勇者の遺産 第三話
告別式が終わり、教会の中でそれぞれにドナシアンの過去を語っていた。アリスタルフ・カプスチンは懐かしむように棺を見つめた後、参列者たちそれぞれと何かを話をしていた。
フェリシアンとアルフォードは一段落付いたことにくたびれていて、教会の椅子に腰掛けてその様子を見ていた。
しかし、喪服とは違う黒い服を来た者たちがざわつき始め、当たりを警戒するように首を動かし始めた。
そのうちの一人が「ガリバルディさん……」とガリバルディに近づき耳打ちをした。それを聞いたガリバルディはフェリシアンを手招きして呼んだ。
「お前の家族を名乗るヤツらが外に来ているらしい」
フェリシアンはその人たちに心当たりがある。
祖父の死を悼んで来てくれたと言う感情は一切無く、今さら、この期に及んで、よく顔を出せたものだというのが率直な彼の感想だった。
ガリバルディと共に教会のドアを開けると、目も眩むようなほどの大きな泣き声がフェリシアンとガリバルディの耳を劈いた。石段の前で泣きじゃくる女が二人いた。
一人は年老いた女性で、死を悼みに来たとは思えないような派手な服を着ていた。手には巨大な指輪、首にはいくつものネックレスが下がっている。
もう一人は若い女で、こちらも派手な服を着ていた。
二人とも髪はボサボサになり、化粧を崩してヒステリックな泣き声を挙げていた。
フェリシアンの姿を見ると年老いた女性は「お父さんは!? 私のお父さんは?」とフェリシアンの足にすがりついてきた。
そのまま泣いているとは思えないようなほどの力でフェリシアンの足を掴んだままうずくまった。
コレットとアナンヤがやってきたのだ
「お爺ちゃんは老衰だよ。苦しんでない」とフェリシアンが言うと、コレットは顔を上げた。
濃いマスカラ、アイライナー、アイシャドウが泣いたことで崩れ、目の周りを真っ黒にしたコレットはフェリシアンの腕に掴まりに這い上がるように立ち上がった。
「お父さんは、わ、私に何か言っていたの?」
フェリシアンは亡くなる直前のドナシアンを思い出してみた。
自分でも忘れていたほどに、ドナシアンはコレットとアナンヤについて何も言っていなかった。すぐに開封された遺言書にも書かれていなかった。
フェリシアンはさすがに何も言っていなかったと伝えることに気が進まず、視線を左右に動かした。するとコレットは「そう」と何かを察した様になった。




