ダイーザの性格
「俺はちょっとパーティのメンバーを呼んでくる。せいぜい後悔の涙でも流す準備でもしとくんだな!」
ダイーザはそう言い残し、取り巻きの冒険者たちと供に冒険者ギルドを飛び出していった。
その場に残されたイザヨイたち四人の間には、どんよりとした重い沈黙が降りていた。
ボルグは腕を組んで目を閉じ、シエルは不機嫌そうに杖の先で床を小突き、クローザーは前髪の奥で静かに息を潜めている。
その重苦しい空気を破ったのは、事情を全く知らないイザヨイの無邪気な声だった。
「あの、ボルグさん。ダイーザさんって、元のお仲間なんですよね? どうしてあんなに仲が悪いんですか?」
「……あいつの話は、あまり思い出したくもねぇんだがな」
ボルグが苦々しい顔で口を開く。
「あいつは、昔から本当に手癖と女癖が悪くてな。ギルドでも酒場でも、少しでも綺麗な女がいればすぐナンパしやがる。無駄に顔の造作は良いから、引っかかる女も多くて……その度にトラブルを起こして、俺たちが頭を下げる羽目になってたんだ」
「そうよ! 私だってパーティを組んだ初日に『シエルちゃん、俺と今夜、二人だけの秘密の依頼に出かけない?』とか言われたのよ! 即座に杖でぶっ飛ばしてやったけど!」
シエルが思い出したように顔を真っ赤にして怒る。
「……それだけではない」
クローザーが静かに言葉を継ぐ。
「討伐の時も最悪だった。『血が飛ぶと服が汚れる』『臭いがつくと女にモテなくなる』とか言って、魔物の解体や泥臭い作業は全て俺とボルグに押し付けていたんだ。戦利品の分配だけはいっちょ前に要求してきてな」
「うわぁ……」
イザヨイは顔を引き攣らせた。
(うわ、マジで典型的な『ネトゲの地雷プレイヤー(性格最悪の俺TUEEE系)』じゃん。どこに行ってもああいうクズは絶滅しないのか……)
しかしイザヨイが疑問に思う。
「なんでそんな酷い人と、一緒にパーティを組んでたんですか?」
その問いに、ボルグはさらに深く渋い顔をした。
「……あいつ、性格は腐りきってるが、腕だけは確かだったんだよ」
「腕だけは?」
「ああ。あいつの双剣の扱いは冗談抜きで天才的だ。風のように動き回り、急所を的確に刻んでいく。Bランクの魔物なんて、あいつ一人で簡単に片付けちまうくらいにはな。……おそらく、純粋な戦闘スキルだけなら、俺たちの中でも頭一つ抜けて、Aランクに近い実力を持ってたはずだ」
だからこそ、ボルグたちはダイーザの素行の悪さに目を瞑り、我慢して共に戦っていたのだ。
だが、当然そんな関係が長続きするはずもなく、ある時限界を迎えたボルグが、激しい口論の末にダイーザをパーティから叩き出したのだという。
「……なるほど。そういうことだったんですね」
イザヨイは深く頷きながら、改めて決意した。
(あんな性格地雷のチャラ男のパーティに入れられるなんて、絶対にお断りだ。今回はボルグさんたちに任せるって約束したけど、危なくなったら容赦なく魔法ぶっぱなしてやる)
四人が暗い話題で顔を突き合わせていると、ギルドの入り口の扉が勢いよく開いた。
「お待たせ! 俺の可愛いエンジェルたちを連れてきたぜ!」
ダイーザの声と共に現れたのは……彼の後ろにピッタリと寄り添う、三人の女性冒険者たちだった。
一人は露出の高い軽鎧を着た盗賊風。
もう一人は魔法使いのローブ。
そして最後の一人は派手な化粧をした僧侶風。
どの子も確かに容姿は整っているが、ダイーザに腕を絡ませ、どこか彼に依存しているような、独特の甘い空気を漂わせている。
「紹介しよう! この子たちが俺の愛するパーティメンバーであり、俺の最高の『彼女』たちだ! さあハニーたち、あそこの鈍亀どもに、俺たちの機動力を見せつけてやろうぜ!」
ダイーザが三人の女性の腰を抱き寄せながら、勝ち誇ったように宣言した。
「「「キャーッ、ダイーザ様かっこいー!」」」
女性たちが黄色い声を上げる。
その光景を目の当たりにしたボルグたち四人は。
「…………はぁ」
「……また女で固めたのね、あいつ。進歩がないというか、なんというか」
「……ハーレム気取りか。救いようがないな」
過保護な三人組は、怒りを通り越して、心の底から呆れ果てたような溜息を漏らすのだった。
イザヨイもまたドン引きしながら、これから始まるコボルト討伐競争のあまりの泥試合感に、遠い目をするしかなかったのである。




