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たかが子爵家のキャナル  作者: 瀬崎遊


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3年生数学教師の場合 


 講堂から引き上げる学園長は一人ホッとしているのが見えた。殿下はもう、学園長の元を訪れないだろう。

 しかし私達はこれから1週間、地獄を見ることになりそうです。


 せっかく冬休みでリフレッシュしたのに。

 ホームルームを終わらせ、各学科の教師が輪になって集まっています。大体各教科4人くらいいます。

 試験問題の選定です。私は3年の数学教師なので同じ3年の教師二人で、教科書の前半部分から20問、後半部分から20問作ることに決めていました。


「120問の問題を何分で解答させるのですか?」

「ちょっと多すぎませんか?」

「そうですな」

「さすがに・・・」

「では3年が20問、2年が10問、1年が5問でどうでしょう?」

「いい感じではないでしょうか?」

「一時間半位でどうでしょう?出来上がれば出て行っていいことにして」

「そうですな」

「私はひねった嫌がらせ問題を出してやりましょう」

「合格点数って何点なんでしょうか?」

「さぁ?」


「そもそも習っていない3年の問題を解けるものなのでしょうか?」

「いい家庭教師が付いている所は大丈夫なんじゃないですか?」

「Aクラスの何人かは合格しそうです」

「数学で合格しても他教科で合格点が取れるかが問題ですね」

「そうですな」




エイデンの場合 


 始業式も無事終わり、キャナルと一緒にキャナルの屋敷に帰る。

 う〜ん。いいなぁ〜。一緒っていう言葉が素敵だ。

 結婚すればずーっと一緒。幸せだ〜。


「キャナル、有能な人間を沢山雇おう」

「いきなりなんでしょうか?」

「有能な人間に仕事をしてもらって私とキャナルの時間を作ろうと思う」

「駄目ですよ。どんなに信用できる人間でも、間違いは起こります。しっかり手綱は握らないといけません」


「そのために有能な執事も必要だよな」

「有能な執事は必要ですね」

「アーティーは私に付いて来てくれるかな?」

「殿下が付いていくのに値する人間ならば付いてきてくださると思いますよ」

「王から公爵だからなぁ〜」

「役職は関係ないのではないですか?」

「そうかな?」

「そう思いますよ」


 キャナルの家に到着すると、キャナルの父に奪われてしまった。

「待っててくださいね」

 そんな一言と、キャナルが入れてくれたお茶で私は我慢することにした。

 キャナルが戻ってくるのを待った。




アーティーの場合


 私は殿下の執事であり、教師であると自認している。

 そんなアーティーは今、怒っていた。

 人にはいつもと変わらないように見えるかもしれないが、物凄く怒っている。


 殿下が王位継承権を私に何の相談もなく辞退したからです。

「相談すれば反対しただろう」

 と殿下はおっしゃいましたが、当然のことではないですか。

 殿下は人の上に立つべき人だと私は思っております。

 決して贔屓目ではないはず、です。


 殿下が「なるようになるから、待っていろ」とおっしゃいましたが、キャナル嬢もこちらの思う通りに動いてくださる相手ではありません。

 万が一があったらと思うと本当に恐ろしいです。




キャナルの場合


 屋敷でお勉強前のお茶をしていると父に呼ばれました。

 殿下に席を外す事を謝り、父の執務室に行きました。

 殿下がおられる時の呼び出しは初めてです。



 一通の封書を渡されました。

 封蝋は陛下の紋章です。

 陛下とは小さい頃から殿下に付き纏われ・・・、イエ、仲良くしていただいていたこともあり、人のいない所ではおじ様と呼ぶくらい、親しくさせていただいています。


 陛下と、私と、宰相様だけの秘密ですが。

 殿下は頭もよく、回転も早いのですが、おかしなところも多々あって、陛下は頭を抱えていらっしゃいます。


 視線を父に向けると中を見ろとのことなのでしょう。

「これは、ありがたくない手紙と言いうことでしょうね」

「キャナルにとってはそうだろうな」

「明日は、用事があるとでも殿下に伝えなさい」

「かしこまりました」



「殿下お待たせいたしました」

「寂しかったよ」

「殿下、明日、ちょっと兄と用事ができましたので明日はお休みにしていただけますか?」

「えーー嫌だ」


 そんな口の聞き方をしても可愛くありませんからね。

「申し訳ありません。兄の婚約者のフィーヴィー様がわたくしの婚約を祝ってくださるそうでお伺いすることになってしまいました」

「じゃぁ、仕方ないかな」


「殿下、会えない時間も大事な時間ですよ。アーティーとお話してみてはいかがですか?」

「そうだね。一度話してみるよ」

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