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モラハラ婚約者があまりにも酷いので、やり返すことにした【連載版】  作者: セトガワ トウ


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21/25

21話 犯人はやっぱりアイツでした

「どこで食べてもカップ麺は美味しいなぁ!」


 真っ暗闇の店舗の中には、フィロー様が食べているカップ麺の匂いが充満している。

 

「こんな暗闇の中で、熱いもの食べたら危険ですよ」

「安心して、リナリー。僕には世界が明るく見えているんだ」

 

 麺を上品に啜りながら、フィロー様は言った。

 眼力系の魔法によって夜目を効かせられるのだろう。

 

「敵が来ても僕に任せて。命に代えてもリナリーを傷つけさせたりしないよ」

「そこはご自分の命を優先してください!」

 

 私がいなくなっても変なやつが消えたなーで済むけど、有望な王子が亡くなったら国の損失に繋がる。

 彼はポジティブなところがあり、襲撃も全然心配していないようだった。

 私としては正直焦りがあるけど、ここはフィロー様の実力を信じることに決めた。


「それより、リナリーも座って話そうよ」

「そうですね――ファッ!?」

 

 立ち上がって歩いた途端、椅子に足を引っかけて転びそうになる。

 真っ暗闇にまだ目が慣れてないためだ。


「おっと」

 

 フィロー様が咄嗟に支えてくれたおかげで地面に顔を打ちつけずに済んだ。


「お怪我はありませんか、フォルジアお嬢様」

「あ、ありがとう、ございますっ」


 見えないけど、多分イケメンスマイルをしているんじゃないかな。

 ドキドキしまくる胸を押さえながら、私は深呼吸をして落ち着く。

 まずは、視界をなんとかしよう。

 店舗に人がいるとバレてはいけないので、明かりはつけられない。

 そこで思いついたのが暗視ゴーグルだった。

 3万Pくらいで買えるコスパの良い物を手に入れたので、早速試してみよう。


「また不思議な物を出したね」

「はい。暗闇でも見えやすくなる道具なんです」

「へぇ。君はやっぱり不思議だなぁ」

 

 フィロー様が感心するように小さくため息をついた。

 デジタル暗視ゴーグルを覗いて私は感動する。

 白黒ではあるけれど、ちゃんと物が見えるようになったからだ。

 ベルトで固定して、両手も使えるようにした。

 右向いたり左向いたりしていると、フィロー様が少し後ずさりする。


「……ちょっと怖いね。不審者的な」

「わかります……」

 

 フォロー様には完璧に見えているわけだしね。

 ただ、ここは恥よりも利便性を重視する。

 そこから数時間、フィロー様と楽しくお話をした。

 彼は話題が豊富で、しかもユーモアセンスもあるので馬鹿笑いしてしまう。

 だがそんな和んだ空気も一瞬で変わった。


「――シッ。誰かいる」

 

 先に気づいたのはフォロー様だった。

 何人かの足音が、建物のすぐ近くでした。

 ガチャガチャとドアを開けようとする音がするが、鍵が閉まっているので当然開かない。

「鍵は閉まってるな。今日は、中も荒らすか?」

「ああ。だがまずは、庭にアレをぶち撒いてからだ」

「わかった」

 

 そんな会話をして、足音が遠くなっていく。

 間違いなく、昨夜嫌がらせしてきた人たちだろう。

 フィロー様が私の肩に優しく手をおく。


「君はここにいて。僕が倒してくる」

「ダメです。私もいきます」

「でも、相手は武器があるかもしれない」

「私にもあります。これを吹きかけます」

 

 そう言って出したのは熊スプレーだ。

 アルミラの山にいるときに購入したのだが、結局使わずじまいだったもの。

 使い方は理解しているので、今日こそ封印を解くべきじゃないかな。

 

「わかった。あまり僕から離れないように」

「そうします」

 

