<19> 青木探偵事務所で調査開始
田中太郎の依頼に対し、手がかりは皆無に等しい状況。しかも十五年前のことだ。この調査は、普通ならば絶対無理である。しかし、普通でなければ全く話が違ってくるのは当然である。松井香織の中にいる霊で霊視能力が高いキャサリンが確認する。
「落ちた場所はここ。あの崖の上で落とされた。崖の上にはガードレールがあり、誤って落ちることはありえない。このガードレールは十五年前から同じ物が使われており、事故として扱ったのは不自然。普通に調べてわかるのはここまで。
では、霊視して、当時の状況を確認。
同級生の男の子の黒川徹が白神響子を落としたように見える。さらに集中して確認する。すると黒川徹の中に悪霊が入り黒川の意識を奪って白神を落としたのが見えた。
あの悪霊は、白神の先祖に恨みを持って死んだものだ。七代前の先祖に恨みがある。白神は、元々十二歳で死ぬ予定だったが、本来であればあの二日後が死期だったのだ。なので、あえて死ぬ二日前にあえて殺した。」
それに対して、青木の中にいる霊のカイトが分析する。
「ふむ。つまり、寿命を待たずに殺す必要があったということですね。どうして殺す必要があったのか。あと二日待てば勝手に死ぬことは知っていたはず。ここから先は、このような事件の専門家のレイガに調査してもらいましょう」
そう言って、カイトはレイガに調査を依頼した。数日後、レイガがカイトに報告に来た。
『俺が潜入して仕入れた情報によればかなりヤバい事件だよ。だって黒川徹の中に入っている霊は、大規模な悪霊の集団の一人によって唆されて行動していたからね。これ以上あの組織に首を突っ込んで痛い目を見るのはごめんだぜ。まあ、こっちにも仲間にいるから、そんときゃ何とかなるかな。』
カイトは考えた。調査をこれ以上行おうとすると、相手に気づかれてしまう恐れがある。霊のマフィアと現時点で戦っても、受けるダメージが大きすぎて割に合わない。この件についてこれ以上調査が必要かどうか、田中太郎に相談しよう。
悪霊は、普通であれば個別に恨みの相手に憑くもので、決して集団行動をするものではない。このような事件は初めてである。今まで対応してきた事件はせいぜい少数の悪霊の仕業だったから、問題なく対処できていた。しかし、組織的な集団を相手にするとなると、リスクが桁違いだ。
「もし、この件に本気で対応することになったら、必要経費として彼から五十億円は貰わないといけませんね。」
カイトは、そう呟いたのだった。




