い、まだ汚れ一つ付いてないカバンを開ける。

またこの間のように焦らないためにも先にお金の入った袋を用意しておこうと思っての行動だった。

お金は後払いだが、料金が聞いていたのと違うなんてことがないようにと、それがあるのか再度の確認だ。

だが、袋を入れたと思えるところに入れた手は何も掴まない。


え?


目を皿にして隈なくカバンを漁る。

ない。

ないのだ。


無い物を有るなんて言えないのに、ティラに言おうにも言えない。

まさか、スリにあったなんて。

それを知らないティラは、今にも扉のドアノブに手を掛ける。

「ティラ!!待って!」

「え、えぇ?!」


「お金すられたみたい…」


ティラはとても驚愕した表情をしてから掛けた手をそっと外し、考え始めた。

「そう...ね。...まあ野宿すれば何とかなるわ。多分。」

「ごめん」

(う〜ん。私は普段外だから野宿でもいいけど…。傀は疲れてるし。でも、どこの宿もお金ないとダメだし…。)

「ごめん」

フゥ〜っとティラは考えをリセットするように息を吐いた。

「街の外の安全な所で一休みしましょ!

街の路地裏とかの方が危険だし」

「うん、わかった」



お互い無言のまま街を出る。

街を出る頃にはもうかなり暗くなっていた。

(う〜ぅぅっ、お腹空いたな)

そんな事を思いながら目を凝らし歩く。また同じ失敗しないようにしっかりと周りの音、気配、影、全てに意識を集中させる。

突然、何かに気づく。


 「ティラ!」


ティラに飛びつくように覆い被さり転がる。

木々の間から数秒前ティラがいた場所に何かの液体が飛びちり辺りを溶かし、湯気を立たせた。その匂いは、独特な酸っぱい匂いがする。

僕はすぐさま姿勢を直し腰に付けた脇差程度のナイフに手を回し構える。


ガサガサと音を立てる草たち。


ここら一帯は、背の高い草が多く、木もかなり生い茂っていることから、敵がどこから攻撃してくるかわからない状態。

そして、日が沈んで直ぐの時間帯。


不思議な事に前にあったような焦りや怯えは無くただスーッとした冷静さだけがあった。

「もぉー、なんなの?急に!」

「しっ!」

人差し指を立てティラに見せる。

音が止み、静けさだけが残る。

「‼︎」

ティラを抱え後ろに一歩飛び下がる。目の前を液体が通過する。また辺りを湯気を立て溶かす。

「ごめん、ティラ。ちょっと上の方に行って隠れててくれない?」

「え?でも、私も」

「僕なら大丈夫だからさ、頼むよ。

ここは一人でやらせてほしい」

「わ、わかったわ」

そう言いながらティラは空の方に飛んでいく。

(ちょっと目が慣れてきたかな)

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