 私たちは顔を見合わせ、ほぼ同時にうなずいてから音が出ないように鍵を開けた。

 敵が逃げないように、忍び足で建物から出ていく。

 庭に明かりは全くない。

 敵も目撃されるのを恐れてか、暗闇の中で作業しているようだ。

 庭には大きめの段ボールくらいのサイズの木箱が何個も置いてあった。

 あの中に腐ったものなどが入っているらしい。

 四人で木箱を開け、中の物を庭にばら撒こうとしている。

 私たちはこっそり敵に近づいて不意打ちするつもりだったけど、気づかれた。


「おいお前ら。誰かいるぞ、気配がする」

「なに!?」

 

 鞘から剣を抜く音が一斉にした。

 敵は目が慣れているようで、私たちに完全に視線を合わせてきた。


「なんか、変な格好した奴がいるな」

 

 私のゴーグル装着姿を見ての感想だ。

 変で悪かったね。

 ちなみに四人とも中年男性で、ヒゲをはやしている。


「君たちか。昨夜もここで嫌がらせをしたのは」

 

 フィロー様がスマートに剣を抜き、私を守るように前に立った。


「あ~……建物の中に隠れてやがったのか。だがオーナーは女。そっちのが用心棒を雇ったのか」

「チッ。暗いし逃げるか?」


 相手は顔を隠したりはしていない。

 私やフィロー様が目が利くと知らないので、逃げても顔が割れないと踏んでいるのだろう。

「……いや、痛めつけてからだ。襲われた戦闘代と返り討ち料を上乗せできる」

「クク、いいなそれ」

 

 悪どいなぁ……。

 ブスマン家が損する分には全然いいんのだが、さすがに簡単にやられてやるわけにはいかない。


「見ればわかる。お前まだ若いが、かなり強い。――だろッ!」

 

 隠し持っていたナイフをフィロー様の足下に素早く投げつけた。

 機敏に反応して、フィロー様は横に飛んだ。

 当然、食らわなかったけれど、動いたところを三人に囲まれてしまう。

 

「そっちの女はお前がやれ。こいつは三人でやるぞ」

「了解」

 

 四人のうち三人がフィロー様を囲んだ。

 一番小さくて細くて弱そうな人が、ニタニタと下卑た笑みを浮かべながら私の前にきた。

「オーナーに傷をつけるなとは言われててねぇ。お嬢さんが変な真似しなければ、怪我はしないよ」

 

 脅かすように、男は剣を二、三度剣を振ってみせた。


「誰に頼まれたんですか?」

「言えないねぇ。おじちゃんたち、口が固いからさぁ。君もこんなとこで商売するのやめなよ。そしたら怖い目にも遭わずに済む」


 このおじさんの余裕は絶対的な自信からくるものだろう。

 実際、剣で戦ったら私に勝ち目なんてないと思う。

 けど私が持つのは剣じゃなくて、熊にも通じるスプレーなんだよね。

 じりじりと距離を詰め、私は練習した通りにピンを抜いてスプレーを噴射した。

 唐辛子成分入りの霧が直線的に伸びていき、男の顔面に直撃する。

 

「うぎゃぁ!?」

 

 今夜は風もなく、かなり綺麗に決まった。

 

「なっ、なんだこれ!? 焼け、焼けるぅぅうう――」

 

 焼けるような激痛ってのは本当なんだ……。

 おじさんが剣も手放して痛がっている様子を目にすると、私は死んでも食らいたくないと思った。

 いまのうちに地面から剣を拾っておく。

 そうだ、あっちはどうなったの!


