第一話 古代都市『キリン』が活動を始めた
「ジロー様、古代都市キリンの温度が上がっています。近々活動を開始するかもしれません」
ここは、ハナと呼ばれる星。そして、8代目の魔女ジローは、今日も家の前の花壇でせっせと草取りをしている。うーんと背伸びをしながら、メイドのナズナから報告を聞いた。
魔女ジローの家は、大きな大陸の南西にある。
その家は、外から見ると草原の中にある茅葺の小さな家である。確かに、子供の絵本に出てくる”魔女の家”そのものに見える。
家の周りには木の柵が巡らされており、動物や人が容易に侵入しないようになっている。家は南向きに立っており、日当たりの良い花壇が花盛りだ。後方300メータほどに森がせまっている。その森の奥には高い山々が広がっている。東は1キロ先に川があって、その先も森である。西側は地平線まで草原が続いている。南側は緩やかな傾斜が2Kmほど続いて、その先が村のようで家と農地が見える。
古代都市キリンは、この魔女の家から北へ30000キロメートルほど離れところにある。この世界の移動手段である馬車だと一日80キロメートルとして、およそ400日かかる。遠いところだ。
さらに古代都市キリンの北には2000キロメートルの砂漠が続いて、海に至る。
まあ、不毛の地に古代都市キリンがある。
都市キリンはおよそ5万年前まで繁栄していたらしい。でも今では、ほとんどが崩れて瓦礫と砂の山になっている。さらに周りには草木が皆無で、生物の息遣いが感じ取れない荒野である。
そう、雲も雨もこの地域を避けて通る。
そんなキリンが時に活動することがある。なぜに?
魔女ジローは、モニター室でキリンの様子を見ている。
『黒い膜』は幾多の星と古代都市キリンを結ぶゲートである。
およそ120年周期で、不特定の惑星に転移ゲートを開く。開く先はその都度異なるが、文明がレベル5以上の星を選んでいるようだ。そこには何か目的があるように思う。
古代都市キリンには人は住んでいない。誰もいない都市から、なぜゲートが活性化するのか、それはわからない。誰が何の目的で起動しているのかわからない。わかっているのは、そのゲートから受け入れた人々は、この星に点在する神殿に現れることだ。
古い文献を紐解くと、この星は神崎元が開拓するまで誰も住んでいなかった。人はいなかった。
開拓が進み考古学者も現れて調査の結果、この古代都市は3万年ほど前に滅んだらしい。というか、多くの人が都市から出ていってしまったらしい。この都市に残っている古い機構が、たまに起動してゲートを開き人種を受け入れてきたようだ。
一説には、再び主人である人々が満ちることを夢見た都市の機構が、ゲートを活性化しているのでは、と言われている。
確かに、このゲートから幾度も人が転移してきた。
魔女の家では、このゲートから移ってくる人々を世話している。
そのころ、地球ではなぞの『黒い膜』が空で発見された。
キリンから発した腕が亜空間を経て、今回は初代魔女ハナの故郷である『地球』につながった。そして、受け入れのゲートは32番ゲートのようだ。
新しい魂が手に入るよ。とジローがニンマリした。
早速、転移者対策会議を開いた。
ここは、8代目の魔女ジローが管理する、惑星ハナ。通常「魔女の星」とも呼ばれる。
魔女の家にある、会議室で主要メンバーが席についている。
「お久しぶりです。ジロー様。パラレルワールド管理局のガウンズと申します。お招きありがとうございます」
「同じ管理局、ゲート係りのアンズと申します」
「行政官のヨハネ・サハラ・カガクです。よろしくお願いします」
パラレルワールド管理局の力も借りて、惑星ハナは宇宙の各所から魂を受け入れている。それは、惑星ハナの発展のためである。人口の許容量は、およそ1億人で、現在はおよそ1500万人である。星が生産できる魂の数は年間30万人。単純に300年以上かかる。
今回、古代都市キリンのゲートが120年ぶりに稼働したことによって、何人増えるのだろうか?
楽しみだ。できれば奇麗な魂が欲しい。




