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幸運の転生者がのんびり異世界を救います~悪人に不運をプレゼント。ぽっちゃりですが三人の王女に溺愛されています~  作者: ゲンタ


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101/117

第101話 貴族制度廃止が、気に入らなかったらしい

戦いが終わると、次は後始末のフェーズになる。


裏切り貴族同盟に参加した貴族の当主とその一族、兵を指揮した将、騎士たちが捕縛され、続々とセラフィナ城に集められていった。


彼らをどう処分するか――。

問答無用で全員死刑というわけにはいかない。アーサー王国は法治国家だ。


一人ひとりの罪状をまとめ、審問し、法に基づいて量刑を決めていかなければならない。しかし、人数が人数だけに、膨大な作業になる。


だが今の俺には、それに割ける時間がない。

旧ヴァルド辺境伯の城の強化に、防衛体制の構築。ノルド王国への備えを急いで整えなければならない。


(申し訳ないが、父に頼むしかない)


「急いでノルド王国への備えを整えないといけません。内乱の後始末をお願いできますか」


「ケイス、お前な……」

父の声は低かった。だが顔は、どこか楽しげだった。


しばらく沈黙が続いた。


「……わかった。しかたないだろうな」


「よろしくお願いします」

(父上、本当に申し訳ない)


***


セラフィナ城の一室で、父・ロイは捕縛された上位の貴族たちの事情聴取を担当していた。


身分の高い者から順番に呼び出し、一人ひとりと向き合った。

最初に呼ばれた侯爵が、椅子に腰を下ろすなり口を開いた。

すでに覚悟を決めている顔つきだ。


「謀反を起こしたからには、処罰を免れようとは思っていない。死刑でもなんでもすればいい。だが、最後にあなたに聞いておきたいことがある」


父が静かに促す。

「どうぞ」


「なぜ、貴族制度を廃止したのだ! 我々が謀反を起こしたのは、それが理由だ。当然のことではないか」


父は表情を変えなかった。

「先を続けてください」


「貴族とは、建国の時から代々その土地を治め、民を守り、王に仕えてきた者たちだ。その権利を一方的に奪うとは、どういうことか。あなたも、アーサー王も、貴族の苦労などわからないのだろ」


「わかりますよ」

父が静かに答えた。


「私もかつては、貧しい下級貴族でしたので」


侯爵がわずかに眉を動かした。

「ならば、わかるはずだ。長年、土地を治め、民を守ってきた貴族の誇りというものが」


「わかります。だからこそ、申し上げる」


父の目が、静かに侯爵を見据えた。

「今、民を守ってきたとおっしゃいました。では伺います。あなたに守られてきた領民は、幸せでしたか」


侯爵が黙った。


「貴族制度を廃止したのは、民を幸せにするためです。アーサー王国では、能力のある者が適切な役職につき、民を守り、幸せにする。それだけのことです」


「貴族制度とは、先祖から積み上げてきた決まり事だぞ。それを一方的に壊すというのがどういうことか、わかっているのか。領民とは、貴族のために働くものだろう」


「違います」

父が静かに言った。


「貴族は、領地を豊かにし、民を幸せにした対価として、初めて税をいただける。領民は奴隷ではない。あなたはこれまでに、領民のために何をしてきましたか」


「貴族がそんなことまでする必要はない。我らは選ばれた人間だ。選ばれなかった人間が、我らのために尽くすのは当然ではないか」


「だから、貴族制度を廃止したのです」


侯爵が顔を上げた。


「誤解されているかもしれませんが、いきなり全員を追い出すわけではありません。そのように通達したはずです」


父は続けた。


「現在の領主はそのまま職務を続けられる。ただし、子弟が無条件に領主の地位を相続することはできない。国の審査を受け、領民を治める能力があると認められれば、引き継ぐことができる。それだけのことです」


