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駄菓子屋から始まる異世界レベリング  作者: 八 五月 / 戯歌 飛龍
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第19話



「あの、初心者用の武器と防具って…」


あの後、傀たちは とりあえず武器と防具を揃えるためにお店を回るも、なかなか初心者用のものは置いておらず、ここですでに5軒目になっていた。


「すみません、こちらには置いてなくって…。あ、もしかしたら一本向こう側の防具屋さんが初心者向けのがあったと思いますよ?

ああ、えーっと…、ドワーフの方がやってらっしゃる…」


そして、毎度の如く出てくるのが先程のお店。

ここら辺の防具屋さんや武器屋さんは、BRW団の本部が近くにあるからか、ちょっと使うのにコツがいる武器や立派なベテランの方用の防具ばかりだった。


無一文で入ってしまい、追い出されてしまった店に入るのはどことなく気が引けるが、背に腹は変えられまい。

重い足取りで先程の店に向かう。


「あの〜、すみません…」


「らっしゃ…、はぁ〜、またあんたらか。文無しには」


オヤジさんの動きが固まる。

下向きだった視線を上げてよく見てみると、さっきはなかった頬の腫れが赤みを帯びて、とても痛々しい。


「ど、どうしたの、そのほっぺの」

「あ、ああちょっと嫁さんに…」


気が抜けたように頬をさすり始めた店主はまた硬直する。


「いらっしゃいませ!先ほどは大変失礼しました、何かお探しでしょうか?!」


礼儀正しく接客をするオヤジさんの後ろから ぬっと現れたのは、オヤジさんよりも背の高いエルフの女性、先ほど言っていたオヤジさんの奥さんだ。

オヤジさんを笑顔で見つめているが、どことなく怖い。


「え〜っと…その」



「今度はお金を持って来たわ!これで文句ないでしょ?」


萎縮している傀の代わりに言うティラの圧と後ろの奥さんからの圧の板挟みになり、ほっぺたを赤く腫らしたオヤジさんはさらに小さくなる。


「さっきはすまんかった…だからもう勘弁してくれ!」




「この子達を追い出したのね?…はぁ、全くその為の制度もあるのに」

「どうゆーこと?」


「実はね、この工房でも お金を持ってない人のために 分割後払いと、武器とか防具の代金の代わりに労働してもらうっていうのもあるのよ。

それなのに、この人ったら大切なお客様をお金を持ってないからって追い出しちゃうなんて…」


頬に手を当てながらため息をつく。


「労働って、どのぐらい働んですか?」


「そうねー、あなたの場合は1日 工房での肉体労働とちっちゃな妖精さんは天井とかの掃除かしら…。

あ!でも、もうお金は調達出来てるみたいだからあれだけど、迷惑もかけてるから今回半額にしちゃう!」


その言葉にオヤジさんは食ってかかるも、奥さんの睨みには歯も立たない。

再び逆鱗に触れたらしく、今度は頭を鷲掴みにされ、ミシミシと今にも聞こえそうな勢いだ。


いで、いででででぇ。わるい、わるかったって!


オヤジさんの悲痛な叫びと共にようやくその手は離され、解放された。


い、痛そう…。


そして渋々ではあるが、解放されたオヤジさんは、またあの痛みを味わう羽目にならないように、途轍もなく丁寧に様々な商品を見せてくれた。

実際に試着もさせてくれたし、さすがというべきか 傀の成長に備えて少し大きめで傀でも着けて小走りできるほど軽い防具を出し、調節までしてくれた。


それに、会計の際には本当に半額してもらい、思ったよりも安く済んだ。

奥さんからお釣りを受け取ると、


「また、うちの店を利用してね!」


と見送りまでしてもらい、店を後にした。

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