<36> ファミルの身体能力と青木さんの驚き
ファミルの身体能力の説明は、青木さんにはきちんと説明していたはずだ。それなのに、青木さんは何を驚いているのだろう。僕がただ単にグロック18でリサと一緒に連射しているのを、ファミルが避けているだけなのに。
「青木さん。リサの身体能力の説明しましたよね。銃で撃っても避けられてしまったとか」
「田中さん。それは聞きましたよ。でもね、それはリボルバーだと思ってたから、避けるのも可能だと思っただけで、グロック18を二人で同時に撃つのを避けるなんて聞いてないよ。ありえないよ。なんなんだよあの子は」
「つまり、ファミルの身体能力は青木さんにとって信じられないレベルということですね」
「あれが信じられるか? 未だに目を疑っているよ。人間が認識できるスピードを逸脱した反応速度。これをどう理解すればいいんだ? リボルバーなら、撃つ瞬間に軌道を計算して避けるだけだから、慣れれば不可能ではない。でも、あれは予測不可能だ。それを見て避ける? それを信じろと? もう笑うしかないな……」
あはは……と青木さんは脱力して笑った。
「戦闘が必要になった場合には、ナンシーがサポートしたファミルがいれば大丈夫。鬼に金棒だ。今回、僕たちが準備しているのは悪霊の集団との対決のためだ。今までは戦力的に足りなったので相手の様子を探ることすらしていない。下手に調べているのを相手に見つかった場合に、逆にこちらが狙われるかもしれない。しかし、ファミルとナンシーのペアにより、状況は一変した。彼女たちは千人相手でも負けない。しかし、念には念を入れて準備すべきだろう。相手の情報がまだ見えていない以上、安易に動くのは危険だ。もし相手が十万人ならまだ足りない」
青木さんは慎重だ。僕は霊の世界のことはよくわからない。まだ死んだことないし。でも、青木さんは何千年も霊として存在してきたのだから、対抗策もわかるのだろう。僕にできることは、追加資金を準備することぐらいだ。今は様子を見よう。青木さんに一つ質問だ。
「青木さん、もし、相手が十万人なら、まだ足りないということでしたが、準備が整えば十万人でも対抗できるのですか?」
「田中さん。十万人を一度に相手にする状況なんて発生しないんですよ。十万人のうち、一度に出てくるのは初めはせいぜい百人ぐらいです。それでだめなら二百人、四百人と徐々に相手はこちらへの対抗人数を増やすでしょうが十万人の霊の集団だとしても、統一されているわけではなく派閥があると考える方が自然です。別の派閥と手を組むということは通常ないので、一度に来るのはせいぜい千人までだと思われます。とは言え、相手の動きがわからないと危険です。だから敵の情報が必要となりますので、準備が整ったら相手にスパイを送り込みます」
青木さんは具体的に対策を考えているそうで、五千人までなら対抗できるよう社員五十人に対して訓練を行うそうだ。
ちなみに、全然関係のない話だが、青木探偵事務所に仕事の電話が毎日入るようになったそうだ。ほかでどうやっても解決しない問題を一億円だしてもいいから解決したいという人が、全世界にいるらしい。だから、スカウトした人たちが、すでに働いて稼ぎをだしているのだと。
「今回の件で、一番得したのって青木さんですよね。」
と僕は呟いたのだった。




