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英雄遺産のエーヴィッヒ  作者: 大浣熊猫
三度過ぎ往くツワンツィヒ
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アーンストートの学び舎で 第四話

「勇者ドナシアンやボクの大爺様は戦士だった。戦うことが必要な世界で、最も正しい選択をした者たちだ。

 でも、今の世の中はどうだ!? 見てみろよ! みんなお金に狂っている。お金さえあれば、実力もないのにのうのうと偉くなることが出来る。

 生まれながらに受け継いだ金で、何の実力もないまま偉くなるなんておかしいだろう!

 実力のみが正しく、実力のある者が偉くなれた世界の方が正しいだろう!

 ボクはそんな世界をもたらすために、魔王教に入ったんだ!

 魔王は悪でも最大の邪悪がいたからこそ、魔王に抗う善である人間は正しくいられたんだ! ボクは人間たちを正すんだ!」


 フェリシアンには刺さる言葉だった。フェリシアン自身、ドナシアンの築いた財産で暮らしているようなものだ。

 母コレットは趣味で古民家オーガニックカフェを営んでいて稼ぐという気はない。

 カネカネカネと稼ぐという行為はむしろ醜い生き物のすることのような態度を人前では取っている。

 しかし、実際は金への執着は凄まじい。コレットは自分が使うお金は綺麗なものであり、そして自分の使いたい使い方こそが正しいと思っている。

 息子フェリシアンのお金にも手を付けているが、それは家族として当たり前の行為だとさえ思い込んでいる。

 フェリシアンは母コレットが矛盾を握りつぶしていると言うことにずっと前に既に気がついていた。

 彼はそのような母の姿を見て育ってきたからか、まだ自分は学生だからと思いつつも、やはり心のどこかでドナシアンの財産を崩していくだけの生活に後ろめたさを感じているのだ。

 無論、アルノリトは自分の主義主張がフェリシアンに刺さると言うことは気がついていない。だが、フェリシアンの家庭がどこかおかしいというのは肌で感じてとっていた。


「アル、そうか。君はアリスタルフさんが、お爺さまが大好きなんだね。英雄はいつまでも英雄であって欲しいんだね。僕もお爺ちゃんが大好きだよ。勇者だなんて、誇らしすぎるよ。君も僕と一緒だね」


 フェリシアンは照れるように軽く笑い頬を人差し指で掻いた。友達とわかり合えたことを喜ぶような、笑顔だった。

 言葉は確かに刺さったが、何故刺さるようにいったのかを彼の中で変換した結果のこの鈍感のような反応は、フェリシアンのある種の強さかも知れない。


「ふざけるな!」


 アルノリトは激怒した。照れ笑いが不愉快だったのではなく、受け容れがたい事実を押し付けられたからだ。

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