<35> ファミルのテレビ出演
異世界言語能力を得たファミルと日本に来た。昨日、両親や友達に別れを告げてきたそうだ。一週間に一度帰れるし問題はなかったそうだ。ファミルは仕事として今回の話を受け、月百万円の給料にも喜んでくれた。日本を初めて見るファミルは、自動車が数多く走ってる道路や、立ち並ぶビル、空を飛ぶ飛行機など、全てに驚いていた。
今日は、テレビ出演のための打ち合わせがある。放送は2か月後の予定だ。
ファミルが優勝する内容でテレビに放映されるのは決定事項である。しかしファミルのいたユーナスにはテレビがなかったので、昨日までは日本でテレビを見てもらい、こちらの世界のことを学んでもらったのだ。
ファミルの特技は、恐るべき身体能力だ。だから、超アスレチックレースに参加してもらう。その名も「ニンジャ」だ。最も忍者として相応しい人が優勝するという番組にファミルが最後の出場者として登場する。
ファミルが番組の最初に出てしまうと、その後に出場する人との調整ができない。ギリギリ一番になるためには、他の選手のタイムを知る必要がある。しかも真剣にやっているように見える必要がある。ファミルは手加減が苦手なようだから、ここはナンシーに頑張ってもらう。……いや、むしろ頑張らないようにしてもらう。
既に、ファミルの中にはナンシーがいて、いつでも代われる準備はできている。ナンシーがファミルの中に入ることに関しては、「こちらの世界では……きっとこれは普通のことなんだろうな……。まあ、大丈夫です」と僕の説明にファミルはブツブツ言っていた。誤解しているが、大きな問題はないだろう。
ナンシーとファミルの相性は甚だ良かった。最大の身体能力を必要とするような場合にはファミルが担当するしかないが、それ以外ではナンシーの方が良い結果が出せる。
今回の説明だが、まずはテレビ出場をかけた予選を行ってもらう。テレビ出演できるのは上位三十名。予選はテレビには放映されない。予選でトップの人が番組の最後の参加者を担当する。今日は、特別参加のファミルを番組のスタッフに紹介する。予選は2週間後。
ちょっとファミルの身体能力を見たいということで、いろいろな測定をした。垂直ジャンプは軽く飛んで三メートル。番組スタッフ仰天してるよ。……いやいや、駄目だから。そんなのテレビで放映できないから。ナンシー代わって下さい。そうそう。ではやり直し。一メートル。……まあ。そのぐらいだよな。大丈夫なのは。
それから、走り幅跳びとか、百メートル走とか、持久走とか、いろいろやった。世界記録出るぎりぎり一歩手前ぐらいの記録を出してもらった。流石ナンシー上手だね。
「お疲れさま。」
僕はファミルとナンシーに言った。一人に見えるが中には二人いる。今はナンシーからファミルに代わっている。リサも一緒にいて、ファミルの背中をポンポン叩き、頑張ったねと労った。ファミルは、「よくわからないけど、ナンシーに任せれば大丈夫。わからないことは全部ナンシーやってくれて安心」と言っている。既に、自分の中にナンシーがいることを受け入れている。
番組スタッフは、これだけの身体能力なら、出演は間違いないどころか、絶対優勝。むしろ、ほかの人との差があり過ぎて心配。だから、絶対に最後にしか出演させられない。と希望通りの話になっていた。
では2週間後に予選でまた。と思っていたら、予選は参加しなくてよい。むしろ出ないで下さいってなんで? 他の人が自信を失うから? 参加を辞退する人続出は困る? そうですか。その代りにいろいろ番組作成のための撮影があるからと、ファミルにはそちらをお願いされた。
番組スタッフの人にファミルの出身国を聞かれた。優勝者はファミルに既に決まっているので、早速優勝者用の普段の生活とか、放映の準備をするのだそうだ。ここはナンシーに任せよう。そのままナンシーの生きていた時の出身地とかいろいろ言ってもらった。テレビに映る時は常にナンシーでお願い!と僕は彼女に言った。
番組に必要な映像を撮り終えるまで、時間はさほどかからなかった。とてもスムーズに終わった。ナンシーのおかげだ。そのため、次はいきなり本番の日に行く。
それまで、ファミルはこの世界のことをナンシーと一緒に勉強だ。もちろんナンシーが先生だ。ナンシー任せた。テレビも勉強になるし、まあ大丈夫だろう。生放送ではないが番組放送まで二カ月あるし。




