18話 イケメンすぎる王子
お店を持ちたい!
そんな夢を抱いた私は、王都の中を探索する。
意外と空き店舗はあり、借り手募集の貼り紙もあった。
この辺は日本とも似ている。
募集元の不動産屋に足を運んで、話を聞いてみる。
中心部は高いけど、少し外れた場所なら月額数十万から借りられるらしい。
でも私が借りたいのは、テラスのある広めの空間。
面積が広いので約100万リルだ。
経済的にはいけるけど、問題は私の信用がないこと。
店主のおじさんが鼻をほじりながら言う。
「お嬢ちゃん、学生だろぉ? 借りてなにすんの?」
「まずは飲食店を始めたいんです」
「飲食店〜? 彼氏とイチャイチャしたいだけじゃないのぉ? ぶははは!」
超絶馬鹿にしてくるじゃん。
我慢して真面目に返答するが、おじさんは最初から相手にする気はなかった。
「あと五年したら、もう一度話を聞くよ。ほら、帰った帰った」
とまぁ、こんな感じで追い返されるわけでして。
借りるにも、万が一の時に支払い能力のある保証人が必要らしい。
つまりお父様では……無理だ。
「お金はあるんだけどなぁ」
ボヤきながら歩いていると、反対側にやたらスタイルの良い男性を見つける。
帽子を被っているので勘違いかもしれないが、凜とした姿勢には見覚えがある。
「フィロー様……?」
庶民っぽい格好をしていてもオーラまでは隠せない感がある。
両手に大きな袋を持って、急いでいるようだ。
急いで追いかけ、声をかけてみる。
「あの〜」
振り向いた彼を見て、フィロー様だと確信した。
「リナリー!?」
あちらも突然の出会いに驚いている。
「いま、たまたま見かけまして」
「ああ、ちょっと行くところがあってね。……そうだ、もし時間あるなら付き合ってくれないか?」
「ちょうど暇だったんです!」
こんなイケメンの隣を歩けるってことですよね?
全然ついていきます!
軽やかステップで彼の少し後ろにつき、一緒に歩く。
「……リナリー? どうして少し後ろを歩くんだい?」
おっと、いつもの癖で自然と下がっていた。
「あぁ、アレジオ様のときはいつもこうなもので」
「君の前で言うのは失礼だけど彼は少し苦手だよ……」
わかります。
フィロー様の感覚はいたって正常です。
「借金の事情で、婚約させられたと聞いているよ。だから君は、商売に精を出しているのかな?」
「……とにかく借金を返したくて。いまもお店を開きたくて空き店舗を探してたのですが……」
信用のない十六歳には、なかなか不動産屋も貸してくれないこと。
また女性ということで、だいぶ舐められがちなところもある。
その辺の相談をすると、フィロー様が神様のような提案をしてくれる。
「お金はあるんだろう? それなら僕が保証人になってあげようか」
「い、いいんですか!?」
「うん。こっちの用事を終えたら、一緒に不動産屋に行こう」
「そういえば、なんの用事なんでしょう?」
私が尋ねると、フィロー様は爽やかスマイルを浮かべて、前方の建物に視線を送った。
住宅街の隅っこにある、あまり小綺麗とはいえない家があった。
『児童養護施設・希望の花々』
少し大きめの庭の隅には、そう書かれた看板が立てられていた。
外で遊んでいた十人くらいの児童たちが、フィロー様を見つけるなり、満面の笑みで駆け寄ってきた。
「フィー兄ちゃんだッ!」
「フィーにいちゃーん!」
あっという間に、児童たちに囲まれるフィロー様。
子供たちにも大人気らしい。
「フィー兄ちゃん?」
私が首を傾げると、彼は鼻に人差し指を当てて話す。
「身分は隠してるんだ。騒ぎになりやすいしね」
そういうことかー。
手に持っていた袋の中には、大量の食べ物が入っている。
きっと、気の良い兄さんを演じて、彼らに差し入れしていたのだろう。
「みんな、美味しいパンと肉を買ってきたよ。僕がご飯を作ってあげるよ」
「やったぁ!」
子供たちの弾けるような笑顔が眩しい。
「私にも手伝わせてください」
「うん、一緒に作ろう!」
私たちは手分けして、料理を作っていくことにした。