「フィロー様ッ! ご無事……です……ね?」

 

 すでに、あちらは決着がついていた。

 三人が地面に倒れ、フォロー様が剣を鞘に収めるところだった。

 どんな戦い方をしたら、そうなるんですか……。

 見逃してしまった私に、フィロー様がおもむろに近づいてくる。


「その武器、本当にすごいね。一撃じゃないか」

「見ていたんですか?」

「もちろん。リナリーが危なかったら、そっちを優先するつもりだったし」

 

 彼はどれだけ余裕だったのだろう。

 私のことをチェックしつつ、三人を軽く倒してしまうなんて。

 やられた三人は体格も良くて、かなり手練れ感あったのに。

 とにかく、熊スプレーと王子無双のおかげで難を逃れた。

 

「しまった。縄を持ってきてなかったな」

「私、いいのがあります。ただ、動いている人は……」

 

 カプサイシンの痛みに暴れ回っているおじさんは、私にはどうやっても無理だ。

 

「僕がやるよ」

 

 フィロー様は静かに近づくと、おじさんの首に手で軽く一撃入れた。

 眠るように倒れたおじさんにビビりつつ、私は業務用の結束バンドで捕縛する。

 手首を後ろに回して、そこをしっかりと締める。

 足首の方もやっておいた。

 四人の拘束が終わると、フィロー様が彼らを一人ずつ肩に担ぐ。


「外だと人が来るし、中に入ろう」

「え、ええ……」

 

 それはありがたいけど、その剛力ぶりに舌を巻いた。

 温和で優しい系なのに、実はかなり戦闘タイプなのだろうか?

 意外なギャップに驚いてしまう。

 店舗内に入って少しすると一人が目を覚まし、状況を理解して下唇を噛んだ。


「マジかよ……最悪だぜ……」

「それで、君たちは誰に頼まれたのかな?」

「さあな」

「じゃあ、斬るしかないな」

 

 フィロー様が剣を抜くが、男は意外にも肝が据わっていて怯える様子を見せない。


「ハッ、無理だね。お前は強いが、こういう状況で人を殺せるタイプじゃない。わかるんだよ」 

 

 しばらく二人は見つめ合っていたが、意外にもフィロー様が剣を収めてしまった。

 そして私のところに来て、こっそり話す。


「彼の言うとおりで、ここで殺したりはできない」

「……そうですよね。私も拷問とか、経験がなくて」

「僕もないんだ。あまり好きでもないし」

「それなら、こうしません?」

 

 男に聞こえないように耳元で作戦を伝える。

 フォロー様が乗ってくれたので、早速私たちは行動に移る。

 まずは男にフィロー様を見るように促し、それから問う。


「この方を見て、なにか気づくことはありません?」

「あ? ただの顔の良いガキだろ。俺、女にモテる男は嫌いだからな」

「で、殿下にそんな口を利くのは……」

 

 私が動揺した演技をしつつ、殿下と口にすると男の眉がピクリと動いた。


「……嘘つけよ。なんで殿下が、こんなとこにいんだよ?」

「私は聖ロマーリオ学院の生徒で、彼もまたそうだからです」

「第三王子のフィローだ。以後、お見知りおきを」

 

 胸に手を当て丁寧に挨拶をした後、フォロー様は王家の刻印がされたハンカチを取り出して彼に見せる。

 それを見た男の顔は蒼白になっていく。

 なんでこの作戦にしたかというと、男はかなり鋭いからだ。

 さっき、フィロー様の演技をすぐに見破ってしまった。

 逆にその高い洞察力は今回のやり取りにも発揮されたので、彼はひどく焦っている。

 嘘がないことをちゃんと見抜いてくれて助かるね。


「なんてことだよ……畜生……」

「まだ悲しむのは早いですよ。殿下は、お心がとても広い方ですから」

「た、助けてくれるのか……!?」

「君がすべてを洗いざらい吐いて、今後二度とこの店に嫌がらせをしないと誓ったら、許そう」 

 

 これを聞いた男が迷っていた時間は、わずか三秒ほどだった。


「全部話す。なにもかも!」

「少し待ってください」

 

 私はボイスレコーダーを取り出して、録音スイッチをオンにした。


「どうぞ」

「……俺たちは高額な依頼を受けて、頼まれただけなんだ。――ブスマン伯爵家に」


 やっぱり、犯人はアレジオだったね。


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