<22> 青木探偵事務所で最高の人員大募集
リサの防具の準備が整うまでの間、僕は鏡を転移で運ぶためにのみ、異世界に行き最短時間で帰るようにしている。短い時間だからと安心すると命にかかわる。
倉庫で鏡と同じ重さの金をボックスに入れ、転移して日本に戻る。異世界にいる時間は三十分にも満たない。日本に戻ると、リサがジンと話をしていた。他には誰もいない。
すぐ人が来て金を運んでもらった。最近では、金を加工して宝飾品として売り出すところまで社内で行っているらしい。いくつもの会社を買収し、幅広く仕事をしていると聞く。大田副社長の部下はみな優秀である。
会社の収入は大幅に増え、自分が自由に使えるお金も数百億程度はある。青木探偵事務所に支払うお金の手配は、大田副社長に依頼した。優秀な部下たちが対応してくれるので、自分はほとんど何もすることがない。
青木探偵事務所では、テレビ局に人員募集を行うため特別番組を組むよう依頼した。毎回違う特技の持ち主を募集する。第一回目は、格闘技で勝負してもらい、優勝した人が一千万円。また、事務所で働いてくれるなら最低月々二百万円の給料を約束する。番組は五十回行い、そのテーマごとの優勝者に賞金と高給の仕事を約束する。
優勝者が働くのを辞退した場合には、賞金を受け取る権利を失う。これは番組の中で説明するので、働く意思のないものは、番組に出場しないと思われる。四十八週間に及ぶ番組で、全世界から青木探偵事務所で働く最高のスタッフを集める。海外からの募集に対しては、交通費と宿泊費を全額負担する。
霊が働くのに、体が優秀であれば、それだけ能力を発揮できる。残念ながら青木の体は優秀さという点では二流であった。より優秀な人材を得るために、視聴率を高くしたい。それで番組を面白くしてもらう必要がありテレビ局に払うお金も相場よりかなり高い。五十回の番組で百億円である。テレビ局に払うお金は必要経費ということで、僕が全部出す。
番組のコマーシャルは、青木探偵事務所と田中コーポレーションのみ。青木探偵事務所のCMは、『普通の依頼は受けません。他では解決できない問題のみ引き受けます。依頼料金は最低一億円から。解決率は100%。今すぐご相談を。お見積り無料。』などと、どこかで聞いたことのあるようなものだ。
田中コーポレーションのCMは、『最高の品質を求めて田中コーポレーションは金を追及し続けます。この美しさ。他では決して見ることはできません。』という高級感あふれるコマーシャルである。
とにかく、知力対決・体力対決・武力対決・マジック対決・料理対決……と様々な分野で毎回番組は行われる。第一回目は大募集という内容の番組で、四十八種類の募集について説明を行う。第二回目は、実際に優勝した場合の待遇について、田中コーポレーションが全面保障という内容。青木探偵事務所の仕事は、僕(田中社長)の趣味で行っているということになっている。第三回から、それぞれの分野で挑戦者が実際に対決して優勝者を決めるという内容となっている。
全世界には、それぞれの言語でインターネットで広告を出し、募集を行った。全世界から希望者が集まり番組の視聴率も二十四%以上と恐ろしく高視聴率となった。人気キャストを贅沢に使い、番組を面白くする工夫をしている。
こうして青木探偵事務所で働くスタッフは、徐々に優秀な社員が集まっている。お金があれば、大概なんとかなるものだ。週に一人ずつ増えていく社員に、まず霊の存在を受け入れてもらうための説明を松井さんに入っている霊が説明する。こうして週に一人ずつ説明をしていくと、先輩社員が後輩社員に対してフォローしてくれるので、それほど混乱なく受け入れられた。
悪霊の集団に対して、対抗勢力を確保できるまでにあと四十週間というところで、僕は異世界で死ぬかもしれない状況に遭遇する。リサが一緒でなかったら、間違いなく死んでいたのだ。