侯爵の表情が、わずかに変わった。


「……確かに、そういう通達であったな」


「判断基準は一つです。領地を適切に治め、領民の生活を豊かにできるか。領民思いの者ならば、相続できます」


侯爵はしばらく黙っていた。


「そのような審査……結局、国が都合よく決めるだけではないか」


「そう思われる方が多いのは承知しています」


父は静かに続けた。


「ですが考えてみてください。賄賂の額で相続が決まるなら、それは今までと何も変わらない。アーサー王国は、そうはしません」


侯爵が何か言おうとして、口を閉じた。


「法に基づき、公正に審査する。それだけです。信じていただけるかどうかは、これからの我々が証明していくことになります」


決意を込めた言葉に、深い沈黙が落ちた。


しばらくして、父が静かに言葉を続けた。


「貴族制度の話はここまでにしましょう。もう一つ、確認しなければならないことがあります」


侯爵の目が、わずかに揺れた。


「あなたはノルド王国と手を組み、謀反を起こした。その戦いに、あなたの領民を駆り出しました」


侯爵の顔が、かすかに歪んだ。


「領民は兵として、貴族のために戦う。そういう決まりだ」


「では伺います」

父の声は、変わらず静かだった。


「その戦いは、民のための戦いでしたか。そして民を戦場に送り出したあなたは、その先頭に立ちましたか。盾となりましたか」


侯爵が黙った。


「アーサー王国は、民を守るための戦いはします。しかし、誰かの権力や特権を守るための戦いに、民を巻き込みません。それが、私たちとあなたたちの違いです」


部屋に、深い沈黙が落ちた。


***


翌日は、別の貴族の事情聴取を行った。

椅子に腰を下ろした子爵は、部屋を見渡しながら鼻を鳴らした。


「ロイ、偉くなったものだな」


父は静かに書類を手に取った。

「お久しぶりです、ドラスト子爵」


「子爵? 今はただの捕縛された貴族だがな」


子爵が、にやりと笑った。


「昔はうちの領地の隣のラゼル村の、しがない男爵だったよな。俺が呼んでやらなければ、どこの晩餐会にも呼ばれない貧乏男爵だったからな。それでも気を使って呼んでやってたんだぞ。わかってるか?」


「覚えていますよ」

ロイの表情は変わらなかった。


「おお、わかってるんだ。まあ当然だよな。晩餐会に呼んでやったのに貧乏くさい服を着てたしな。あれは笑えたぞ。息子はデブだし、見ていて哀れだった。なー、晩餐会に呼んでやってたことに、恩義は感じないのか?」


父は静かにペンを走らせ続けた。


「だからな……ロイよ……私をさっさと釈放してくれないか。世話になったのを忘れてないだろ? こんな審問なんて、時間の無駄じゃないか。どうせ全員釈放するんだろ? みんなそう言ってるぞ」


「罪状の確認は無駄ではありません」


「大げさなことを言うなよ。ノルド王国と少し話をしただけだろうが。それの何が悪い」


「謀反の共謀です」


「謀反とは大げさな。あのデブ王が貴族制度を廃止するから悪いのだ。文句があって当然じゃないか。それにな、昔から貴族の処罰なんてのは、なあなあでやってきたろ。いくら出せばいいんだ?」


父は書類から目を上げた。

「続けてください」


「続けてって……釈放してくれればそれで終わりだろう。なあ、ロイ。昔からの付き合いじゃないか。うちの娘を、お前の息子に嫁にやってもいいぞ。どうだ、悪い話じゃないだろう」


父がペンを置いた。

「ドラスト子爵」


「なんだ」


「息子にはすでに四人の妻がおります」


「な……四人?!」


「王女が三人と、総督の娘が一人です」


ドラスト子爵が、しばらく言葉を失った。


「だ、だからなんだ」


「それと」

父が静かに続けた。


「息子を"デブ"と呼ばれましたが、その息子はアーサー王国の国王です。不敬罪も罪状に加えさせていただきます」


ドラスト子爵の顔が、みるみる赤くなった。

「ぐ……」


「罪状の確認に戻ります。ノルド王国との接触について、詳しく教えてください」


その後もしばらく、ドラスト子爵の口は止まらなかった。

釈放を求め、縁談を持ちかけ、昔の付き合いを持ち出し、泣き落としまで試みた。


父は一度も表情を変えることなく、すべてを書類に記録し続けた。


部屋を出るとき、子爵の背中はすっかり小さくなっていた。



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