料理と言っても焼いた肉と野菜を使ったサンドウィッチだ。
お手軽にできて美味しいよね。
子供たちに振る舞うと、みんな大喜びだった。
「美味しいっ! ありがとねフィー兄ちゃん! あと……」
「リナリーだよ」
「リナリー姉ちゃんも!」
「まだあるから、いっぱい食べてね」
「うん、ありがとう!」
チャリーン♪
感謝ポイント 1200P
1500P
1400P
……
……
……
え、すごい。
この場にいる十人以上の子供たちからポイントがどんどん入ってくる。
しかも、数字も大きめで、合計で約15000Pもいただいた。
サンドウィッチ一つでこんなに喜んでくれるんだ。
経済的に厳しそうなのも、関係しているのかな。
料理を食べ終わると、しばらく庭で一緒に遊んであげる。
私は子供好きなので、普通に楽しかった。
フィロー様がパン、と手を叩いて児童たちの注目を集める。
「それじゃ、僕らはそろそろ帰るよ」
「え〜、もう帰っちゃうの〜」
「また近いうちに来るよ。行こうか、リナリー」
「はい。みんな、またね」
「「「またきてね〜!」」」
大きな声を揃える児童たちが可愛すぎて顔がほころぶ。
この癒やしの空間……最高だよ。
手を振ってバイバイしてから、私はフィロー様に尊敬の眼差しを送る。
「素敵な活動ですね! 陰ながら支援なんて」
「王都の未来を担う子供たちだからね。せめてご飯くらい、満足に食べさせたい」
おそらく現在、国の支援は薄いのだろう。
だからこそ、フィロー様は個人的に動いているんだ。
顔だけじゃなく心までイケメンだなんて。
「それより、次はリナリーの件だね」
「はい!」
さっき追い出された不動産屋に戻ると、店主のおじさんがすごく嫌そうな顔をする。
また来たのかよ、って顔だ。
「お嬢さん、まだ五年経ってないよ」
「保証人を連れてきました」
「……彼氏の間違いじゃないの?」
「失礼。僕は第三王子のフィローと言います」
フィロー様はスッと入ってきて、超強力ワードをいきなりぶつける。
第三王子という言葉に目が点になった店主だが、すぐに警戒し出す。
それを見越したように、フィロー様は王家の紋章が入ったハンカチを出す。
私がもらったものより、もっと高級そうな逸品だ。
「調べても?」
「どうぞ」
店主はハンカチを入念に調べて、すぐに激しく動揺し出す。
「本物だと……!? それじゃ本当に!?」
「あとで、正式に身分を証明します。それより、店舗を借りるのに、僕が保証人でいいですか」
「もも、もちろんですぅ!」
急に手をもみこんで、店主はごまをすり始めた。
おじさんの小物感……半端じゃない。
ただ物件は優良なので、狙っていたお店で契約を進める。
話は驚くほど簡単にまとまった。
「週末までにお金を入れてくれたら、来週から好きに使って大丈夫ですよ」
店主はニコニコ顔で店の外まで見送りに来てくれた。
とにかく王子とのコネを作りたくて仕方ない様子だった。
「その場所、僕も一度見てみたいな」
「案内します」
借りる予定の場所まで、フィロー様を連れていく。
それは商業区の外れにあった。
立地は悪いけれど店舗が大きめなのと、土地がだいぶ広めだ。
草が生えっぱなしなので、来週は草むしりからだね。
「だいぶ広いね。なにか狙いはあるの?」
フィロー様の疑問は当然だ。
普通はこぢんまりとしたところから始め、人気が出たら大きな土地に移るのがセオリー。
「とにかく土地に余裕が欲しかったんです。常連予定のお客の体が大きいもので」
「もう常連予定がいるのはすごい! リナリーのことだし、勝算もあるんだろうね」
「実は、結構自信あります」
飲食店の経営は厳しい。
それは異世界でも同じ。
でももし、私の『友達』が店の前で美味しそうに料理を食べていたら?
注目度は王都一になるだろう。
「お店の名前、もう決まってるの?」
「ダークドラゴンが立ち寄る料理店、です」
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