第22話「決壊直前――“現場を押さえに来る者たち”」
夕方の駅前。
人の流れが最も多くなる時間帯。
その雑踏の中に、いくつもの視線が混ざっていた。
「……来てるな」
戸倉和喜が小さく呟く。
株式会社龍雷神・週刊誌部。
その隣で渡邊斗亜がカメラを調整する。
「今日は“決定打狙い”っすよね?」
「そうだ」
遠くに見えるのは、大学帰りの学生たち。
その中に――潤一郎の姿。
「ターゲット確認」
戸倉が低く言う。
「みのりの動線と合流する可能性は?」
「事務所ルート的に、ここを通る」
渡邊が即答する。
「なら、ここが一番確率高い」
――同時刻。
大学構内。
「今日、遅くなる?」
木乃香が恒星に聞く。
「いや、俺は先帰る」
「そっか」
視線が一瞬だけ校門の外へ向く。
(……またいる)
遠くに見える“不自然な2人”。
週刊誌の影。
「やっぱり来てる」
昴がスマホを見ながら言う。
「姉ちゃんの言ってた通りだな」
「本気で張ってる」
その時――
潤一郎が校門を出る。
空気が一瞬変わる。
(……ここからだ)
全員の視線が同時に動く。
――駅前。
「来た」
渡邊が小さく言う。
人混みの中。
みのりの姿が現れる。
マスク、帽子、控えめな服装。
だが――間違いようがない。
「接触タイミング、あと数分」
戸倉がカメラを構える。
シャッター音はまだない。
だが、緊張だけが高まる。
――その瞬間。
「潤一郎」
声。
振り向くと、みのりがいた。
予定より少し早い。
(……まずい)
この“合流タイミング”は危険すぎる。
「早かったですね」
「うん、少しルート変えた」
みのりは小さく笑う。
だがその目は鋭い。
「嫌な気配がしたから」
――同時。
「今だ」
戸倉が呟く。
カメラが向く。
シャッターに指がかかる。
その瞬間――
「動くな」
低い声。
壯介だった。
すぐ後ろ。
完全に予測していた位置。
「……っ」
渡邊の手が止まる。
「撮るなら別の仕事しろ」
壯介の視線は冷たい。
「今はやめとけ」
圧。
一瞬、場が固まる。
だが――
戸倉は引かない。
「これは仕事です」
「分かってる」
壯介は静かに言う。
「だから忠告してる」
一歩前へ。
その距離で、空気が変わる。
――その時。
「潤一郎」
今度は木乃香の声。
人混みの向こうから。
彼女は立ち止まる。
視線が、みのりと潤一郎に固定されている。
「……やっぱり」
小さく呟く。
その表情は、もう疑いではなかった。
「これ、偶然じゃない」
確信。
その一歩手前まで来ていた。
――同時刻。
「まずいな」
昴が呟く。
「完全に重なってる」
恒星も顔をしかめる。
「これ……やばくね?」
状況が、同時に3方向から詰まり始めていた。
・週刊誌(撮る側)
・木乃香(気づく側)
・壯介(止める側)
そして――
・潤一郎とみのり(中心)
「……どうする?」
みのりが静かに言う。
潤一郎は息を飲む。
逃げるか。
隠すか。
それとも――
壊れる前に、動くか。
――シャッターは、まだ切られていない。
だが。
時間の問題だった。
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